無色の俺と鈍赤の奔流
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あらすじ
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俺の打撃はこれまでの攻撃とは比べ物にならないほど早い。ガドウ自身も拳の一撃の重みを感じたのか、これまでよりも反応に刀気が滲み出ている。
『マスター。対異世界戦闘用高火力武装は一撃が限度です。実弾に関しては、幾らか生成させていただいておりますので、ご安心ください』
一撃。ガドウへ一撃を加え、その後にこのグロウスを鎮魂する。いや今はガドウだけを考えろ。
「小僧——いや、貴様黒甲冑か!」
ガドウは嬉々として俺へと叫ぶ。
「会いたかった会いたかったぞ黒甲冑! 貴様が魔術を広めているそうだな!」
斬馬刀を深く構え、鈍赤鎧は光を放つ。甲冑の隙間という隙間から湯気のようにワインレッドの湯気が立ち上る。これまでよりも気迫がまるで違う。
「フウウウ」
深く息を吐きガドウは呼吸を整える。
『あれらは魔術ではありません。故にまだデータがなく、最適な防御手段もなく、回避を推奨します』
アトラスの視界にロックオンされているガゾウの全身の温度が急激に上昇し、真っ赤に染まっていく。
「聖剣たちの技は魔術じゃないのか——」
俺は構え、背中の空間に羽のようにアトラスを広げ、対異世界脅威撃退用マルチランチャーを展開する。
「相殺しながら、決めるのみだ」
俺が一歩を踏み出した、と同時期にガドウは斬馬刀を振るいこれまでとは比べ物にならない数の赤の刀気を展開する。彼の腕の振りに合わせて、赤の刀気は様々な方向から俺を狙い撃つ。
前進しながらも背後にセットした対異世界脅威撃退用マルチランチャーが赤の刀気をマルチロックオンし、糸を引いたようなミサイルを次々打ち出して迎撃していく。
爆風で煙が立ち上がり、地面は抉れ、村は戦場と化す。
「うおおおお、アトラあああ!」
『対異世界武装対抗兵器三式、貫丸』
強く右腕を振ると、装飾もない武骨な漆黒の槍が生まれ、両手で強くそれを握る。俺の駆けるスピードは刹那となり、むしろ周囲が遅く感じる。
ガドウが応戦するように振るった斬馬刀と槍の先端がぶつかり合い、
「うああああああああっ!」
「おおおおおおおおおっ!」
火花を散らしながら——押し負ける。
「ふははは! 武を極めしこのガドウに、研ぎ澄まされていない力が届くはずがないわ!」
再度斬馬刀を構え、赤き刀気を纏いながら下から天へと振り上げる。新幹線にでも体当たりされた寛容な衝撃に俺の体は空へと一直線に打ち上げられた。
「やばい、つぎ、の、いちげきが」
単純に力比べではガドウは人間離れしていた。このアトラスの装甲をいくつか消し飛ばし、俺の生身である顔と右腕が出ている。
だが、それでも、シエロを手放したくはない——。
空で無理やりに体制を整え、弓のように体をしならせて全力で槍をガドウ目がけて——乱暴に投げ飛ばす。
一撃、この一撃だ。
音速よりも早く、光よりも早く。大気を揺らし、空間を歪め、ガドウへと届け!
「だ、ダメなのか」
地上から俺目がけて上る赤の奔流。俺はガドウの技に飲み込まれながら、空へと打ち上げられ、地面へと吸い込まれるように落下した。
意識は——知らぬ間に消えていた。
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