表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【旧】中年おっさんサラリーマン、異世界の魔法には賢者の石搭載万能パワードスーツがステータス最強でした ~清楚幼女やツンデレ錬金術師と家族生活~  作者: ひなの ねね
第三章 無色の俺と均衡者見習い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/113

無色の俺と墓守の少女と無意味な選択

初めての方はこちらから

あらすじ

https://ncode.syosetu.com/n6321fs/

「前に作れるか!」


 頷いた感覚と共に、俺の目の前に土壁が生まれ、それを足場に三角飛びの要領でガドウへと向き直る。赤い線は止まる事なく俺に狙いを定めている。


「見えたほうが避けやすい——!」


 強がりながらも、無数にある赤いレーザー光線から目をそらさずに、感覚的に左右、更には手前、奥と、本来の俺ならばできないような動きで攻撃を避けていく。


「シエロオオオオ!」


 ダンスを踊るように全ての攻撃を避けて、シエロの元へと飛び込むが、


「甘い!」


 ガドウの斬馬刀が、追い打ちとばかりに俺の頭へと振り下ろされる。


「くっ、」


 流石に避けきれないか——彼女だけでも。


 脇に抱えていた少女をぎゅっと抱きしめ身体を丸める。


 重々しい金属音が叩きつけられ、俺はすぐに顔を上げた。


「ミセリア!」


 俺を背にして斬馬刀を受け流したのは、宿屋に置いたままで布に包まれている剣を構えたミセリアだった。あまりに急いできたのだろう、布は今の一撃でほとんどが吹き飛ばされている。


「約束を私は二つも破ってしまいました」


「剣のことは良い。生きて出られなきゃ意味はない!」


「それでもです」


 ミセリアはブレザーを羽織り、聖剣見習いとしてガドウに向き合う。


「ガドウ様、何故シエロを捕まえたのですか。聖剣たるもの、守るべきは人のはず」


「ああ、そうだ。今生きている人間を助けるならば、必要な『素材』だと」


「そ、素材——」


「貴様から聞いて、極彩色の魔女だと分かった。いや、今は極彩色の罪人だったか。この命と身体一つで、世界に魔術様は溢れ、多くの人類が救われる。安い犠牲だ」


「だが、死んだグロウス達は罪の焔に焼かれるのですよ!」


「死人に口なしだ」


 背中からは見えないが、ミセリアが悔しそうに剣を強く握ったことを感じ取れた。


「均衡者たる言葉が、それですか——!」


 ミセリアは感情のままにガドウへと剣を打ち付ける。何度も何度も。ミセリアの一撃一撃は早すぎて見えないが、ガドウはいとも簡単に剣をはじく。


「総司郎、すみませんでした。私が聖剣を信じるばかりにシエロもあなたも危険に晒してしまった。謝っても謝り切れない——!」


 一心不乱に剣をふるうミセリアの姿は酷くもの悲しい。


 俺にだって経験はある。


 取り返しのつかない失敗で、ずっと会社で文句を言われ続け居場所をなくしたこと。すぐに退職したことで家族にも、友達からも、失敗だと責め続けられたこと。


 一度の失敗をずっと責め続けられるのが社会。


 そこから俺は転がり落ちるように、ブラック会社を転々として、未来に希望も持てなくなった。大人は誰も信用できないものだと知った。


 一度失敗したら誰も手を差し伸べることはない、全て自分の事情だから自己責任だと攻められる。事実自己責任だから俺も俺を責める。


 ならば、誰が俺を許す? 俺は誰に許される? 俺は生きている限りもう二度と許されないのか?


 必要以上に未来を奪われる感覚を知った。


 だから——ミセリアには同じ苦しみを与えたくない。


「ミセリア、失敗したら次の行動で挽回すればいい」


 俺が当時、言われたかった台詞。


 甘ちゃんだと言われようとも、自己責任だと言われようとも、本当に欲しかったのはほんの少しのきっかけの言葉だけで良かったんだ。


「一度謝ったら、次の手を考える。シエロは必ず助けるから。この程度、何とかして見せる」


「——総司郎」


 ガドウの強撃を受けきれず、ミセリアは後ろに大きくのけぞり、俺と並んだ。


「——終わったらちゃんと謝らせてほしいです」


「もちろん。それが終わったらシエロの服を見繕って貰わないといけないからな」


 第三聖剣を前に俺とミセリアは笑う。


 絶望的な時ほど、笑ってやる。笑ってやるさ。




『無色の俺と墓守の少女と無意味な選択』

いつもブックマークや評価によるご声援、本当にありがとうございます。

またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ