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【旧】中年おっさんサラリーマン、異世界の魔法には賢者の石搭載万能パワードスーツがステータス最強でした ~清楚幼女やツンデレ錬金術師と家族生活~  作者: ひなの ねね
第三章 無色の俺と均衡者見習い

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無色の俺と墓守の少女と無意味な選択

初めての方はこちらから

あらすじ

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 時刻は昼過ぎ。


 食堂には数人の村人がいた。


「遅いな……」


 俺はシエロとミセリアを待ちながら席に付いていた。


 二人が来る前に昼食を頼もうか、それとも探しに行ってみるか。


「アトラ、人工衛星から二人の姿は見えるか?」


『はい、シエロは広場に座っており、ミセリアは大通りをゆったりと歩いております』


「二人とも集合時間忘れてるのか?」


 やれやれと俺は頭を掻いて立ち上がる。


 あの墓にいた少女について、早いところ意見交換したかった。


 二人も何かしらの情報を手に入れているとは思うが、総合すれば何らかの答えも出るだろう。


 食堂を出て広場へと向かう。まずはシエロと合流しようと考えたからだ。


 だが、


「あれシエロいないよな?」


 辺りを見渡してもどこにもシエロの姿は見当たらない。服装は真っ白なので見失うことはないはずだ。


『人工衛星からの視点ではシエロは、今まさに目の前にいます』


「目の前って——誰もいないぞ」


 広場にはいつものように村人が往来しているだけだ。


「どうなってんだ……」


 ここで俺の脳内に一つの映像が思い浮かぶ。


 ガドウに助けられたとき、ガドウの一撃で破壊された墓地は少女が消えてから、元通りになっていた。


 少女がしゃがんでいた墓石を見ると『レイス=クラウド』の文字が彫られていた。


「分からん……何故、シエロはいない、墓地は元に戻った?」


 存在しないグロウス、墓石の名前のレイス、墓場の少女、アトラが見ているシエロ——どこかに鍵があるはずだ。今はまだふわふわと浮かんでどれとも結びつかないが、一つさえ分かってしまえば全てが繋がる気がした。


 まずはシエロとミセリアと合流すべきだ。


 胸騒ぎを覚え足早に歩きだしたとき、路地裏からにゃあと小さな声が聞こえた。声に振り向くと、そこには黒猫と、真っ黒な服の髪の少女がじっと俺を見つめていた。


「君は……」


「あなたが総司郎ね」


 少女はぼそっと呟く。


「私は無意味な選択を迫る」


 無意味な選択、何のことだ?


 少女が話しかけてきてからというもの、肌がざわざわする。毛穴の一つ一つが開いているような気持ち悪い感覚だった。俺の体の中にいるパスカルも同様なのか、落ち着いていないような気がする。


「いいの、黙ってて。これはもう何も選べない私にとっても、無意味な選択なんだから」


 少女が誰に話しかけたのか分からない。


 しかし見た目の幼さに反して大人びた喋り方だ。


 少女は指を一つ立てる。


「一つ、貴方は誰も助けられない。大切な人さえも。何故なら踏み込んだ時点で、もう終わっているから。でもこの中で彼女と生きていくことはできる。いずれ意識も全て飲まれていくけど」


 二本目の指を立てる。


「二つ、あなたは誰も助けられない。大切な人さえも。けれど永遠を終わらせるためにもがくこともできる。今なら。でもその選択を選んだ時点であなたは死ぬ。見張られているから」


 少女は黒い瞳で俺をずっと見つめる。瞳から感情を読み取ることはできないが、深く吸い込まれそうなほどの深淵を宿している。


「さあ、選んで。私がせめて、踏み入れた者に与えられるのはこの二つだけ」

いつもブックマークや評価によるご声援、本当にありがとうございます。

またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。

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