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【旧】中年おっさんサラリーマン、異世界の魔法には賢者の石搭載万能パワードスーツがステータス最強でした ~清楚幼女やツンデレ錬金術師と家族生活~  作者: ひなの ねね
第三章 無色の俺と均衡者見習い

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均衡者見習いと鈍赤甲冑の道化話

初めての方はこちらから

あらすじ

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 ヒュッと四つめが放たれ、


「う、うわ!」


「あ、すみません!」


 反射的に木の棒をひっこめた反動で巨木の幹に強く当たり、根元からぽっきりと折れた。折れた枝は宙を舞い、私はそれをぼーっと見つめ——井戸の近くで水を組んでいた村娘めがけて落下する。


「いけない!」


 瞬間的に足を出し、村娘に華麗なタックルを決め、井戸そのものにも体当たりしてしまう。その瞬間枝は地面に華麗に突き刺さった。


「よ、よかった」


 にっこりと胸に抱いた村娘に笑いかけたとき、彼女は息を飲んで目を瞑っていた。


「あ——」


 幸運切りのミセリア、ここにあり。


 頭の先から足の先までひっくり返った井戸水を被った。村娘ともども。


 聖剣育成組織『カラドボルグ』は紺を基調とした制服で、下はスカート上はブレザー。両足は動きやすくも丈夫な素材の黒タイツだ。


 冬場はこれに学校指定の黒いケープを羽織っているが、びしょぬれになってから、ケープがなくて良かったと思う。


 上等な洋服だからこそ透けることはないが、胸のラインがハッキリと出てしまい恥ずかしい。こんな時もう少し控えめな胸だったらといつも思う。しかもタイツがびしょびしょで気持ち悪い。だが私はともかくもっと可哀想なのは村娘だった。


 下着が薄っすら見えるほ水を浴びている。


 さっき飛び出してきた兵士の視線を遮るように彼女を立たせ、私のブレザーを彼女の肩に掛けた。


「あ、ありがとうございます」


「いや、私こそすまなかった」


 着替えたら返しますと村娘は言って、すぐさまその場を離れていった。


 濡れ鼠な私は一度頭を左右に振り、水気を取って、飛び出してきた彼を見る。姿は簡素な鎧を着た若い男性だった。


 彼はどうやらガドウが連れてきた剣士の一人と推測できる。


「その制服は——」


 彼も気が付いたのか、先ほどまでの村娘にうつつを抜かしていた顔をやめ、口をしっかりと結ぶ。


「カラドボルグ所属の訓練生——し、失礼いたしました!」


「いえ、気にしないでください」


 そう、聖剣育成組織『カラドボルグ』は聖剣についてきた剣士より位が高い。私自身は普通に振舞ってほしいのだが、将来の聖剣と考えられているせいか、皆、年下の娘に対してもこのようにふるまう。


「私が不用意に飛び出したことにより、訓練生様をこんなお姿に——大変申し訳ございません。実はまだ少々二日酔いが」


「気にしないで欲しい。私自身も不注意がありました」


「よければ兵舎にお越しください。タオルをお渡しさせてください」


「大丈夫ですよ。気にしないで——」


 言いかけ、兵舎ならば、剣士たちがより重要な情報を得ているかもしれない。


「そうですね。お言葉に甘えさせていただきましょう」


 私はさりげなく髪を軽く絞る動作をして、剣士についていくことを示す。剣士は恐縮した様子で村の入り口まで私を案内してくれた。


 村の入り口には簡易的なテントが三つ張られていた。


 二つは剣士用でもう一つの大きめのテントはガドウ様用だろう。


 私はタオルを受け取り、髪や服の水気を取りながら耳を澄ます。しかし剣士たちから聞こえてくる言葉はどれも私と同じだった。


 唯一まともな手掛かりと言えるのは、情報提供者はレイスという中年の男性だったらしいが、この村にいなかったらしい。どうやら剣士たちも見えないグロウスに手を焼いているようだった。


 仕方ない。これでは潜入した意味もない。私は剣士にお礼と共にタオルを渡し、テントを出ようとする。


「ん——」


「ガ、ガドウ様」

いつもブックマークや評価によるご声援、本当にありがとうございます。

またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。

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