極彩色の魔女と漆黒の墓守
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『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』
あらすじ
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誰かに殺されるとまたグロウスとして更に苦しむから隠れててっていったのに、オオカミのグロウス、パスカル君はシエロを助けようとして深手を負った。
でもあの時、何故か分からないけど、聖剣の仲間だと思ってたそうじろうが助けてくれた。
大人はみんな、弱い者から奪っていくだけだって思ってたの。
シエロの姉さんも、友達も、家も、生活も、未来も、全部全部全部。
けどそうじろうは、何の理由もなく、関わり合いのないシエロを助けて、姉さんを助ける旅を手伝ってくれてる。グロウス全員を煉獄の輪から解放して、正しい輪廻の輪に戻すことも、それが世界中から魔術を消すことになっても、分かった上で着いてきてくれてる。
野菜は残さず食べろとか、帽子はしっかり握っておけとか、口煩いときもあるけど、シエロは知ってる。シエロにいっぱい気にかけて言葉を選んでくれてたりすること。
本当は今日の聞き込みも一人で行かせるのは凄い心配してるの知ってた。口では良いよって言ってたけど顔に出てたし。そんなときのそうじろうは眉毛が下がってる。たぶん誰も知らないと思うし、それはシエロの秘密としてしまっておく。
数日前の事なのに、凄い昔の事みたい。
色々と思い出しちゃったけど、だから少しでも、シエロがやらなきゃいけないことは、シエロ自身ができるようにならないと。
少しでも自分で出来る事が増えれば、立派な姉さんになれるって姉さんたちがいつも言ってた。
だから村の広場でグロウスや魔術研究をしていた人について聞いて回ってるけど、誰も何も知らないの。貰えるのは情報じゃなくてちょっとしたお菓子のみ。
困ったの早くも行き詰ってしまったの。
そうじろうとミセリアは手掛かりが掴めたか心配。二人はグロウスの声を聴くことはできないから。
ふと路地を盗み見ると、路地に咲いた小さな花を見つめている女の子を見つけた。
服装はシエロと全然違くて、髪の色も含めると全身真っ黒。
話しかけていいのかな……と思ったらシエロの背中をついてきていた黒猫が、彼女の足元に駆け寄ってすりすりと体を擦り付ける。
「あ……」
女の子は少し驚いて優しそうに足元の猫をなでた。
「こ、こんにちはなの!」
目の前にいるのにずっと見てたら変な子だって思われちゃうから、勇気を出して声をかけてみた。同じ年の子と話すの初めてだから、すっっごく緊張するの。
「……」
黒い少女はシエロをじっと見つめる。長い前髪が目にかかりそうなのも、シエロそっくりだった。
「シエロは、シエロだよ。あなたは?」
勇気を出して自己紹介してみる。そうじろうがいつも言ってた。初めて会う人には挨拶しとけば間違いないって。
「私は——誰だっけ?」
「名前ないの?」
ふるふると少女は頭を振る。思い出せないみたい。
「じゃシエロが名前を付けてあげるの。えっと、くろ、クロ、クエ、クロエ——クロエなんてどうかな」
「クロエ……わるくないかも」
ふふと少女——クロエは小さく笑った。はにかんだ笑みはお淑やかで小さなお花みたいでとってもかわいかったの。
クロエは猫を抱き上げて、近くの置きっぱなしの木箱に座った。シエロもそれに倣って同じように座ったの。
いつも最後まで読んでいただきありがとうございます。
またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。
一刀想十郎@小説家になろう
@soujuuro