無色の俺と鈍赤甲冑と墓守の少女
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『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』
あらすじ
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「総司郎。昨日のガドウ様との共闘は諦めたわけではありません。ですが総司郎とシエロは納得せず、独自に行動するでしょう。であれば私ができる限りサポートします。そのうえでガドウ様の力が必要ならば私は打診する」
ミセリアなりに答えを出したのか、目を合わせずに俺へと説明してくれた。まだ恥ずかしそうだが、それでも彼女から歩み寄ってくれたことがありがたかった。本当であれば年上の俺が彼女に歩み寄るべきなのに。
「ありがとう、ミセリア」
「い、いえ、礼を言われるほどの事は。ですが、本当に危ないことはしないでください」
「善処するよ」
「大人の善処するほど、信じられないものはありませんね」
ふふとミセリアは小さく笑った。
「さてどうだシエロ、朝になってもグロウスの声は聞こえないのか?」
「うーん……グロウスの声は聞こえないんだよ。でもなんか、普通の音ではないと思う」
「何が普通の音じゃないんだ?」
目を瞑って耳を澄ましているシエロ。俺たちの周囲に特におかしなものはない。早朝から水くみに出る男性、洗濯を干す女性、畑仕事を始める老夫婦、樽の上でぼーっとこちらを見ている猫。
建物も農村って感じの木の建物か土壁が殆どだ。生活用水で使用している井戸や小さめの湖、こじんまりとした牧場など目に見えておかしなところは存在しない。
「でも何かいつもと違う気がするの——グロウスの声が聞こえないのもあるけど、壁があるような——水の中みたいな」
「水の中? くぐもっている感じか」
「うん、多分そうなの」
グロウスの声を聞こえないように誰かが細工しているのだろうか、でも誰がそんなことを。グロウスは本来、人に危害を加えないと、初めて会ったとき黄金甲冑は言っていた。
マリアベルのラプチャーはマリアベルを襲うことはなかった。つまりグロウスは何らかの自由意思を有しており、だからこそグロウスを守ろうとしている人間もいるということなのか?
「協力者がいるのかもしれないな、グロウスを守る」
「でもグロウスの声を隠すのは、魔術でも使わない限り無理だと思うの」
「魔術を使う奴がいるのかもな、この村に。俺たちも聞き込みをしてみようぜ」
俺たちが話し込んでいる間にガドウが連れてきた剣士たちが、朝日に焼かれながらおぼつかない足取りで村人たちに聞き取り調査を行っていた。
相当飲まされたのだろう。ブラック企業で働いていた俺からすると、上司命令は絶対なので彼らに心の中でエールを送ってしまう。
「分かった、では昼ご飯の時に情報交換をしよう」
そういってミセリアはすぐにこの場を後にした。行動力の権化だ。
いつも最後まで読んでいただきありがとうございます。
またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。
一刀想十郎@小説家になろう
@soujuuro




