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無色の俺と鈍赤甲冑と墓守の少女

初めての方はこちらから

『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』

あらすじ

https://ncode.syosetu.com/n6321fs/

「「あっ」」


 早朝五時。流石にミセリアは起きていないだろうと思い、早朝に剣を宿の主人に渡そうとしたとき、階段を下りてくるミセリアと目が合った。


「お、おう、おはよう」


「お、おはようございます」


 これは俺でも気まずい。昨日の夜はお互いに自分の事情を話したものだが、朝のテンションで昨日の事を思い出すと、夜のテンションでかっこいい感じに喋っててとても恥ずかしい。


 それはミセリアも同じだったらしく、目線をふわふわさせながら俺の隣に立った。


 ミセリアも剣を受け取るべきか悩みつつ、とりあえず歩いてきただけだろう。この間の悪さが《幸運切りのミセリア》と呼ばれている所以なのかもしれない。


「あー、どうしよっか」


「そ、そうですね」


「とりあえず、持ってくか?」


「い、いえ、その、聖剣見習いとして、二言はなく、その、行商が終わってからでもいいかな、と」


「まあでも、持っててもいいぞ、いつ会うかなかなか分からんし」


「う——その言い方はあまり良くありませんよ。いつ会うかというか、私と総司郎の中はそのようなものなのですか」


 ミセリアは少し頬を膨らませて俺を見上げる。シエロに私は可愛い系ではないといった割に、中年の俺から見ても十分に魅力的な美人の因子を持っている。


 年頃になれば引く手あまたになるであろう。


「私たちは二日しか夜を共にしていませんが、それでも互いを信じた仲だと私は思っていました。ですがいつ会うか分からないなどと——その言葉は悲しいです」


「い、いやそういう意味じゃないんだ、ミセリア」


 おろおろする俺と悲しそうにするミセリア、そしてそれを盗み見る宿屋の主人。どう考えても勘違いしている。中年の親父が年頃の女に手を出して、純粋な女子が泣き崩れるシーンだと思っていやがる。


「何が違うのです。私を信じてほしい——私が必ず、一番良い方法を見つける。総司郎もシエロも私が幸せにする」


「……シエロがどうしたの?」


 ミセリアが言いきったとき、階段の踊り場には俺が部屋にいなかったから探しに来たパジャマ姿のシエロの姿があった。


 小さな白い肩を片方出して、ひざ下までのワンピース。いつものストレートな髪は少しだけ寝癖がついて髪が外側にはねている。


「シエロ、私が総司郎とシエロが安心して暮らせるよう頑張る。だから安心してほしい。私を信じてほしい」


 シエロに向かってミセリアは大きく手を広げた。


 その姿は何処をどう見ても、子連れバツイチ中年男性に押し掛けてきた、暴走気味の女子高生女房にしか見えない。


 事実、宿屋の主人はもう完全にそう思っている。


「親父、違うからな。部屋一緒にするなよ」


 と言ってやりたかったが、心の中にぐっと押しとどめた。言ったらマジっぽいからな。


 それからすぐにシエロを着替えさせ、ミセリアの剣は俺が預かる事で話はまとまった。

いつも最後まで読んでいただきありがとうございます。

またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。

一刀想十郎@小説家になろう

@soujuuro

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