無色の俺と実直な均衡者
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『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』
あらすじ
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けど俺は引きたくなかった。
目の前で、もう一人で頑張るやつを見るわけにはいかない。俺には誰も手を差し伸べてくれなかった。
だから俺が手を差し伸べてやりたい。
「ありがとうミセリア、心配してくれるんだな」
俺は隠れるシエロの手を強く握る。
「俺はシエロと共にある」
「総司郎、訳を聞いてもいいですか」
「ああ」
俺たちは宿屋に向かい、ミセリアにグロウス化する理由、シエロ以外がグロウスを殺した場合を説明した。聖剣見習いは魔術やグロウス研究には疎い、ミセリアは黙って聞いていたが、話を聞き終わってから深く息を吐いた。
「それは真実なのか」
仮にも聖剣見習いなのでシエロが極彩色の魔女だということは隠している。ちょっとした特殊な体質で、グロウスを鎮魂でききるとかなりぼやかしているので、説得力はないかもしれない。それに俺たちは親子行商人見習いにしか見えないのだから。
「信じるどうかは自由だ」
「仮にですが、もしその話が真実なら、ガドウ様と共闘すべきです。ガドウ様にグロウスを追い詰めてもらい、シエロの鎮魂歌で止めを刺す」
「それは無理だ。聖剣は国の利益のためにグロウスの遺体をかき集めているんだろ? 鎮魂がが目的じゃない」
「いえ、十三聖剣は国に所属している前に世界の調停者。均衡を保つために各国に平等に所属しています。訳を聞けばガドウ様とて手を貸してくれるはずです」
果たしてそうだろうか。見た目と言動からしか察せないが、ガドウという男をそれほど信用できない。それにシエロの事を知られるのは危険な気がした。
「ミセリア、すまない。こう言っては何だが、俺達は、この魔術革命の時代において異端だ。グロウスを消していくことはいずれ魔術をけすことになる。それでも俺たちは——俺はシエロの助けになりたい」
俺は立ち上がってシエロを連れて、無言のセリシアの部屋からでていこうとした。
「総司郎、他人を信じてほしい——聖剣使いはきっと想いに応える」
語り掛けるミセリアを背に、
「——剣は明日の朝までに宿に預けておく」
そう返すのが精いっぱいだった。
終幕 無色の俺と実直な均衡者
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一刀想十郎@小説家になろう
@soujuuro




