無色の俺と第三聖剣と見えぬ亡霊
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『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』
あらすじ
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ミセリアも気が付いたのか、はっと息を飲んだ。
「第三聖剣——ガドウ様」
やっぱりそうなのか。
男は誰もいない広いテーブルを見つけて、大きな動きで席に座り、彼についてきた剣士達十人ほども同じテーブルに着く。
「酒は紳士の嗜みだ、酒がなくちゃ話にならん!」
がっはっはと笑い、ガドウは運ばれてきたビールを一気に飲み干す。
「姉ちゃん、これじゃ何度も呼び出しちまう。樽を三つここにおいておけ」
呼びつけられたウェイトレスは、「は、はい」と気迫に押されながら、店長たちと共に酒だるを運び始めた。
店長がが最後の酒樽を置いたころ、ガドウは店長を呼び止める。
「この辺りでグロウスがいると聞いてきたんだが情報はあるか」
「い、いや私は、さあ、どうでしょう」
「ん、知らんのか? 確かな情報だと聞いてきたんだがな」
すみません、と店長はそそくさとガドウから離れる。
「おいてめえら、酒を飲んだら聞き込みを開始しろ。今は他国よりも早く多くのグロウスが必要だからな」
「はい、今すぐに!」
ガドウの脇に立っていた剣士がすぐさま立ち上がるが、ガドウは目にも止まらぬ速さで彼の肩を片手で押さえつける。そして力ずくで椅子に座らせるた。
「聞こえなったか? 酒を飲んでからだ。役に立たねえ耳は切り落とすか? それとも頭の方が良いか?」
「い、いえ、しょ、承知しました」
剣士は怯えながら目の前のビールを一気に飲み干す。
「分かればいい。おら、お前らも全部飲み干してからだ。紳士たるもの、酒の力を取り込んでから優雅に事に当たれ」
は、はい! と他の剣士たちもすぐさま飲み始める。
何なんだこの宴会パワハラ聖剣使いは。
「シエロ、グロウスの声は聞こえるか?」
背中に隠したシエロに呟くと、シエロはそっと俺に耳打ちする。
「グロウスの声は聞こえないんだよ。ここにはいないと思うの」
「そうか、じゃあ誤報なのか……? アトラ、ラプチャーから収集したデータを元にグロウスを探せるか?」
『ラプチャーと同様の波長は感じ取れません。もし存在するならば個体により波長が別の為に認識できないか、データ不足化になります』
「そか、ありがとう」
そうなるとあの聖剣使いのガドウは無駄足となる。けど俺には気になる事があった。
「なあミセリア、グロウスがいるという報告で、十三聖剣が出てくるのはどの程度のレベルの話なんだ?」
十三人しか存在しない聖剣だ。グロウス狩りの他にも極彩色の魔女捕獲も行っているはずだ。そんな忙しいのに、この村での不確かなグロウスに人員を割くのは不可思議だ。
「百パーセントでしょうか。十三聖剣を動かしつつももし誤報だった場合は、国務を邪魔したこととなり、最悪首を切られます」
「想像通りだ」
ということはこの村にグロウスはいる。
グロウスがいるということは、俺とシエロは彷徨っている彼を鎮魂させねばならない。
彼女の家族と住みよい未来を築くために。
「そうじろう、探すんだよ」
「シエロ、探そう、そのグロウスを」
グロウスの気配が無いのは気にかかるが、ガドウに渡すわけにはいかない。
俺たちはそそくさと食事を済ませ、酒盛りをしているガドウ達がいる食堂を後にした。
終幕 灰色だった俺と第三聖剣と見えぬ亡霊
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一刀想十郎@小説家になろう
@soujuuro




