無色の俺と均衡者見習い
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『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』
あらすじ
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「だから私はこの旅で聖剣となるためのきっかけを掴みたかった。私が十四番目の聖剣になるために」
理由を聞くのも憚られるほどの決意が、体から滲み出ている。
「そのための剣なんだな、そりゃあ大切なわけだ」
「聖剣見習いは常に剣と共にあり。苦楽を共にし、人生を歩んでいくのに——私は——」
「悔やむな悔やむな。過ぎてしまったことは仕方ない」
尚更すぐに渡してやりたいが、自分の力で勝ち取らないとダメなタイプに間違いない。自分に厳しいタイプは何処の世界でも生きにくいものだ。決して嫌いじゃないが。
「よし、明日には村に到着する。そこでさっさと売りさばいて、聖剣見習いの旅を続けてくれ! そのためには今日は早く寝なくちゃな」
俺の隣で元気だったシエロもいつの間にか、眠気眼でうつらうつらしている。
「シエロは一人で寝るのがまだできなくてね。ミセリアは一緒にシエロと馬車の中で寝てくれるか?」
「そんな! 私は雇われの身、仮ではあるが雇い主である総司郎を外で寝せるわけにはいきません。私が見張りを——!」
「俺は大丈夫だ」
言っても分からないだろうから、それっぽく宙に指を振る。
「最近流行りの魔術を多少嗜んでいてね。この一帯に危険な者が近づいたら叩き起こしてくれる魔術を常に使っているのさ」
アトラっていうスーパー便利な人工知能でな。
「そんなことができるのですか、魔術とは」
「まあな、だからシエロの事は頼んだぜ。寝相も悪いからな」
「ええ、では申し訳ありませんが任されました」
ミセリアは渋々といった感じで引き下がる。俺を地面で寝せることに抵抗があるのだろう。焚火や食器を片付けた後、ミセリアとシエロは馬車の中に消えた。
俺は大木の根を枕にし、スーツのジャケットを置き、腹の上で掛布団代わりにする。
異世界の真夜中は日本の夜とさほど変わらない。
いりりりと小さな虫の音が聞こえ、さあああと葉が風に揺れる音がする。小枝は擦れてぎーぎーと音がし、自然の音に身をすましているうちに俺の意識は深く沈んでいった。
見張りをアトラに任せて。
終幕 無色の俺と均衡者見習い
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一刀想十郎@小説家になろう
@soujuuro




