無色の俺と均衡者見習い
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『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』
あらすじ
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「良い食べっぷりだな」
念のため少し多めに買っておいて良かった。焚火の向かいで肉と野菜をがつがつ食べる少女は、両頬に食品を詰め込んだまま涙目で頷く。
「あふぃがふぉーふぉふぁいふぁふ」
「なんて言ってるのかな」
「さあ……感謝じゃないか?」
俺とシエロは既に食べ終わっており、一心不乱に食べる少女をずっと見つめていた。
少女の名前はミセリア=スペルビアという一七歳の少女だった。どっかの制服のようなきっちとした服の着こなしで、見方によっては紺色のブレザーとスカートに見えなくもない。長い黒髪は後ろで一つの三つ編みとして結っている。
彼女をホロの中から降ろしたときも、大切そうに細長い包みを一緒に持ってきた。今は彼女の手元に置かれている。
「——うっ!」
「あんまり詰め込み過ぎるからだ、ほら」
俺が手元の水筒を見セリアに渡すと、激しく水稲の水を飲み干した。
「はあはあ、た、助かりました。心遣い感謝いたします」
「腹減って寝てたんじゃ、見過ごせないしな」
「お互い様だよ!」
シエロも笑顔でミセリアに笑い返すと、すまなそうな顔のミセリアはつられて微笑んだ。
「それでなぜ馬車に乗っていたんだ、確認したときはいなかったんだが」
「それなんですが——助けていただいて恐縮ですが、これを返していただきたい」
ミセリアは手元にある長い棒を手元に引き寄せた。
「確かその積荷は武器と聞いていたな」
行商人ギルドで荷物を積んだ時に、食料品と共に売買用の雑貨を少しばかり積み込んだ。そのうちの一つだ。布に包まれているが中身はよく知らない。
「これは元々、私の剣なんです」
「剣か、何故君の剣が行商人ギルドの荷物に紛れていたんだ?」
「実は私がアルデバランに立ち寄ったのは旅の途中だったんです。その際、迷子の両親を探していたら、知らぬ間に盗まれてしまい、なんとか見つけたときには質屋に売り飛ばされ、ありったけのお金で買おうとした矢先、金は擦られ、町中を三日三晩走り回ったげく、あなたの馬車に詰め込まれて街を出ていく姿を見たのです」
「不運だったな」
「ええ、私は昔からそういうところがあって——着いたあだ名は幸運切りのミセリア。全力疾走で馬車を追い、あなた達が昼食を取っている隙に手に入れようとしたら、すぐに走り出してしまったんです。その結果、揺れが気持ちよく……恥ずかしながらこの有様です」
「そうだったのか。ミセリアの剣なら返してやりたいのは山々なんだが……俺たちも行商人ギルドのテスト中なんだ。もし良かったら買ってもらえると助かるが、無一文だったな」
「かたじけない……」
いつも最後まで読んでいただきありがとうございます。
またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。
一刀想十郎@小説家になろう
@soujuuro




