無色の俺と仕事探しギルドの輪舞
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『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』
あらすじ
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『お腹が空きました』
「聞いた、さっきも聞いた、その前も聞いた」
『私は異なる世界でも稼働できるように設計されています。ですが想定よりも動力を供給できる素材がないと私は感じております。その辺りをどう感じておられますか、現アトラスの持ち主である、マスター』
アルデバランの街中を歩きながら、耳の後ろの皮膚と重なるようにくっついているアトラスから、不満そうなアトラの声が届く。
マリアベルの屋敷を後にした俺とシエロは、アルデバランでギルドを探していた。ギルドに入れば仕事は手に入るし、成功すれば報酬を受け取れるからだ。
しかしその矢先、アトラスは度重なる連続的な大仕事により、動力源が底をつきそうだという。今では片腕だけの戦闘も難しいだろう。
「とは言ってもアトラスは何を動力源にしてるんだ」
『何でもです。この世界にある物すべてが動力源となります。物理的な意味でもありますし、精神的な概念を捕食することも可能です』
「概念ってお化けとか?」
冗談交じりに聞いてみたら、
『可能です。アストラル体として捕食できます。グロウスを取り込めるのもそれが理由でしょう』
ですが、とアトラは続ける。
『どれも動力としては微々たるものです。地平線を突破し、異世界ランディングポイントから遥か彼方への跳躍。そしてグロウスの冷凍保存。これではいざというとき、本領発揮は不可能かと』
「ふむ、戦闘が増えるならば補給は最優先か……」
どんな戦も補給を絶たれたら戦えないのは確かだしな、急務ではある。悩みながら飲食店が並んでいる通りを歩いていると、ぐううと大きな腹の音が鳴った。
勿論俺ではない。
「シ、シエロじゃ——ないよ!」
俺の隣を歩く極彩色の魔女は頬を赤らめながら、上目遣いで激しく手をばたつかせる。そして目に入った飲食店を見て、目の中に星をキラキラと輝かせながら、もう一度腹の虫を泣かせた。
『お腹が空きました』
「お腹が空いたんだよお」
シエロとアトラが同時に呟く。面識ないくせに息合わせやがって。だが二人が言うことも確かだ。アトラスの補充も必要だし、俺たちの補給も必要だ。
うーむと顎を撫で、やはり俺たちの金が優先だろうと考える。
正直なところ、アトラスの補給は現段階では解決策が出ない。だが俺たちはギルドに向かえば金が手に入る。金が手に入れば当面の命の保証はある。
決定。すぐにギルドに向かおう。
「悪いなアトラ、もう少し異世界の自然を満喫しててくれ」
『承知しかねますが、承知しました。これ以上の環境破壊は生態系の変化を招きますので、近くの洞窟にて高純度な素材を期待して潜ります』
「悪いな、俺たちも落ち着いたら、燃料探すからさ」
『ええ、洞窟内に彷徨える騎士の亡霊が出ると噂が広がる前に宜しくお願いいたします』
「善処するよ」
アトラはそこで言葉を切った。本体であるアトラスは、この異世界のどこかでダンジョン探索を始めるとこだろう。
「さてこちらも頑張るとするか」
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一刀想十郎@小説家になろう
@soujuuro




