灰色だった俺と山吹色が照らす道筋
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『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』
あらすじ
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俺が半休体に触れるとベロンと、液体に変わり俺も中に取り込まれる。取り込まれた中はグロウスと一緒ではなく、椅子のように座る場所がある小部屋だった。
普段人型の質量しかないくせに今は小さな部屋って、アトラスの質量はどうなってんだ自由自在なのか? 物理法則に反してやがる。
アトラスの小部屋で俺が椅子に座ると、鉱山から発する魔術素材の波長を感じ取れた。脳の中に楽譜が生まれたように見えて、素材がある方に♪が流れているようなそんな感覚。抽象的なイメージが俺に流れてくる。イメージに沿って意識を向けるだけで、魔術が次々吸い上げられる気がした。分かる、これなら十分に間に合うだろう。
ラプチャーが氷漬けになったのは、それから数分後の事だ。
俺たちは改めて鉱山を出た。
父親は俺がアトラススーツを着用して運んでやった。鉱山の第十層の最下層だ。もし潜られたとしても、あの氷を破壊するのは現代魔術では不可能だろう。
数時間しか潜っていないのに、久しぶりの太陽光はやけに懐かしく手で日傘を作ってしまう。シエロも同じだったのか、すぐさま俺の背中に隠れた。こいつ俺の陰で楽に目隠ししやがって。
「総司郎、ありがとう」
俺の後ろにいたマリアベルが、眼鏡をはずしながら、はにかんで呟く。
「ん、どういたしまして。親父さんを助ける魔術が見つかると良いな」
「うん」
「凍っていても意識は常に焼かれてるんだよ、だから早く見つけてあげてね、マリアベル」
シエロはそっとマリアベルの手を握る。
「うん」
「じゃ帰るか、オークションまでまだ時間あるだろ、少しゆっくりしようぜ! ってまてまてまて、俺達、金稼いでない、どうするシエロ!」
「あ、あああああ、そうなんだよ! これじゃ晩御飯も食べられないよ! とりにくたべたいよー!」
くそ、親父を固める時に鉱山の魔力はほぼ空になるまで吸い尽くしたから、あそこは本当にただの鉱山になってしまった。
「この世界で金を稼ぐ手段はないのか、バイトとか派遣とかねーのかよ! ハローワークが恋しい!」
異世界に来てまで働きたくもないが!
「ふふ、本当に緊張感のない親子だね」
「親子じゃないよマリアベル! そうじろうはシエロの従者なんだよ! シエロをずっと守るのが役目なの!」
「それってお父さんそのものじゃん、ふ、ふは、やば、なんか、ツボに入った」
マリアベルはそのままひとしきり笑って腹を抑える。
ただ笑っている姿を見ていると年相応の幼い女の子なんだなと思う。両親の事を背負いすぎて、大人っぽく見えてただけなんだ。
ひとしきり笑った後、マリアベルは根元の涙を拭う。
「よし、決めた。うちの行き先」
ロングコートの襟元を正して、すっきりとした表情でマリアベルは口を開いた。
いつも最後まで読んでいただきありがとうございます。
またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。
一刀想十郎@小説家になろう
@soujuuro




