灰色だった俺と宝石の魔導士
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『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』
あらすじ
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ふっと目の前からマリアベルの姿が消え、脳の判断が遅れる。やばいと気が付いたときに、足を無理やり引いて、自分で背中から倒れこむ。
さっきまで俺のいた場所は緑色の光と共にアッパーで振りぬかれる。
「ごめんね総司郎、総司郎の事だから言わないとは思うんだけどね」
話しつつも地面の俺めがけて拳を振り落とす。俺は何とか転がり、爆発から難を逃れた。足りない空気を必死に吸って俺は立ち上がる。
「でも前もそうだった。だから、母さん、しんじゃった」
「な、なに……?」
「うちが屋敷の者に言ったの。母がグロウス化したって。信頼できる執事だったんだけど、第八聖剣と騎士団に母さんは狩られちゃった。だからうちはそれを"取り戻しに"返ってきたの」
「取り戻しに……そうか、そういうことか。まさかオークションの商品は——」
「多分、うちの母さんの遺体」
マリアベルはやりきれないように、フードの上から頭を書く。
「だから誰も信じられない。シエロちゃんはしっかりと言い聞かせれば分かってくれるかもだけど」
「俺とシエロなら、二人を助けられる」
俺はつい感情のままに、声を吐き出してしまった。出してからしまったと思う。
「……助ける? 助けるって何? 総司郎は父さんと母さんを蘇らせることができるの? なら、今すぐ助けてよ! 助けてあげてよ!」
反発する子供の様にマリアベルは声を張り上げた。
「うちが魔術に足を踏み入れたせいで、魔術を嫌っていた二人が罰を受けた。謝らせてよ! いま、ここで、すぐに、蘇らせるんでしょ!」
俺は唇を噛み締めて、拳を強く握る。
「俺たちは、俺とシエロは、グロウスを鎮める旅を——家族を助けられるかもしれない!」
「聞きたくない。グロウス狩りの言葉なんて」
「信じてくれ、マリアベル!」
「言葉だけじゃ、心なんて動かないよ!」
マリアベルの言葉に合わせるように、今まで後方に控えていたラプチャーがついに高速で喋りだした。顎を時折カチカチ鳴らしながら、音速以上で声を出すため、キーンとあたりに音が響き渡る。
「きをつけて、本物の魔術が来るよ、そうじろう!」
割れた窓にから必死に叫ぶシエロの声に、俺は目を見開く。するとラプチャーの頭上に巨大な炎の塊が浮いていた。
焔の塊から高速で次々と火球が一直線に飛び出して俺を狙う。避けようと考えたが、マリアベルが距離を詰め一気に俺へと肉薄する。
「取った!」
マリアベルの拳を俺は必至の思いで右腕の掌で受け止めて握る。
「ぐおおお!」
衝撃が右腕から全身へと伝わり、右肩で消え失せる。
次に火球が襲ってくるので、驚いたマリアベルを抱き寄せて前に転がる。
「え、ちょ、ちょっと」
「舌を噛むなよ」
転がり終わってから、俺は右腕を強く振ってコンバットナイフを取り出して左腕に持ち替える。
いつも最後まで読んでいただきありがとうございます。
またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。
一刀想十郎@小説家になろう
@soujuuro