灰色だった俺と虹色の飲み物
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『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』
あらすじ
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すっかり待たされたマリアベルは、少し不機嫌そうにカラフルな飲み物を飲んでいた。なんだそのレインボーな飲み物。アメリカン過ぎない?
「おそいじゃない、総司郎! 家族会話は終わったの? まとまったにー?」
「大丈夫かマリアベル、なんか呂律が回っていないようだが」
「大丈夫に決まってるじゃない、うちぃを誰だと思ってるのよお!」
しらねえよ! と内心突っ込む。口に出したら酔っぱらいは反論すると分かってるからな。
「シエロちゃーん、お姉さんとのものもー?」
「マリアベル、凄い臭いんだよ……」
つつつ、とマリアベルの手を逃れて、シエロは俺の後ろに隠れる。しかしこの世界は子供が酒飲んでもいいのか? 異世界ってのはそこまで法整備は進んでいないもんなのか?
ちらっと周囲を見渡すと遠くにいるウェイトレスが、ペロッと舌を出してウィンクした。
あ、これ間違って出したパターンだわ。
「シエロちゃーん、それでどうして旅してたのー? うちにも教えてよー! 可愛いお姉さんがほしかったの? お姉さん候補を探してたんでしょ! それはどこにいるかって、ここでーす、めのまえでーす!」
喋りながら立ち上がって、獣のような敏捷さでシエロを抱きかかえて頬ずりする。
「うああああ、凄く臭いんだよおおおお、こんなに臭いのは、姉さま以来だよお!」
「ほおら、今の姉さまはあたしだよお、うちに話すまでは絶対に離さない☆」
「そうじろうー!」
「話せ話せ! 好きに話せ! 最悪俺がまた飛べばいい!」
アトラスの力がある程度、回復していればの話だが。
『マスター簡単におっしゃいますが、その分の環境破壊はかなり進んでおります。地上に住まう動植物はおろか、川の水も飲みほしそうな勢いです。それでもあのときと同程度の跳躍力は期待できませんが』
「元の燃料が優秀過ぎだろ! まあ、身を護れる程度ならいい」
『それなら訳もありません。数秒もかからず焼け野原程度になら出来るでしょう』
ならいい、今は好き放題飲み食いしてくれ。すまんな大自然。あと焼け野原っていうけど、好きなの? 口癖なの? マジなの?
「シ、シエロとそうじろうは、」
「シエロちゃんと、ひげのおっさんはあ?」
「地味にディスってくるな、昔はそこまでは得なかったから結句傷つくんだぞ」
何だこの軽い展開は。この街の全てが敵に回るかもしれないのに、この緊張感のなさ。周囲の魔術師たちも、マリアベルの酔っ払いぶりに注目している。
なんせ何も考えずに立っているだけでも、男なら目に留めるほどの金髪少女だ。美をつけてやってもお世辞じゃない。そんな少女が火照った顔でシエロとイチャイチャしてたら気にもなろう。
「シエロとそうじろうは、この世界のグロウスを全て鎮魂させて、魔術を全て無くすんだよお!」
いつも最後まで読んでいただきありがとうございます。
またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。
一刀想十郎@小説家になろう
@soujuuro