灰色の俺と極彩色の魔女
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『黒い流星と極彩色の罪人 ー異世界の魔法に対抗するにはパワードスーツしかないー』
あらすじ
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「だから、まだ、しねねえええ! 他人の不幸の土台に立って幸せを搾取しやがるクソブラック会社を全部つぶすまでは絶対に死ねねええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
暴れようにもアトラススーツは全く動かない。ただの塊になったアトラスは気合では決して動かない。人は不便なもので道具がなければ獣以下だ。
だが、二人より添えば獣以上。
物体となったアトラスの外装から圧力を感じることはないはずなのに、強く腕を掴まれている気がする。
これは狼を必死に助けようとした少女の手だとすぐに分かった。
熱が優しく体中に広がっていき、心の焔に薪をくべる。
『シ、ステム——スリープモードから起動。おはようございますマスター。周囲の明度からどちらかというと、こんばんわ、でしょうか』
アトラの間抜けな挨拶と同時に黄金甲冑から放たれた光の奔流が地面を削りながら迫ってくる。
俺は咄嗟に思いついた言葉大声で叫ぶ、それが実装されているのかいないのかなんて分からない。
「全方位シールド展開!」
『ディフェンスモード起動』
「あるのかよ! 言ってみるもんだな!」
アトラススーツの両足の踵から爪のようなものが地面にがっしりと打ち込まれる。背中にいた魔女は俺の背中に寄り添う。両腕をガードするように近づけると、幾何学模様が走り、バリアのような薄い半透明の膜が俺たち二人を包み込んだ。
俺と魔女は太陽に飲まれたかのように激しい光に全身を焼かれる。
アトラススーツを着ている俺は大丈夫だが、このシールド内にいる彼女は大丈夫なのか?
「耐えててもらちが明かねぇ、ここは——」
『全マルチロックミサイルにて、焼け野原にできますが』
「却下だ、光に紛れて戦力的撤退だ。やっちまう必要はない」
例えできたとしても他の兵士たちを脅かす必要もない。
『了解しましたマスター。ディフェンスモードからイェーガーモードへ移行』
俺は背中にいた魔女を強く小脇に抱きかかえる。
「折角のお誘い、悪いな社畜騎士さんよ。俺は俺が選んだ道で誰かの幸せのために生きてみたい!」
全身が後方に引っ張られるような感覚、黄金剣から放たれた力も手伝ってか、アトラススーツ共々、俺と魔女は勢いよくその場を飛び立つ。
その勢いは生身で新幹線にでも乗っているような感じだった。
思い返せばそれは、きっと地上からは黒い流星に見えただろう。
いつも最後まで読んでいただきありがとうございます。
またお時間がございましたら、次話でもお待ちしております。
一刀想十郎@小説家になろう
@soujuuro




