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隻眼の俺と魔術を狩る者の牙

基本更新日は月水金投稿。

次の更新は金を予定しています。

 舟をこいでいるのは逆立っている赤毛の元気そうな少年。首に赤いスカーフを巻き、ストライプの服と短パンに身を包んでいる。


「シュラクか、背が少し伸びたんじゃないのか?」


「ああやっと一センチだけな——寝る前の牛乳が効いてるぜ! って何言わせんだよ、義贋総司郎」


 何故か、以前のような敵対心は薄れ、少しばかり柔らくなったシュラクがいた。多分、遺跡地下の戦いで多少は分かり合えたのだと思いたい。


「あれ、義贋総司郎、少し痩せたか?」


「ダイエットしたのさ」


 腹を軽く触りシュラクに笑い返す。


「ふーん、まあいいけど。乗りな。足元に気をつけろよ」


 言われるがままに俺はゆっくりと乗船し、シエロの手を取って、ゴンドラ船へ案内する。次に遠野へ手を出し、


「あ、あによ」


 と、戸惑われた。


「揺れるだろ」


「総司郎が手を差し出す程度には、レディーに優しいのは想定外だったわ」


「ひでぇ言われようだ、錬金術師様」


 手を下げてやろうと思ったが、遠野は僅かばかり躊躇して、そっと手を添えてゴンドラへと乗った。


「じゃ行くぜ。しばし街並みを堪能しててくれ」


 手に持った長いオールを使って、シュラクはゴンドラ船を動かし始めた。


 シエロは川の水に手を伸ばし、真っ白でストレートな髪をたまに押さえている。その姿がいやに似合っていて、生まれる場所さえ違えば水辺のお嬢様のように毎日幸せに暮らせたのだろう。


 遠野は街並みと潮風を堪能し、自分が召喚されていた時代の異世界を思い出して、感傷に浸っているようだった。遠野も遠野にしかない物語があったんだろな。


 晴天の下、船はのんびりと曲がりくねった裏路地を進む。


 誰も多くを語らないのは、この街にはもう黒甲冑が存在しているというハイネの言葉が頭から離れていないせいか。


 俺たちが確実に全員生存出来るカードを生んだのか、それはまだ不確かな未来だ。


 実際に選択できる未来が増えているかは、ハイネ自身も《未来の分岐点》の時間に辿り着かなければ分からないと言っていた。


 だから後は運命の流れに任せるのみだった。


「着いたぜ」


 シュラクの声に意識が戻る。


 何処をどう曲がってきたのか、迷路のような街並みの奥地に綻びた階段と木の扉があった。シュラクはゴンドラを括り付け、ドアを開いて俺たちを家の中へといざなう。


 部屋の中に入った瞬間に、シエロは少しばかり顔をしかめた。


「……そうじろう、すこしだけグロウスが囁いてる」


「グロウスだと……?」


 室内は高給そうなテーブルやソファー、絨毯などがある豪華な部屋だ。


 遠くから歩いてくる足音に耳を澄ます。それは緩慢であり、悠々と自信に満ちた足取りだった。


 俺には足音の前に、失った右目により、現れる人物のシルエットは確認できていた。


 顔半分が真っ青な焔に燻ぶられ、実に痛々しい。表情に苦しみはなく、むしろ悟ったような表情だ。長い髪は後ろで縛っているタキシード姿の二十代後半の男性。手には紳士が持つような杖が握られている。


 遅れてリビングから二階に通じる階段に、その人物は姿を現した。


「遠路遥々よく来てくれたね、黒騎士殿」


 黒騎士とは初めて呼ばれる呼称だ。


「僕はアルベド、マギアハウンドの創設者さ」

異世界文芸アクション週間ランキングで146位にランクインできました。

2019年9月1日からたまに心配で挫けつつも投稿を続けられるのは、読んだ反応として頂けているブクマと評価のおかげです。


『少し先を読んでもいいかなぁ』

『異世界と戦う現代SFに興味がある』

『アニメにしたらいい良い動きするかもなあ』


と思っていただけましたら、広告下にある評価やブクマを頂けますと、挫けずに書き続けるモチベーションへと繋がります。

もしよろしければお気軽にどうぞ。

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