事業家の商売
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あらすじ
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「遺跡はまだ手に入らないのか」
街から遠く離れた丘の上で、優雅にお茶を飲む一人の男がいる。
その男は貴族のように整った身なりをして、目の鋭いメイドに日傘を持たせ、双眼鏡でトゥリズモスの街を覗いていた。
「報告によれば市内には聖剣アウルム、元聖剣ガドウと魔術殲滅組織マギアハウンドの一部がいたようです。それと——」
「どうした」
「どうやら見慣れない魔術のような武器を扱う黒甲冑がいるそうです」
「黒甲冑か?」
「違います」
「なら何でもいい。黒甲冑でなければ勝ちは貰った。しかし予定よりも時間がかかっているな。《四肢》だけでもかなりの数を投入したはずだが」
男は苛立つわけでもなく、優雅さは崩さずに紅茶を口に含む。
「四肢のほとんどは聖剣や黒甲冑もどきに無力化されたようです」
「所詮はグロウスの一部位を《インぺリウム》しても、程度の低い魔術では聖剣には遠く及ばんか。《遺体》とインぺリウムしたチームはどうだ」
「遺体も大分、遺跡に近づいたようですが——黒甲冑もどきに全員が討たれたそうです」
「全員だと、遺体を十二名も投入したのだぞ?」
男はやっと感情らしいものをみせ、強めにティーカップを置いた。
「なんでも黒甲冑が守る少女が次々とグロウスを無力化しているようでして——打つ手がないようです」
「無力化だと!?」
ガタッと男は椅子から立ち上がりメイドを見た。
「補給物資にて再度、インペリアルを試みたようですが、全て消されました。坊ちゃまご指示を」
「なんだその黒甲冑と少女とは——いや、この場合は少女を守る黒騎士といったところか………!」
歯ぎしりをして、大きく溜息をついて椅子に座る。
「まあいい、イレギュラーだ。四肢と遺体の精度調整は引き続き必要だ。遺跡奪還はできずとも、能力テストは分かった」
「承知しました。しかしお言葉ですが、どの国もまだ介入していない遺跡というのは珍しいですが」
「よい。既に手は打ってある。いずれ第四聖剣が情報を回してくれよう」
「第四聖剣ですか。どうにも私はあれが好きではありません」
メイドは思い出しただけで、動く生ごみでも見たかのように目を細める。
「そういうな、使える者は何処までも使う。我が家の家訓の一つだ」
「では撤退だ。首謀者は適当に差し出しておけ。何か漏らすようならば後で殺せ」
「そのように」
メイドはすぐさま、伝令役である鷲を飛ばして、お茶菓子や食器の片付けに入る。
「遺体十二体に準備していたグロウスの四肢五千は全てゴミと化したか、赤字だな」
双眼鏡をメイドに手渡し音kは近くの馬車に乗る前に、一度街へ振り向いた。
「だが悪くないビジネスだ。グロウスは全て我が頂くぞ、聖剣、黒騎士よ」
不気味に男は笑い、馬車はすぐに走り出した。
立ち上がる煙が収まるトゥリズモスの街を見つめる者は、もう誰もいいなかった。
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