隻眼の俺と魔術行使の新たな可能性
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あらすじ
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『マスター、どうやら魔術にロックオンされています』
アトラスの周囲の気温が一瞬にして下がり、俺自身を氷漬けにする。氷漬けにしたうえで、更に空気中の水分を圧縮して氷の牢に閉じ込めていく。
「氷漬け、氷漬けだああああ!」
男は外壁の上でむやみやたらに腕を振り、建物ごとアトラスを氷漬けにしていく。
「レアものをテイムするのには骨が折れたぜエ——これからは魔術のお勉強なんかより、魔術が使えるやつを捕まえる時代がやってきたんだよ」
男はグロウスに掴まると、グロウスは大きく跳躍して氷の前に着地する。
「ふん、黒甲冑もどきは歯ごたえがねえなあ——ぐっ!」
突然苦しそうに喉をかき、男は急いでローブのポケットから、注射器を取り出して乱暴に自分の右肩にぶっ差した。
「ふう、魔術浸食が強すぎるのが難点か。止めを刺せ」
男に命令されてグロウスは、鋭い氷の刃を上空に一本作り出す。そのまま刺し殺す狙いだろう。
「——その程度か?」
俺は内側から氷を破壊して右腕だけで男の首を掴んだ。男を持ち上げたとき全身を包んでいた氷も全て弾け飛ぶ。左腕を強く振り、高周波ナイフを上空へと投げて氷の刃も破壊する。
「ぐえええ、な、なんなんだきさまああ」
「聞かせてもらったよ。つまりこの世界は魔術を行使するんじゃなくて、魔術を扱うグロウスを、どう使役するかも模索していたわけだ」
確かに合理的ではある。人間が魔術を使えば魔術汚染でグロウウへと変化するが、グロウス自信を扱えば、魔術汚染は防げるかもしれない。
「だが何らかの副作用があるから、さっきの薬か」
俺は男のポケットを探ろうとするが、グロウスが遠隔操作で殴りかかってきたので、その腕を手刀で払いのける。
「この薬は何処から……」
緑色の液体が詰まった注射器を、俺は一本拝借し、アトラス内に保管した。
「てめ、かえせこら」
ついでに手刀で男の首に打撃を与えて気絶させる。
男が気を失うと幽霊のように立っていたグロウスも同時に姿を消した。
「お化けに憑りつかれている、いや、憑りついてもらってるようなもんか」
肩に男を担いで民家の屋上を次々とジャンプする。
アトラの指示でシエロたちの方向へと向かう。
上空から見る限り、住民の大多数の非難は完了したようだ。
「おーい、シエロ!」
街外れの原っぱにいる住人たちを守るように立っているシエロと遠野を見つけて俺は着地する。
「そうじろう!」
「誰その男」
走りってきたシエロと遠野の前に、俺は男を置いた。
「この人、腐ったグロウスの匂いがするんだよ」
うっと鼻をつまんで、シエロは俺の腕に手を添える。
「どうやらグロウスを取り込んで使役していたようなんだ。それでグロウスに魔術を使わせていた」
「へえ、合理的じゃない。ちょっと研究素材にしてみたいかも」
「目が覚めたら危ないからやめとけ、遠野。シエロ頼む」
シエロはうんと大きくうなずき、鎮魂歌を歌い始める。
男の身体からは蒼い焔が浮かび上がり、黒い灰となって空気中に溶けていく。
「鎮魂歌ね——シエロの歌声は、エラーの生命概念にワクチンを撃ち込んで、正しい死者へと正常化させてるわけね。注入方法が歌声なんて、ロマンチストが作り出したのかしら」
「一目で良く分かるな」
「魔法に似ているわ。それより総司郎、外の敵は何者?」
遠野は銀髪の前髪を弄りながら、俺に問う。
「まだはっきりしない、だが街はまだ戦場だ。まだ指揮官がいる」
「そうね、私も出ようか」
「いや、住人の避難と護衛を頼む」
「そう、分かった」
少し残念そうに遠野は、白衣に手を突っ込んだ。
「寝起きの準備運動は次にとっておくわね」
「そうしてくれ、行くぞシエロ、全グロウスを送ってやるぞ!」
シエロは一瞬、「え?」という顔をしたが、うんと頷いて、俺の腕に掴まる。
「俺がシエロを守って、シエロが鎮魂する」
「いこう、そうじろう!」
俺はシエロを抱きかかえて再び、温泉街の空へと舞った。
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