隻眼の俺と開演狼煙
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あらすじ
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「義贋……さん、皆に好かれてるじゃん」
「総司郎でいい、慣れてる。それにイケメンと筋肉は俺の命を取ろうとした奴らだ」
「そういうの悪くないじゃない」
「どんなだよ」
しししと笑って遠野はとことこと歩いていった。
その後、俺たちは起きたシエロと一緒に旅支度を整える。シエロはいつも通り真っ白なお嬢様風の衣装で、遠野はレウィンリィの服をそのまま着ていく運びとなった。どうやら胸がだらしないTシャツとホットパンツは貰っていたらしい。
「総司郎、少しお金貸して」
流石に恥ずかしいと言って、彼女は温泉地に走り、数分後に戻ってきたときは、上に真っ白な白衣を羽織っていた。
「白衣あるじゃんと思って買っちゃった。少しは錬金術師っぽく戻った?」
くるっとその場で一回転し、白衣の中からホットパンツとだらしないTシャツが見える。
いるわ、こういうだらしない格好の白衣の人。まさに、
「マッドサイエンティストにしか見えん」
「女子に言う言葉じゃない」
「シエロとお揃いの色だね、マヤカ」
「ね、白は綺麗で私、嫌いじゃない」
えへへと二人で笑い合い、その間に旅支度を終える。
「クロエ、お前はどうする?」
「私は、ガドウ達と残る……」
表情は薄いもののニコリとほほ笑んで、シエロの手を握る。
「遺跡調査からシエロの手伝いになれたら嬉しいから」
「クロエ!」
シエロは勢いよくがばっとクロエに抱き着く。
いっぱい話したいだろうに、胸が詰まっているのか言葉にならずシエロはずっとクロエを抱いた。クロエはゆっくりとシエロをはなして、おでこを合わせる。
「大丈夫、また会えるからシエロ」
「あ、ありがとう、クロエ」
少しばかり鼻水をすすってシエロは俺のそばに戻ってきた。そして頬を二度軽く叩いて、よし、と声に出す。
「クロエ、気を付けてね!」
「シエロもね」
俺たちは別れを済ませ、新たな古代遺跡が発見されてざわついている街を、人込みをかき分けながら進む。
「本当に離れていいのか、遠野。あの沈んだ街に置き忘れとかないのか」
「ないわ、綺麗さっぱり消えてる。もしかしたら湖の底に何かは残っているかもしれないけど、この時代じゃ引き上げる技術はなさそうね」
「そうか、じゃ次はどの街を目指すか考えないとな」
「シエロ馬車がほしい、大きいの。三人で寝れるやつ」
「悪くないわね、それ」
「じゃ、まずは馬車を——」
と話しかけたところで、耳に切り裂くような音が響き渡る。
「伏せろ!」
俺は咄嗟にシエロと遠野に覆いかぶさり、二人を地面に押し倒した。
「——聞こえる、グロウスの嘆き声が」
シエロが俺の腕の中でハッを追上げる。
先ほどの音は遺跡側ではない。街の入り口付近で煙が上がっている。
「そうじろう、早くみんなを避難させないと」
「私とシエロに任せて。総司郎はグロウスを」
「分かった——何かあれば東の出口で落ち合おう」
「了解」
流石は過去の世界を救った英雄錬金術師だ。
遠野は慣れた動きですぐさま人を誘導し始める。
俺もアトラスに身を包み、上空へと跳躍する。
——そこで見たのは、みたくない光景だった。
トゥリズモスの街を紫色の旗をはためかせた、大多数の人間たちが取り囲んでいた。信じられない量の魔術を放ちながら。
異世界文芸アクション日別ランキングで55位にランクインできました。
2019年9月1日から毎日工夫して投稿できるのも、皆さんの力のおかげです。
しかも本日も1日1000PV突破しました、感謝です!
『少し先を読んでもいいかなぁ』
『ヒロイン活躍させて!』
『バトル早く見せて!』
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