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第1話 5

5

 人事の説明(給与体系とか、勤務時間とかの)が終わり、休憩を挟んでから特別研修が開始される。少しなれてきたのか、中には説明中にも隣の人と雑談をするような人もいた。そこへ、ドアをがらっと開けて、一人の女性が入ってきた。あれ?あれは・・・。

 「あっ!お姉ちゃん!?」

あたしはびっくりして立ち上がった。あれは紛れもなく、あたしのお姉ちゃん。鉄火レイカその人だった。

 ブラウンのロングヘヤー、少しつり目の整った顔に黒縁の眼鏡。スレンダーな体にぴったりとフィットする白衣を着て、すっと壇上にあがってきた。

 後ろからお姉ちゃんが飼っている「MoNStEr」のユキヒョウのしろちゃんがついてくる。しろちゃんは白いモフモフの長い毛に黒い斑点が所々ついていて、大きなネコみたいだ。たしか第二世代って言ってたな。

 「あら、マキちゃん?元気そうね?」

あたしに気がついたのかあたしに軽く手を振り、にっこりと微笑むお姉ちゃんに会場の男子達も驚きの声を隠せなかった。

 「あれが有名なレイカ様」「やっぱり綺麗だー」「スタイルええなー」「氷の女王降臨!」「やはり姉の方が美人やな」「あの冷たい目で凍らせてー」「ぜひ踏んでほしい」

最後のはなんだかと思うが、やっぱり有名人だったんだ、特に理系男子の。

身内が注目されるってなんだかこそばゆい感じがする。

 あたしは就職するために先月に田舎の実家から離れて、お姉ちゃんの家に一緒に住んでいる。今朝の朝食を一緒に食べていた時も、家を出るときでも、今日の研修に来るなんて一言も言っていなかったのに。きっと、おもしろがって隠していたなーっ。


 お姉ちゃんはマスコミへの露出が多く、大学教授なのに有名人だ。ここの社員でもない人を会社の新入社員研修の特別講師として呼ぶって、いったいなにが始まるというの?


 お姉ちゃんは周りを見渡して、自己紹介もせずにいきなり話し出した。いつも雑誌やTVのインタビューを受けているためか、流ちょうに。

 「さて、皆さんの会社で製造している化学製品のなかで、近年特に業績を伸ばしている製品の一つに「MoNStEr」があります。近年、御社では「MoNStEr」の新たな需要を拡大しようと、一大プロジェクトを発足させました。

プロジェクトの目的は、「MoNStEr」を一般消費者が購入出来る価格まで引き下げることと、商品に付加価値を加えることによる潜在的な購買層の拡大です。そのために生産効率アップおよび機能追加の検討が行われています」

 そうなのだ。家でもお姉ちゃんがよくそう言っていた。今の「MoNStEr」は高すぎるし、ただのペットと同じだから誰も高いお金を出してまで欲しがらない。同じ目的なら、犬や猫の方がコストパフォーマンスに優れているからね、と。

 「プロジェクトは一定の成果を上げつつあります。皆さんの肩の上に乗っている子達は御社の開発した第二世代「MoNStEr」、製品名は「KC-MoNStEr Ⅱ」の試作品となります。

そして皆さんには試作品のモニター兼パートナーとして、これからは常に一緒に行動していただき、「MoNStEr」の行動をまとめて会社へ逐次報告していただきます。

これは会社の決定ですので拒否は出来ませんよ。既にサインしていただいた雇用契約書にも一番下に小さな字ではっきりと書いています。

会社が社外秘と決めた項目ついては、当然のことながら守秘義務が生じます」


 会場からは驚きの声が上がっていた。「えー、そんなの聞いてないよー」という困惑の声のが三分の一、「新製品?やったー」という喜びの声が三分の一、「うひひ」や「でへへ」?というのが三分の一。なに?最後の? 

 まあ、あたしは家にお姉ちゃんのユキヒョウ「しろちゃん」がいるから「MoNStEr」には比較的慣れているんだけどね。

 まだお姉ちゃんの説明は続く。

「明日の朝に皆さんのパートナーをお返しします。まずは仲良くなってもらって、期間中は「MoNStEr」の個別能力を訓練して、個別能力を伸ばすようにしてください。

ちなみに第一世代と第二世代の違いは、会話ができることと個別能力があると言うことです。

個別能力は「MoNStEr」ごとに違うので、やり方は人それぞれで違ってきます。

そうですね、最初は名前をつけてあげて、できるだけコミュニケーションを多く取ってください。そうすれば個別能力は伸びてくると思います。訓練がんばって下さいね」

 「今回の研修前に、皆さんの性格、特技、趣味嗜好、家族構成等は調査してあり、「MoNStEr」はあらかじめこちらで皆さんと最適と思われる組み合わせで選ばせてもらっています。

つまり皆さん一人一人のためにカスタマイズした製品と思ってもらってかまいません」

 つまりあの白い子はあたし専用なんだー。そう思うとさらにかわいく思えてくるよー。えへへ。これからよろしくねー。なんて軽く思っていた。


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