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第2話 3

3

 その中で、あたしが一番遊んでみたかったのが、「宇宙工場エリア」にある、一番人気の「宇宙酸欠編」でカブキが宇宙基地の高い塔の上から飛び降りるシーンをモチーフとした、バンジージャンプだ。

 しかしただのバンジージャンプではなく、最初は地上30メートルの高さで、幅50センチメートルの細い吊り橋20メートルを走って渡り、バンジージャンプの紐までたどり着く。次に、自分で装着したバンジージャンプで飛び降りたあとに、つり下げられた状態でブランコのように揺れて、近くの避難はしごまでたどり着き、脱出する。という複合バンジーになっていて、タイムアタックが熱くなっている。通称『宇宙バンジー』。


「なんで宇宙工場に吊り橋あんねん!」・・・乱ちゃんの突っ込みごもっともです。


「ねえメルちゃん。一緒にやろうよ!」

「あの、わたくしスカートなので、あの高さではちょっと・・・」

「じゃあ乱ちゃん、どう?」

「あの、ウチは・・・、ああそうや、ウチの死んだ双子の弟の遺言でバンジーだけはしてはあかんと」

「層君なら後ろで睨んでるよ?」

「鉄火、このアトラクションでは過去に何人か落ちて怪我をしているそうだぞ?」

「月平やだなー、それは都市伝説だって。そんなことあったらアトラクション閉鎖じゃん」

「マキちゃん、なんでこんなときだけしっかりして、誤魔化されてくれないんや?」


 その時、うしろから不快な笑い声が聞こえて来た。

「ふはははは!そこのマグロガール!『宇宙バンジー』のタイムアタックレコードホルダーの俺様に挑戦するとはいい度胸だ!どこからでもかかって気やがれ!俺は誰の挑戦でも受ける!」

「あ、風雲さんって、あんたやっぱり第3プラントの山猿男!またあたしをマグロと呼んだ!」

 やはりこいつか!くっそー、決着つけてやる!

「よし、折角だから勝敗に条件を付けよう!そうだな、俺が勝ったら俺の彼女にしてやる!ありがたく思え!」

「くっ、あたしが勝ったら二度とマグロガールって呼ぶな!」

「烈(たけし)、馬鹿なことやってないで鉄火さんに謝りなさい!」

「咲、邪魔すんな!これは漢(おとこ)の熱き闘いなのだ!」

「あたしは女だよっ」


「マキちゃん、やめとこうや。あいつ毎週通ってるクチやで。勝ち目ないんやないか?だってマキちゃん初めてやろ?」

「嫌だよ。あたし絶対に負けないモン!」

「どこからその自信がくるんですの?わたくし、もし仮にマキちゃんが負けてしまったことの心配をしているのです。マキちゃんがあんな野蛮な男に、あんなことやこんなことを。マキちゃんの純情はわたくしが・・・」

「初心者のマグロガールにハンデをくれてやる。そうだな10秒を俺様のタイムに足してやるから安心しろ!ははは、楽しみだな俺様の勝利が!」

 

 なんでこうなったの?あたしホントは自信ないんだよ。でも売り言葉に買い言葉で勝負することになっちゃった。しかも負けたらあの山猿の彼女とか?冗談じゃないよ。あたしの彼氏はもっとやさしい人がよかったのに。例えばいつもあたしを守ってくれる・・・、例えば・・・。

 でも、やるからには本気出す!元オリンピックマラソン代表候補をなめるな!


ルールは、より短い時間でクリアした方が勝ち。スタート地点にあるボタンを押すと時間のカウントが始まる。そして全ての工程をクリアした先にあるボタンを押すとカウント終了だ。

「今までの最短タイムは52秒。もちろん俺様の記録だ。今日はさらに2秒縮める!」

 うわ、やるき満々だよ。まぢどうしよう。


山猿男のスタートだ。

最初に吊り橋を渡り出す。が、この吊り橋はただ狭いだけでなく、足場の板が細く隙間が広すぎる。しかも一歩一歩あるく度に上下左右にかなり揺れるように出来ている。20mは短い様だがこんなに揺れるとあぶなくて時間がかかる。一応落下したときの安全対策としてネットは張られているが、それでも危ない。山猿男は慣れているのか、揺れを気にもとめず淡々と前に進む。意外と運動神経はいいようだ。

 吊り橋を渡りきって、バンジーの紐を装着する。あらかじめ着込んでいたハーネス型安全帯付きジャケットの金具にバンジーの端のフックを二カ所取り付ける。二カ所付けるのは万が一装着が甘かったり、ロープが切れたときの保険だ。

 フックを金具に付けると躊躇なく踏み台からジャンプして下へ勢いよく落ちていく。これむちゃくちゃ恐いよ。

 落ちきった途端に体をよじらせて遠心力の応用か、吊り下げられたまま体を左右に振りだした。振れはだんだん大きくなり、近くに設置しているはしごにまで到達する。そこではしごの取っ手を手でつかんで足場に足をかける。直ぐにハーネスの金具からフックを外して、垂直はしごを下に下りて、はしごの横にある赤い終了ボタンを思い切り叩いた!

 タイムを見ると宣言通り50秒台の50.02秒。

 こんなの無理ゲーだよ。先に誰かのを見てから勝負を受ければよかった。というか、見たら勝負を受けなかったけど。

 山猿男は息を切らしながらこちらへ戻って来た。

「どうだ、俺様の勇姿を見て声も出ないか?勝負を降りるなら今のウチだぞ。その場合も俺の勝利になるけどな!はぁっはっはっ!」

 うわ、悪役丸出しのセリフだよ。これで勝負降りるなんてまぢありえない。

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