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待夢マシン  作者: 太子
3/5

真歩との出会い

スポーツ科学を専攻している俺の卒論のテーマは、筋肉の超回復の効果を高める食事法だ。

栄養学等、様々な科目を履修したが、あまり理解はできていなかった。陸上部の朝練で疲れて、講義中寝ることが多かったからだ。まあ名前を書けば入れる大学と言われている以上、寝てるやつが大半だ。


「夏バテ予防に一番効果的なのは、体温を上げ、汗をかける体にすることです。」

教壇のハゲた講師が言う。学生からのあだ名は、初日の出だった。

柔道部の監督で全国的にも有名らしく、オーラもあるが、結局はただのハゲジジイだなって思う。


「冷たいものを摂ったり、冷房を使いすぎるから、夏バテになるのです。高齢者が熱中症によくなるのは何でかわかりますか?それじゃあ、当てるか、米沢、何でかわかるかな?」

講師は自分の方に向け、指を指す。教室のLEDの蛍光灯が禿げた頭を輝かせる。


やべえ、まほのことで頭いっぱいで何も聞いてなかった。


「わ、わかりません。」

申し訳なさそうに言う。


少し、講師の目が鋭くなる。

「おまえ、ぼーっとしてんじゃないぞ!じゃあ高橋!」


「瞬間的な発汗能力が低いからです。」


「発汗できないとどーなる?」


「体温を自分の力で下げれません。」


「パーフェクト!大正解だ!評価をあげとこう。」

講師は目を細め笑顔を見せる。


「ありがとうございます!」

高橋は手を後頭部に当て、謙遜していた。


講師は指をポキポキと鳴らす。

「じゃあ、ちょっと難しい話をしよう。ここからは興味ない奴はテキトーに聞いてていいぞ!

エネルギーをつくる小器官には、ミトコンドリア系ってのが存在する。そいつは約38℃から39℃ですごく元気になり、エネルギーを生成しまくるんだ!

しかし、機能をこれ以上高められないという限界に達すると、ミトコンドリア系はチトクロームCという物質を出すんだ。その物質が細胞キラーで細胞を殺す。

だから、熱中症とか湯あたりとかが出てくるんだ。」


この後どうすっかな。

ふと、ため息をついた。

周りを見ると大抵のやつはスマホを弄ったりと話を聞いていない。


「最後に、運動部のやつはこの時期熱中症に気をつけろよ。しょっぱいものを食べて塩分補給したり、辛いものを食べたり、しっかり水分をとって、汗をかける体にして熱中症にならないようにしろよ!」


1コマ目の講義が終わった。

次は空きコマで1時間半ほど時間がある。

ちょっと早いけど昼飯でも食べるかな。

大学近辺のラーメン屋へといく。


量が多い割に安く、学生で賑わうお店だ。バイトも店主も全体的に若い。


「味噌チャーシューメンの大盛り、野菜多め、ゆで卵トッピングで!」

いつもこんな感じで注文する。これでも750円なのだから安い。そして大盛りもそんじゃそこらのラーメン店の大盛りの二倍はあるのだ。


3コマ目は救急法だ。

自分はレスキュー隊や消防士などに憧れていて

受験するつもりだが、学科がさっぱりわからず半ば諦めつつある。


「今日は、BLSのガイドライン2010と2015の違いをみていこうか」

30後半、ショートヘアで、日サロに通い続けている黒い講師が言う。


「胸骨圧迫はガイドライン2010ではどうなってた?じゃあ米沢!」

今日に限ってよく当てられるな、と心のなかで思うが、これは得意分野である。

「胸骨の下半分を五センチ以上圧迫します。」


黒い顔から白い歯が現れ、嘲笑う。

「おい!おまえどーした?今まで一回もまともに答えられたことないのに、頭でも打ったか?これは脳神経外科とか受診しといたほうがいいぞ。」

ドッ、と教室が笑いに包まれる。


成績は常に最下位らへんの俺はこんな感じで毎回馬鹿にされている。

まあもう慣れっこであるが。


すべての講義がおわり、車であの踏切へと向かう。まほに告白した時のことを思い出す。


高校三年の5月


「たかし、おまえ最近なんか変じゃね?心がどっかに飛んでっちゃってるぞ。」

同じ陸上部で常に切磋琢磨してきた、元太が言う。


「いやー、実はさ、おまえにだから話すけど、好きな人できたわ。」

できる限り冷静を装って言うと、元太は目を大きくし、驚く。

「え!?おまえ、今までずっと女になんか興味ねえとかいって数多くの女を振って、ホモ疑惑まで出ちまったレベルなのに!?だれだだれだ?」

元太はおそらく母が作ってくれたであろう弁当のブロッコリーを取ろうとする。


「C組のさ、生徒会に入っててバトミントン部のエースで、成績学年トップ3に入ってる子、名前なんだっけ?」

コンビニ弁当のおかずを口に運ぶ。


「確かそいつは、江口だ!てかおまえ、好きな子の名前くらいすぐ覚えろよ、ホントに好きなのかー?!」

ブロッコリーをパクっと食べながら元太は言った。


「ごめんごめん。ド忘れした。」

教室は様々な話が聞こえ、どこを見ても盛り上がっていた。


「しっかし、おまえみたいな成績学年ビリクラスの奴がさ、そんな頭良くて生徒会の奴なんか相手できんのか?」

元太は顔を右に傾ける。


「たぶん大丈夫だよ、あの子いい子そうだし。」


「まあ、おまえがそこまで好きなら応援すっけどよ!」


「実は今日の放課後、呼び出して告ろうと思うんだ。」

少し手に汗がにじむ。


「まぢか!積極的だな、当たって砕けろ、だよな!さすが短距離走に強いだけあって、スピードタイプだ!」


「いやいや砕けはしないよ。」


「どっからくんだよその自信。」

元太の目が細くなる。


「さあね。」


帰りのホームルームが終わった瞬間、C組へと向かう。


「あの、江口さんいますか!?」

とりあえず、教室の入り口付近でこちらを見てきた女の子にいう。


「あー、まほなら生徒会室にいるはずだよ!生徒会関係の用事?」


「いや、違うんだ、まあ生徒会室いくわ。」

緊張で既に喉がカラカラに乾いていた。


生徒会室へといくために階段を駆け上がる。心臓はやたらバクバクしていた。

生徒会室のドアをノックする。


はーい、と可愛らしい声が聞こえた。


ドアを開けてくれたのは、江口さん本人だった。顔が熱くなるのを感じ、額に汗が滲んだ。

生徒会室に他に誰かいる様子はない。


「なにか用ですか?」

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