第六十二話 パンデミック・シング
何度か飛行機を乗り継いで、三上と山田は中国大陸に辿り着いていた。
「ここからは最終フライトだ。それで日本の上空に辿り着く。後は手はず通りに」
パイロットが二人に声を掛けると、型の古いレシプロ機のコックピットへ乗り込んだ。
三上と山田も後部座席に乗り込む。
「およそ三時間ほどで日本の上空に辿り着くらしい。もっと近い飛行場も昔はあったらしいが、放射能汚染で人が寄りつけなくなっちまったそうだ」
山田が三上に話しかけた。
三上はそれに空返事をするだけだった。
間もなくエンジンに火が入る。
プロペラが回転数を上げ、機体は徐々に加速していく。
その振動を感じながら三上は席にもたれ掛かり窓の外を見つめていた。
機体が飛翔した。
地面が遠のいていく。
「……大丈夫か? 不安ならパラシュートの展開方法また確認するか?」
「あ、いや違うんです。その、考え事をしてました。それにほら、俺飛行機と色んな意味で相性悪いんで……。少し休みます」
三上はそう言うと目を閉じた。
飛行機の揺れが心地良い。
いつしか三上は夢を見ていた。
過去の記憶。世界がニューオーダーウィルスによって崩壊する以前の、ある日のことを。