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パンデミック・マン  作者: ですの
パンデミック編
60/65

第六十話 ワールドステイト・スロウン

ベイズアザディの本拠地、LA。

マホーンがその地に仲間達と共に戻ってきた時、既に街のあり様は凄惨なものに変貌していた。


武力で従えていた各地のコミューンが蜂起したことで、ベイズアザディは最大勢力としての価値を完全に失っていた。

度重なる元傘下のコミューンからの攻撃に対して、司令官を失いニューヨークでの戦いで疲弊していたベイズアザディの兵士達は成す術無く倒れていった。


街は荒れ果てていた。

マホーンは懸命に名前を呼ぶ。


「セド! どこに居るんだ!!」


マホーンと彼がニューヨークから連れてきた仲間はセドの捜索を続ける。

しかし、遂にセドを見つける事は出来なかった。


「その少年は、きっと無事に逃げていますよ」


「そうだといいんだが……」


マホーンは不安に胸を駆られていた。

連れてきた仲間の内の一人がマホーンに声を掛ける。


「そのセドという男の子は何者なのですか?」


「彼は、セドはな。その昔ベイズアザディがまだ今のようなコミューンでは無く、中東の裏社会に君臨する過激派組織だった頃のある幹部の子供なんだ。彼は私が守ると、育てると誓った。だから探し出さなくては……」


太陽が徐々に沈んでいく。


そしてとうとう辺りが暗闇に包まれた。

マホーン達の手に持つ懐中電灯の明かりだけが街を照らしていた。


マホーンは仲間たちの説得でとうとう捜索を諦めた。


「……街に戻ってきて少なくとも分かったことが一つある。ベイズアザディは壊滅した。それが確認できただけでも今は良しとする。帰ろう、マンハッタンへ」


マホーン達は街を去る。


彼らの懐中電灯の光が遠のくのをセドは物陰からひっそりと見ていた。

彼の眼は虚ろにその光を追っていた。


「誰も信用しちゃだめだ……、誰も……」


自分に言い聞かせるようにセドはそう呟き続けた。


彼の目の前で繰り広げられた惨状。

少なくとも平和な生活をしていたLAの一般市民が次々と襲われ、無残に殺されていくその様をセドは全て見ていた。

彼をなんとか逃してくれた保護係の老夫婦もあっけなく殺されてしまった。


それからも幾度となく続いた他のコミューンからの襲撃。

セドは何もできず、ひたすら街中を逃げ続けた。


そしてマホーン達がLAに戻ってきた頃には、セドの心は既に完全に閉ざされていた。


その心の内には、ただ人々への復讐の意思だけが秘められていたのだった。


※2017/01/15

表現の一部と誤字脱字の修正をしました。

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