第六話 エンデミック・ブレイク
三上は施設内に運び込まれて直ぐに様々な検査をさせられた。
休む間もなく彼は周囲から隔離された部屋に連れられ、パイプ製で安い作りの椅子に座らされ手錠で繋がれた。
そして今、三上は防護マスクをした人物と対峙している。
お互いに何も話さない。
顔は隠れていて見えない。シルエットから察するに、どうやらこの人物は女性らしかった。
女はただ黙って三上の事を視ていた。
長い沈黙が続く。
(……なんだよ! なんで何も言わないんだこいつ! 通じないからか? 日本語わからないからか!? だったらここに呼ぶなよ! 気まずい!)
三上は意を決する。
「は、ハロー……」
「……」
「へ、ヘイ! スピーク!! スピークトゥミィ!! ファッック!! ユーアーファック!!」
「……」
三上は英語検定四級の実力者だ。
「お、おおおおい!! 何か話せよ!!」
すると対面の女がようやく話し始めた。
何かを質問されているようだ。三上のヒアリング能力でそれを理解することは出来なかった。
英検四級、三上の英語が再び炸裂する。
「オーケー。アイキャントアンダースタンド、ワッチューセイイング! イエア! ヘルプ!! アイニージュヘェルプ!!」
すると女は少し笑い声を上げた後、三上に話しかけた。
「通訳、呼びましょうか?」