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パンデミック・マン  作者: ですの
パンデミック編
54/65

第五十四話 パンデミック・ウォー6

市街地に次々とベイズアザディの兵士達が到達する。

彼らはかつての合衆国大統領の名を持つ巨大な橋を渡り切ると、直ぐに入り口周辺の安全を確保する。

そしてツーマンセルを組んで次々と市街地中心部に向けて進んでいった。


橋での戦闘の経験から集団での移動は危険と判断したためだ。


またマンハッタンは島の中の殆どの位置にビル群が立ち並んでいるため、視界が通るポイントが限定される。

市街地戦においてはゲリラ戦法を取られる事が多いという侵略者としての経験から、兵士達は瞬時に分散していった。


その頃、マンハッタンのコミューンの人々はハドソン川とは反対に位置するイースト川方面への避難を次々と完了させていた。


かつては800万人もの人々が行き交っていたこの島も今や住人は1万人程度しか残っていなかった。

しかし1万人の人々が一斉に避難するのは難しい。


最初にベイズアザディの集団が発見された時から既に彼らは避難を開始していたのだ。

マンハッタンのコミューンが元来排他的だった事で、住人達はその時点で戦闘になる事が分かっていた。


即ち、今マンハッタンの中心部には戦闘員しか残っていない。

純粋な戦場になる準備は整っていた。


兵士達の内の何組かは間もなくブロードウェイへ辿り着く。

ブロードウェイはマンハッタンの南北を繋ぐような大きな通りである。


「ここを渡れば東側のエリアだが、しばらくはブロードウェイをダウンタウン方面に向かって進むぞ」


「意外とここまで会敵しないで進んで来れたな」


「マンハッタンは計画都市だが迷路みたいなもんだからな。俺は昔コロンビア大学の学生でこの付近に住んでて……」


自分語りを始めようとしたこの兵士は突如背後から襲われた。

三上は素早くその兵士のマスクを外すと、その仲間が銃を構えるのを見て直ぐに兵士を盾代わりにした。


マスクを外され三上に拘束された兵士は間もなくもがき始める。

そちらに一瞬気を取られた仲間の兵士に向かって一気に間合いを詰める三上。


慌ててライフルを構えるが、それよりも早く三上はマスクを引き剥がした。

叫び声を上げながら二人の男が地面でもがいているのを横目に、三上は無線で連絡を取る。


「ジェシー、あいつらシュガーヒルからもうコロンビア大学跡地まで来てやがる。何組か仕留めた。やっぱり分散して移動してるな」


それを聞いてジェシーは驚いていた。


「向こうさんの足の速さにも驚いたけどよ、お前にも驚きだよ! 一人で良くやれるな……」


「そりゃマスクさえ取っちまえば、後は俺の近くに居る人間は一瞬で勝手に死ぬからな。その為の体術や技術を磨くのに十分な時間とシチュエーションもあったし」


「……まあその話はこれが終わったら後で詳しく聞かせてもらうぜ。今はベイズなんちゃら退治に集中だ。もう少しばかり偵察頼んだぜ」


無線を切ると三上は再び、身を隠しつつ市街地西側を移動する。


戦闘開始直前、三上はマンハッタンの他のコミューンのリーダーとジェシー、そこにマホーンや山田といった元軍人達も加えてある作戦について話し合った。

その作戦の為に三上は自分が何者なのかを簡単に説明する必要があった。


ジェシーはそれを聞いて、表面的には気にしていないように振る舞っていた。

しかし三上は他の人間が自分に対してどんな感情を抱くのかを過去に身をもって体験している。

その為ジェシーが無理に気にしていない素振りを見せている事にも気づいていた。


「ブロードウェイを絶対に超えさせるなよ。西側になるべく固まらせるんだ」


ジェシーが仲間達に無線で何度も念を押していた。


そしてこの作戦の為に、マンハッタンのコミューンの人々が温存していた秘密兵器も持ち出していた。

偶然にもそれを扱える人間がこの数日で橋を越えてこちらに渡ってきてくれた為である。


「しかしまだ稼働状態にある物が残ってるとは思わなかったな」


「倉庫の肥やしになってたらしいがね。保存状態は良好、燃料も問題無し、センサー類も生きている」


マルティネスとマホーンが言葉を交わしていると、そこに山田が急ぎ足で現れた。


「遅くなって済まない! 向こうさんの足止めに意外と手間が掛かっちまって……。しかしこいつはまた面白いもんが残ってたな」


「山田は車長経験がある極東の陸軍出身の男だ。いや、自衛隊と言った方が良いか。山田、こちらのマルティネス君はスペイン外人部隊出身の元陸戦兵だそうだ。マンハッタンに来てまだ数日だが士気は高い」


「あなたが山田さんか、宜しく頼む。私は部隊に居た頃に砲手を務めていた。その時に120㎜滑腔砲を搭載した車両に乗っていたからこいつも上手く扱えるはずだ」


マルティネスは挨拶を済ませると直ぐに準備に戻った。


「私は操縦を行う。無線通信と装填管理はゼンダーというマルティネス君のご友人が担当してくれるそうだ。情報リンクシステム周辺はどの道使えんし、いけるだろう」


マホーンが作業しながら山田へ簡単な説明を行う。


「了解だ、しかしこいつなら足止め以上の事も出来るだろうに」


「こいつは燃費も悪いし残された砲弾も少ない、仕方ないさ。APFSDSが30発もあれば十分だ。準備も完了した事だし、そろそろ行くぞ」


「M1エイブラムス……。合衆国の主力戦車とはな」


山田も戦車に乗り込む。

ガスタービンエンジン独特の起動音が鳴り響き、戦車は市街地に向けて移動を開始した。



※2017/01/15

表現の一部と誤字脱字の修正をしました。

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