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パンデミック・マン  作者: ですの
パンデミック編
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第四十六話 パンデミック・ネゴシエーター

ヤンが男のもとに向かう。

マルティネスとゼンダーが完全にノックアウトされ地面に伸びていた。


二人を仕留めた男が信じられないほど快活に挨拶をしてきた。


「やぁ! 待ちわびたわ。あんなに遠くから様子見なんて、慎重なんだな」


「要件は何だ、言っておくが俺たちは物々交換できるようなもんは持ってないぞ」


男は笑い声をあげた後、突如真顔になる。

感情の起伏が激しいのか、ヤンにはそれが不気味に思えると同時にどこか可笑しく感じていた。


「バレてないとでも思ってるのか。ここのコミューンにちょくちょく遊びに来てる野党共の偵察隊だろ、お前ら」


「な、なんの話だ……」


そう言いながらもヤンはゆっくりと忍ばせていた拳銃に手を伸ばす。


「やめておいたほうがいいぞ。なぁ、もし今この世界をこんなにしちまったウィルスに対抗できるもんがあるって言ったら、どうするよ」


「は……?」


「ウィルス殺し。それがあればもう少なくともウィルスに悩まされる事はなくなる。例外はあるがな」


ヤンをはじめとする野党の多くはその存在を知っていた。

だが、それを手に入れる方法は誰も知らなかった。


「だからなんだってんだ」


「取引しないか、おとなしく俺に従ってくれればそれを投与してやるよ」


「お、お前がそれを持ってるって証拠は」


男がまた笑い声をあげた。


「ほら、今まさに俺はマスクを取ってるだろ?」


ヤンは当然そんな事にも気づいていた。

なんとか情報を引き出してウィルス殺しを手にする為に、この男との交渉を続けるべきだとヤンは考えていた。

もちろん奪い取る為の算段も含めてだが。


「あー、交渉成立だな、めんどくせぇ成立でいいよな」


「えっ」


ヤンが口を開く前に男がそう言うと、男の拳が一瞬でヤンの下顎を捉えた。

掌底で殴られたヤンもまた脳震盪を起こして気絶した。


何事もなかったかのように男はマスクを装着し直す。

三人が地面にだらしなく伸びているのを見ながら男は自分で持っていた無線機で連絡を取った。


すると物陰から若者達が次々と現れた。


「アンタすげぇな、本当に一人で……」


若い男たちの一人、コミューンのリーダーであるジェシーがそう言いながら恐る恐る地面に伸びているヤンを鉄パイプで小突いていた。


「どこの野党もだいたい襲撃前には偵察を送ってくるもんなんだ。ここならルートもわかりやすい。ビル街まで目立たず大量に人を送り込むなら、ここみたいな道幅がでかくて、街まで直通で、その上廃車で埋まった道路は最適だろ。夜になったらわかりゃしない」


防護服の男、三上はそう言いながらその場に腰を下ろす。


「そ、そうなのか」


「でもまさか張り込んで三日目に偵察隊が釣れるとは思わなかったな。結構な頻度で襲撃されてるのか?」


「まぁ、週に一回くらいは……」


「週イチって……。今まで良く持ちこたえてたな……」


若者達が地面に伸びている三人を近場の街路樹に縛り付けた。


「さて、投与するぞ。その目でこのウィルス殺しの効果を見ろ!」


三上はそう言うと三人のマスクを素早く外して、ウィルス殺しを伸びている三人の口に流し込んだ。


しかしこの時、三上もコミューンの人間達もある事に気づいていなかった。

即ち、マンハッタンを狙う存在は野党だけでは無かった。

※2017/01/15

表現の一部と誤字脱字の修正をしました。

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