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パンデミック・マン  作者: ですの
パンデミック編
45/65

第四十五話 ワールドステイト・ファイト

ニューヨーク市街。

時刻は午後6時を回っていた。

タイムズスクエアはかつての活気づいた姿の片鱗も見せない。


何ブロックにも渡って列を成す廃車の群れの間を縫うように、ボロボロの防護服を纏った男がゆっくりとその歩みを進めていた。


その姿を遠くから伺う三人の男が居た。

マンハッタンの人々から野盗と呼ばれる集団は、常にマンハッタン市街のコミューンへの襲撃を画策している。

この三人はその集団の中で主に偵察を任されていた。


ところが、街の様子を伺っていた彼ら偵察隊の前には奇怪でボロボロの防護服に身を纏った男が一人現れるのみだった。


「おかしいな、あの男。奴らのコミューンへのルートを外れたこんな所にいるなんて」


偵察隊の一人が怪訝そうな顔で仲間の二人に声をかける。


「旅人か何かじゃないのか。いや、それにしては荷物が少ないか」


その男の隣で双眼鏡を覗いていた大柄の中年男性が答える。


「他に人影は無い。なんにせよ、あれは邪魔だな。強硬手段と行こうじゃないか」


偵察隊のリーダーと思わしき男がそう言うと、狙撃用のライフルを取り出した。


「おいヤン、それ使うつもりかよ」


「その時が来たらな。ゼンダーとお前であの男に話しかけてこい。そしてタイミングを見てうまく捕えてこい。お前らがヤバそうになった時にはコイツをお見舞いしてやるよ」


言われるがまま、二人の男が防護服の男の元へ向かっていった。

車列の間を縫いながら二人が三上へ近づいていく。それをヤンはライフルのスコープ越しにじっと見ていた。


やがて二人は防護服の男の前に姿を現した。


ゼンダーがどこか馴れ馴れしく防護服の男に話しかけた。


「こんにちは、いやもうこんばんは、か。こんなところで何をしてるんだよ兄貴、危ないぜ? もう日も暮れる」


「俺はマルティネス、こいつはゼンダーだ。失礼したな。ここら辺りで人を見かける事は中々珍しくてね。何をしているんだ?」


二人の問いかけに防護服の男は何も答えない。

警戒する様子も見せず、ただぼーっと突っ立っていた。


「なぁ、怪しむのはわかるぜ? でもお前も随分怪しい風貌じゃねえか。お互い様だ。なぁ、もしかして市街のコミューンの人間か? 俺たち実はハドソン川を超えてここまで来たんだよ。コミューンの噂を聞いてな。良ければ案内してくれねえかな」


すると防護服の男が唐突に身につけていたマスクを取り外し始めた。


マルティネスは慌てて止めに入る。


「お、おい何やってる! 外でマスクを外したら感染するぞ! ここはウィルスの濃度が高いんだ」


しかし男は防護マスクを外す事をやめなかった。

男はマスクを取り外して、二人に素顔を見せるとようやく返事をした。


「悪いな。でもお互い様だ」


次の瞬間、その男は強烈な掌底をゼンダーにお見舞いした。

不意を突かれたゼンダーはノーガードでそれを下顎に受ける。

ゼンダーは脳震盪を起こしてそのまま床に崩れ落ちた。


マルティネスの目がそちらに移ったその一瞬で、防護服の男は今度はマルティネスに掴みかかる。


「悪く思うな」


そう言って男はマルティネスの頭を抑え鋭く膝蹴りをお見舞いした。

マルティネスは一瞬で気絶してしまう。


その様子を遠目に見ていたヤンはライフルのトリガーに指をかける。

しかし防護服の男はマルティネスを盾にするように抱え、その場から動こうとしなかった。

まるでこちらの位置を知られているようだとヤンは不気味にもそう感じた。


ふいにヤンの持つ無線から声が聞こえてきた。

どうやら防護服の男がマルティネスの無線を使ってこちらに連絡をしてきたようだ。


「武器を捨ててこっちへ来い。そうすればお前のお友達二人は助かるぞ」


ヤンはどう言葉を返すか迷った。

このままアジトまで引き返し、仲間を連れて来る事も考えた。

しかし、あの防護服の男がもしコミューンの関係者なら、そんな事をしている間に防御を固められるだろうと思い直して、無線を手に取った。


「い、いきなりなんてことしやがる! 俺達は旅してた一般人だ、なんで乱暴なんか」


「旅人がこんな装備するかよ。荷物が少なすぎる。それに遠くからライフルで狙ってくるなんて随分警戒心が強い」


「……わかった、そちらに向かうから、仲間には手を出さないでくれ」


ヤンはそう言うと、腰に拳銃を隠し入れ、防護服の男の元に向かった。



※2017/01/15

表現の一部と誤字脱字の修正をしました。

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