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パンデミック・マン  作者: ですの
パンデミック編
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第四十一話 ワールドステイト・ラギング

「ここがLA! ついにたどり着いたんだ」


掠れた道路標識に僅かに示されたLAの文字を見てセドは浮足立っていた。


「二人共、私の故郷へようこそ。セド、よく目を凝らしてごらん。向こうの方に大きな建物が沢山見えるだろう。あそこが都市部、そのさらに後ろにうっすらと見えている壁のようなところが山岳地帯だ」


山田がスコープを覗き込み、様子を伺う。

 

「ビル群は一部崩落の跡もあるが殆ど残っているな。人影は見当たらない。もう少し近づいてセンサーを展開しよう。都市部となるとウィルスの危険度は格段に跳ね上がる」


マホーンと山田は防護服を身にまとい都市部に入る為の準備を進める。

防護服にはSWARPAの文字が記されていた。


「セド、これ持ってろ。無線機だ。バッテリー交換しておいた。使い方は覚えてるな? 悪いがここで荷物を見張っていてくれ」


「もちろんさ山田さん。任せて! これを使わないで済む事を願うよ」


マホーンが装備を確認しながら、セドに声をかけた。


「何かあったらすぐに知らせるんだセド。何もなければ、我々は3時間で戻る。それ以上待っても戻ってこなかったら、ここから降りて下に隠れていろ。そこで15分毎に無線で連絡を入れるんだ。いいね?」


セドは頷くと無線機を腰に差し込んだ。


遠く小さくなっていく二人の背中をセドはじっと見つめていた。


マホーンと山田は都市部へと足を踏み入れる。

人影は見当たらない。


「マホーン、やはり生存者達は山岳地帯にいるんだろう」


「あぁ。だが妙だ。ここ一帯でウィルスの反応がまるで無い。ここは完全にクリーンだ。マスクを外しても大丈夫だぞ」


「そんな馬鹿なことあるか。都市部だぞ? お前の計器がイカれちまったんじゃ……」


そう言って山田は自分の持っているセンサーを確認する。

しかし彼の持つセンサーもウィルス反応を示すことは無かった。


「どうなってやがる……」


その時、前方の建物の中で何かが動いた。

山田とマホーンはそれを見逃さず、素早く戦闘態勢に入る。


二人が銃口をそちらに向けつつゆっくりと建物へと近づいていく。


5階建ての、この街の中では少し小さめに見えるビルの入り口で二人は一度目を合わせた後、扉を勢い良く蹴り破り中に侵入した。


薄暗いビルの中を二人は足音を潜めつつも素早く移動し安全の確保に向かう。


エントランスホール内に人影は見当たらなかった。


階段から足音が聞こえてくる。

マホーンは山田にハンドサインを送り、二人は音の鳴った上階に向かう。


一段一段、慎重に脚を進めながら上階へと向かう。


間もなく二階にたどり着くと、そこは複数の扉のある廊下になっていた。


「どうやらここはアパートか何かだったみたいだな」


山田とマホーンが一番手前にあった扉に手をかける。

ゆっくりとその扉を滑らすように開く。


部屋の中に入った瞬間、二人の後頭部に銃口が当てられた。

二人は振り向く間もなく声をかけられる。


「ゆっくり、そのままだ。武器を捨てろ。そんで手を上に挙げてな」


二人は構えていた小銃を床に置くと、それを素早く回収されてしまう。

そのまま手を頭で組むと。

すると山田とマホーンは床に組み伏せられた。


背後で話し声が聞こえる。

相手は複数いるらしい。


「落ち着いてくれ。まずは話を聞いてほしい」


マホーンが自分達を押さえている何者かに話しかける。

だが、それには誰も答えない。


二人は腕を後ろ手に縛られると起ち上がらせられた。

そしてようやく相手を確認する事ができた。


入り口に付近に四人、そして自分達に話しかけたであろう男が二人のすぐ目の前に居た。


「困ったもんだ。勝手に俺達のコミューンに侵入されちゃたまらねえって」


マホーンが男に話しかけた。


「わ、私達は旅人です。LAには今到着したばかりだ。どうか話を聞いてほしい」


「そいつぁご苦労さん。しかし旅人ねぇ。お二人さんが身に着けてる防護服にこの銃は、どう見ても民間人のそれとは違うがなぁ」


「こっちの男も私も元軍人さ。しかしそんな事はこの世界では無意味だ。私は旅をしてきたが、ここが故郷でもある。ようやく辿り着いたんだ」


男は黙ってマホーンをまじまじと眺める。

そして山田に目を移す。


「そっちのお前、英語は話せるのか」


「えっ? あぁ、話せる」


「出身はどこだ」


「俺は日本人だ。あの核攻撃を生き残った」


男はじっと山田を見据える。


そして山田とマホーンの二人を連れていくように入り口付近にいた男達に伝えて、上階へと向かっていった。


5階に辿り着くと、そこは他の階とは違い、たった一つ扉があるだけだった。

室内に入ると、そこには大量の薬品と機材が設置されていた。


「お前らが何者かは特段興味ねえが、まぁアイツとの約束事ではあるから仕方ねえ。まずはお前ら二人共、これを摂取してもらう」


「こ、これは一体なんだ……?」


「ウィルス殺しさ。こいつぁすげえぞ。例のウィルスを完全に喰っちまう化物だ」


マホーンはその言葉に驚きを隠せなかった。


「そんなものが存在するのか……? 一体誰がこれを」


男が注射器の準備をしながら答えた。


「日本人だったぜ。ツグモリとか言ったかな。不思議な野郎だった。ここに来たのはもう一年は前の話だが」


ツグモリ、その名前を聞いて二人は思わず目を合わせた。


「三上継守、まだどこかで生きてるのか……?」

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