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パンデミック・マン  作者: ですの
エンデミック編
3/65

第三話 エンデミック・ラン

練馬駐屯地内にそびえ立つ研究棟。


そこは国内で大規模なウィルス被害が発生した際に、対策本部として用いられる事を想定して建設された。

日本では数少ないバイオセーフティレベル3に対応できる施設の一つである。


その一室に三上は連れ込まれていた。


「はい。じゃあ次は採りますね、三上さんの血液」


高見博士が黙々と検査を進める。

この検査室には博士と三上、そして護衛なのか監視なのか判断はつかないが、隊員が3名居る。


三上は自身が想像していたよりも普通の検査内容に拍子抜けしていた。

身体測定、血液検査、次はレントゲン撮影だそうだ。


「あの、博士」


「三上さん、顎をちゃんと台に合わせて。あと胸もくっつけて。初めてじゃないでしょ、レントゲン」


「いや、あの、これ健康診断でもしてるんですか? それなら会社で実施しているもので間に合ってるんで……。そこにいる自衛隊のやつらも、なんかボーッと突っ立ってるだけじゃないすか。自衛隊の研究棟だからって何をするでもなく……。こんな簡単な検査だけなら後で自分で受けるんで。家に帰してもらっていいですかね」


三上は入社以来一度も会社が実施している健康診断に行った事は無い。

だが今は兎に角帰りたい一心で何か理由をつけてこの場を去りたがっていた。


「まずは基本的な君の今の身体状況を知りたいんだよ、三上さん。焦らない焦らない。検査はゆっくり確実にやりたいんだ」


「朝になっちまうよ博士……。うちの会社、土曜日にも出勤する事なんてザラなんで! そ、それに今日なんて俺以外の社員ほぼ全員早退してましたし。残りも残業しないで帰ったから……。お、俺がみんなの分の業務を手伝わなきゃ……。俺が……」


「三上さん、その点は安心だ。都内が封鎖された今、生きてる人には自宅待機命令が出てるから会社は休業だろう。君の会社も例外じゃないと思うな。だから」


博士が言葉を続けようとした時、強い地響きと同時に強烈な爆発音が耳を劈いた。


思わず床に伏せる三上。

室内にいた3名の隊員達が慌ただしく状況報告の無線をやり取りし始めた。


程無く二度目の爆発音が響き、研究棟が大きく揺れた。


「わああああああ!! 部長だ!! 部長が来たんだ!! 助けてくれええええ!!」


「三上さん落ち着いて、立ち上がろう。まずは出ないと、この部屋を」


高見博士が三上を無理やり起こす。


先程までいた3名の隊員は既にこの部屋を去っていた。

高見博士が無線を取り出す。


「山田君、山田陸曹、状況報告を。僕と三上さんは今研究棟三階の第三検査室に居ます」


暫しのノイズの後、銃撃音と炸裂音に混じりながら応答が入った。


「高見博士! 今すぐ屋上に向かってください! 武装集団が駐屯地内に侵入! 現在防戦中繰り返す! 現在防戦中!! 下は危険です!!」


高見博士は山田陸曹長の言葉を聞くとすぐさま三上を引っ張り屋上へ向かい始めた。

脚の震えが止まらず半ば引きずられる様に連れられる三上。状況はまだ呑み込めていない。


「高見博士すげえパワー!! このままどこまで俺の事引きずっていけます?」


「頼みがあるよ三上さん。混乱するのもわかるんだけど、まず自分の脚で立って欲しいな。僕運動そこまで得意じゃないから……」


「……すみません、一度に色んな事が起きすぎてて、正直これドッキリなんじゃねえかって思ってるんですけど」


「違うと思うな、三上さん。さあとりあえず今は急いで屋上に行こう、死にたくないならね」


三上と高見博士は急ぎ屋上を目指し、駆け出した。


※2017/01/14

表現の一部と誤字脱字の修正をしました。

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