第二十四話 ドーン・オブ・ザ・パンデミック
ドイツ、フランクフルト空港。
ほんの数分前に緊急連絡を入れてきた航空機が滑走路に停止したのを確認すると、待機していた部隊が航空機に向かっていった。
すると搭乗口が開かれ、中からティーシャツを着た男が防護服を身に纏った人物を担ぎながら出てきた。
「誰か助けてくれ! 彼は脚を撃たれているんだ!」
男は流暢なドイツ語でそう叫んだ。
救助隊が慌てて駆け寄る。
「一体何があったんだ!?」
「テロリストが搭乗者に紛れ込んでいた! 機内で例のウィルスを使ったらしく、搭乗者が次々に倒れていった。僕は慌てて彼に防護服を着せたんだが、それに気づいたテロリストが彼を撃ったんだ!」
その言葉を聞いて救助隊が慌てて機体から離れるよう他の部隊に指示した。
「貴方は防護服を着ないで平気なんですか?」
「僕はユウキ・タカミだ、ロベルトエンデ研究所のゼルゲ教授を呼んでくれ、ここに来ているはずだ。彼から僕の事を教えてもらうと良い」
防護服を身に着け、救助隊が再度高見博士と三上の元に駆け寄ってくる。
三上は気を失っていた。
そして高見博士も間もなく保護された。
「彼と僕をロベルトエンデ研究所まで連れて行ってくれ。ゼルゲ教授に会わなくてはならないんだ」
高見博士は救助隊に連れられ機を離れる。
その時、機内を捜索していた隊員が大声を上げた。
「生存者を確認! 誰か手伝ってくれ! 生存者がいる!」
高見博士が思わず立ち止まり振り返る。
担架が機内に運び込まれていくのが見えた。
「博士、ゼルゲ教授がお待ちです。さあ早くこちらへ」
隊員に急かされ高見博士は車に乗り込む。
車内の後部座席には年配の男性が落ち着いた様子で座っていた。
「お久しぶりです、ゼルゲ教授」
「高見君、しばらく見ない間に随分大人になったものだ。まさか君から連絡をしてくるとは思いもしなかったが。要件は何かな? まさか、私に会う為だけに遥々ドイツまで来た訳じゃないんだろう」
「博士の研究所にお連れしたい人物がいます。僕と一緒に救助された防護服の男です。彼を極秘裏に博士の研究所まで運んで頂きたい。彼は日本国内で起きたバイオハザードに非常に深く関わりがあるんです。博士の研究室なら彼を詳しく解析することが出来るはずです」
「なるほど。それは良いが、先程救助された二名は連れてこなくても良いのかね?」
高見博士は何も答えなかった。
暫くすると、研究所に向けて車が動き出した。
※2017/01/15
表現の一部と誤字脱字の修正をしました。