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パンデミック・マン  作者: ですの
エピデミック編
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第二十一話 グレイトフルデイズ

高見裕樹の特殊な体質が発覚したのは彼がまだ小学生の頃だった。

その当時大流行していた新型インフルエンザに感染した疑いがあり、高見は近くの病院で検査をした。


検査結果はインフルエンザの痕跡こそあるものの体調に異常はなく、ウィルスは完全に彼の体内で死滅していた。


それが、特性抗体というものが世界に認知されるきっかけとなる"事件"だった。


この新型インフルエンザは当時ワクチンの予防接種無しには防げないとされていたものであり、尚且つ感染後の致死率も非常に高く、命を落とさなくとも重病に陥るといった凶悪な変異を遂げたウィルスだった。

その為、インフルエンザウィルスの変異種としては異例のバイオセーフティレベル3の施設が対応することになった。


それを世界で初めて体内で殺しきった少年が高見だった。


たちまち彼の噂は識者の間に広まっていく。

そして日本の医学界どころか世界中で、彼のその特殊な体質は注目を浴びていった。


一方でそれが大々的にマスコミに報じられることは無かった。

言わば彼の体質については秘匿されていた。


それは高見が受ける事となった様々な検査の為でもあった。

検査、と言ってもそれは名目上だけのものである。


半ば人体実験の様相を呈していたその検査を、世界中の医療機関から実施される毎日。

検査は何年も継続して行われた。


彼の身体に投与されるウィルスは徐々にその危険度を増していった。


遂にはバイオセーフティレベル4で取り扱うウィルス、即ちエボラウィルスや黄熱病、そして天然痘といった通常ならばまず投与されれば死に至ることが予想されるレベルのウィルスによる抗体実験が行われるようになった。


やがて高見に対する実験は危険なウィルスにどこまで耐えられるのか、という視点から特性抗体は彼以外の人間に応用する事が可能なのか、というものに変わっていった。

しかし、間もなくそれが不可能である事が証明された。


特性抗体の特殊さを際立たせていたのは、彼の身体から抗体を取り出し、実験器具での観測を行おうとするとその効果が全く発揮されなくなるという点であった。


つまり、高見自身の身体で直接効果を測定するしかないのだ。


こうして高見は青春時代の大部分を学校ではなく病院で過ごす事になった。


そんな日々を送ることになった高見はやがて研究者になる事を志すようになる。

特性抗体に関して自分自身で詳しく解明したいと願うようになっていた。


それが、この凄惨な日々から抜け出す唯一の方法だと考えていた。


そしてその先にもう一つ、高見には夢があった。


それは、自分を苦しめ続けた人々に対して報いを受けさせることだった。


※2017/01/15

表現の一部と誤字脱字の修正をしました。

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