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パンデミック・マン  作者: ですの
エピデミック編
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第十七話 エピデミック・コンディション

三上達が空港付近に辿り着いたのはすっかり夜も更けてきた頃だった。


通りの先に簡単な作りのバリケードと検問所が見えた。

周辺には自衛隊と思わしき人々の姿も見えた。三上の読み通りである。


三上は自衛隊の姿を確認すると嬉々としてアクセルを踏み込もうとする。

大町が慌てて止めに入ってきた。


「三上さん待ってください! 車停めてください!!」


「なんでだよ結花ちゃん! あそこの検問所の人に事情説明すればわかってもらえるって!」


「まずは私が話してきますから降ろしてください! 三上さんが直接いきなり行っちゃったら万一の事がありますから」


三上は仕方なくその場で車を停めた。


大町が車を降り、小走りで検問所の方へ向かっていく。

検問所の隊員達は三上の車に気付いていたのか、車の方に向けてサーチライトを照射していた。


大町が検問所に辿り着いた。


「あの、ここって今自衛隊が管理してるんですか?」


大町は検問所の前に立つ自衛官に話しかける。

他の隊員は怪訝そうな目で大町の姿を見ていた。


「ここは現在基本的に立ち入りを制限しています。しかし、貴女は何者でしょうか。その防護服は合衆国の部隊が身に着けているタイプの物のようですが……」


「私はSWARPAの人間です。緊急事態が発生したためにこちらにお伺いしました」


大町が事情を話す。

もちろん一部は伏せていた。


話を聞き終えた隊員は直ぐに無線を取り出し、誰かに連絡を取っていた。

周りでその会話を聞いていた隊員達は慌ただしく自分達の身に着けている防護服の点検を始める。


暫くして、連絡を取っていた兵士が無線機を置いて大町に話しかけた。


「防護服を一着用意します。それを同乗者の方に着用させて下さい。着用が完了しましたらこちらに連れてきて下さい。車は当然ながらウィルスが蔓延しているものであると判断しますので、一度私達が洗浄を行います。その上で回収させて頂きます。危険物として処理しますので、破棄される場合もありますがご了承下さい」


三上はサーチライトの光に目を眩ませつつ、遠巻きに大町の様子を見ていた。


少しして、大町と一人の自衛隊員が何かを持ってこちらに小走りで向かってくるのが見えた。


「お待たせしました三上さん。条件付きですが、中に入れさせて貰えそうです」


「マジかよ!! 来た甲斐があった、助かった……。それで条件って?」


「こちらの隊員さんが持ってきてくれた防護服を着用する事が一つ。そしてもう一つはこの車を回収する事です」


思いの外簡単な条件に三上は驚いた。

そして安心感と共に一気に肩の力が抜け、座席にもたれ掛かった。


「良かった……。そんな事でいいならもちろんオーケーだよ」


「全然OKじゃないですよ……。車、破棄されちゃうかもしれないんですよ? 私の車、まだまだローン残ってるのに。三上さんのせいですよ、残りのローン払え、です……」


「ご、ごめん結花ちゃん。そこはしっかりなんとか償うから……」


「冗談ですよ三上さん、つい悪戯心で。さあちゃちゃっとこれ着て空港に入りましょう」


防護服を着用する三上。

しかしその防護服のデザインに違和感を覚える。


「あれ、隊員さん。これ普通の防護服に比べてゴツくないすか? いろんな機械が取り付けられてますけど……」


「こちらの防護服は高見博士が貴方に用意したものです。さあお二方、ついて来て下さい。博士がお待ちです」


高見博士の名前が出てきた事に驚きつつ、三上は防護服を着用しエヴァンから奪った装備を持って車から降りた。


隊員に連れられ徒歩で大町と三上は空港の敷地に入る。


「三上さん、高見博士って本当に何者なんですか? こんなところにも居るなんて」


「俺にもわかんないけど凄い人っぽいね。こんな防護服まで用意してあるなんて。まるで俺達がここに来るの分かってたみたいだな」


二人は成田空港の正面入り口から中に通された。


三上は中の様子に驚いた。

空港内は仮設テントや多くの機器が持ち込まれ、さながら軍事基地の様相を呈していた。

エントランスは様々な国籍の軍隊で溢れかえっていた。各々が慌ただしく作業を進めている。


三上の顔がこわばる。

そこには合衆国の兵士と思しき人々も多数確認できた為だ。


大町が小声で三上に話しかけた。


「大丈夫ですよ三上さん。SWARPAでの出来事はまだ通達されてないはずです。私がさっきバリケードで名乗った時も、特に警戒される事はありませんでしたから」


すると前方から白衣を着た男が現れた。

周りの人々が一様に防護服を着ている中、相変わらずその男は軽装だった。


「やあ三上さん。まさか君の方から現れるとは思わなかったよ。何かあるみたいだね、事情が。色々と話しておきたいこともあるから、僕の研究室へ直ぐに来てほしい」


「高見博士! 俺からも聞きたいことがあるのでよろしくお願いします」


二人は空港の奥へ通された。


※2017/01/15

表現の一部と誤字脱字の修正をしました。

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