アンティーク
いつか みんな 古くなる
柱にかかった時計も お気に入りの本も
革の煙草入れも もらったぬいぐるみも
そして この想いも
いつかは 古い感情になる
それは 消えてしまうわけでなく
嘘になるわけではなく
間違いになるわけでもなく
まるで 現実が幻想に変わるように
ただ 古くなる 古いものになる
「古くなる」って
すごいことのような気がする
古いものは とても やさしい
過ぎし日々を 肯定もせず 否定も せず
ただ あるがままを にこにこと ながめています
長い時を 風雪にたえてきたものは 皆 やさしく なるのですね
「思い出」や 「過去」という 一言で片付けるには
あまりにも 大きく重たく あるいは輝かしく
きっと誰もが心の片隅に置く
そういった ものたち
あなたがいま もてあます あれもこれも
いつかはきっと すてきなアンティークに
答えなくていいし
忘れなくていいし
学ばなくていいし
乗り越えなくていい
ただ ほっておけばいい
そうすれば
それはいつか 古いものになる
やさしい ものになるのです