最終章5《作戦会議は念入りに》
いよいよ始まる大勝負。
お馴染みの作戦会議も、これが最後となります。
国盗りのため、千景が立てた作戦とは……。
ハピネス地下基地作戦司令室。
そこに幹部一同と、ハピーの代表が集まっていた。
「全員集まったか。何のための招集かは分かっているな?」
紫音の言葉に、頷く一同。
「では始めるとしましょうか。……最後の作戦会議を」
最後の作戦会議は、静かに始まった。
「まず、私達は先日の作戦で、切り札を入手しています」
「闇の競売の証拠だな」
「ええ。公表すれば、日本という国が揺るぎます」
「じゃあどうして公表しないんですか?」
奈美が疑問を投げかける。
「勿論公表するけどぉ、それはタイミングがとっても大事なのよぉ」
「公表して混乱したところを、攻め込むのかと思ってました」
「戦力に余裕があれば、それもありです。ただ、私達には難しいでしょう」
ハピネスは小規模な組織。
真っ向勝負は可能な限り避けるべき。
それは千景が活動当初から言い続けていた事だった。
「じゃあ、どうするんですか?」
「私達は最後まで私達らしく、せこい手段で戦うとしましょう」
千景は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「では、作戦の詳細を説明します」
作戦司令室の空気が引き締まる。
「まずハピネスの戦力を二つに分けます」
「これはぁ、二つの作戦を同時進行する必要がある為よぉ」
「便宜上、AチームとBチームと呼称します。……チーム分けはこの通りです」
千景はディスプレイに、それぞれのチームのメンバーを表示する。
それを見て、全員の表情が驚きに変わる。
Aチームは、ローズ、柚子、蒼井とハピー達。
Bチームは、千景、奈美、ハルとハピー達。そして……紫音の名があった。
「ち、千景さん。これって……」
「ええ。今回の作戦には、紫音も参加して貰います」
「「えぇぇぇぇ」」
驚きの声をあげる一同。
「まあ、そう言うことだ。よろしく頼むぞ♪」
ニッコリ笑顔の紫音に、ハル達は引きつった笑みを浮かべた。
「それでは、それぞれのチームの作戦内容について説明します。まずAチーム」
「はぁ~い、私達ねぇ」
「あなた達には、テレビ局の占拠を任せます」
「テレビ局……。幾つかありますが」
「地域問わず、日本中に放送されている、ここです」
千景がディスプレイに映し出したのは、高校野球や相撲でお馴染みのテレビ局だった。
「手段は問いません。指定した時間、電波の支配権を握っていてください」
「なるほどな。お前が何を考えているか、大体読めてきたぞ」
蒼井が得心行ったとばかりに頷く。
「私達とハピー三十人でかぁ。これは大仕事ねぇ」
「チームリーダは剛彦、貴方に任せます。……厳しいと作戦とは思いますが」
「ふふ、まあ何とかしてみせるわよぉ」
ローズは任せなさい、と胸をドンと叩いて見せた。
「残るBチームですが、この施設の占拠を行います」
ディスプレイに表示されたのは、日本政府の中心施設だった。
「…………ねえハル。ここ何処?」
「国会議事堂だよっ!! 日本の政治の心臓部にして要の場所だ!」
「ふ~ん」
興味なさそうな返事をする奈美。
一度小学校からやり直した方が良いと、本気で思う。
「私達は国会審議中に、施設を占拠。議会を掌握します」
「でもそれだと確実に警察や正義の味方に包囲されます。脱出はどうするんですか?」
「作戦が成功すれば、問題ありません」
「……失敗したら終わりって事ですね」
「オール・オア・ナッシング。……シンプルで良いでしょ」
千景は既に覚悟を決めているようだ。
「心配しなくても、勝算は十分にあります。私を、信じられますか?」
「……初めから疑ってませんよ」
「ここまで来れたのも、殆ど千景さんのお陰ですし」
「何も問題はない。千景よ、存分にやるがいい」
千景の問いかけに、ハル達は覚悟を決めた表情で頷いた。
「……では、この後は各チームでミーティングをしましょう」
「了解よぉ。いよいよクライマックスねぇ」
「ハピネス最大にして、最後の大勝負。全員、持ちうる全ての力を発揮せよ!」
「「了解っ!!」」
歯車は、回り始めた。
全てが終わるまで、止まることはない。
勝利か、敗北か。
その答えが出るのは、もう間もなくだ。
短い上に、ギャグもなく申し訳ありません。
本当は次の話の頭に入れたかったのですが、長くなりすぎたので。
ラスト前の箸休め、と言うことでご勘弁を。
作戦会議も今回がラスト、少し寂しい感じです。
思い起こせば色々な名作戦が…………殆ど無かった気がしますが……。
次からいよいよ最終作戦開始です。
まずはAチーム、ローズ達がメインの話になります。
テレビ局占拠の使命を、果たして達成できるのか……。
次回もまた、お付き合い頂ければ幸いです。