最終章4《死亡フラグにご用心》
いよいよ最終作戦開始。
ハピー達の志気も最高潮で、いざ決戦へ。
とその前に、千景にはやっておきたいことがあるらしく……。
ハピネス地下基地、大ホール。
今ここで、ハピネス全メンバーによる集会が行われていた。
「みんな~元気か~」
「「おぉ~」」
「私も元気だ~」
「「おぉ~」」
「元気があれば、何でも出来るぞ~」
「「おぉ~」」
「国盗りだって、出来るんだ~」
「「おぉ~」」
軽いあおりを終えて、紫音は満足そうに頷く。
「さて、既に知っての通り、我々は国盗りの最終局面までやってきた」
「「おぉぉぉぉぉ」」
「ここまで辿り着いたのは、偏に諸君らのお陰だ。心より感謝する」
紫音は壇上で、頭を下げる。
「だが、まだ目的を達したわけではない。そう、ここからが本当の勝負なのだ」
「「おぉぉぉぉぉ」」
「我々は正義の味方を、国をうち倒す切り札を既に手中に収めている」
「準備は整った。今こそ全てに決着を着けるとき。さあ、行こう新たな日本のために!!」
「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」
紫音の号令に、雄叫びと共にホールから駆け出すハピー達。
「……最後まで言うけど、何処に?」
冷静なハルの突っ込みは、やはり届かなかった。
結局ハピー達は、軽くフルマラソンの距離を走って、戻ってきた。
体力ついたな~と、無駄に感心してしまった。
「さて、作戦の説明の前に、みんなに言っておく事があります」
紫音に替わって壇上に立った千景。
ハル達も、ハピー達と同じように話を聞く。
「これからの戦いは、厳しい物が予想されます。命を失う可能性がある、と言うことです」
千景の言葉に、神妙に頷く一同。
「なので、無駄なリスクは極力減らしておくべきなのです」
言わんとすることが理解できず、一同は首を傾げる。
はて、無駄なリスクとは何だろうか。
「分かりやすく言えば、死亡フラグを立てないようにする、と言うことです」
「……はい??」
ハルは盛大にずっこけた。
「あの~千景さん、死亡フラグって一体……?」
「言葉通りです。それが成立すれば、どんな主要人物もイチコロと言う恐るべきシステムです」
ハルの問いかけに、千景は真剣な表情で答える。
本人は大真面目のようだ。
「逆に言えば、それさえ成立させなければ、死亡のリスクは激減します」
「そんな無茶苦茶な……」
頭を抱えるハルとは対照的に、
「確かにな。特に我々は死亡フラグが立ちやすい立ち位置だからな」
「気を付けないといけませんよね」
あっさり賛成する紫音と奈美。
「ちょっと待ってくれ。本当に死亡フラグなんてあると思うのか?」
「何言ってるのよぉ。一番危ないのはぁ、ハルちゃんじゃない」
「俺ぇ?」
予想だにしてない展開に、ハルは戸惑う。
「残念ながら、死亡フラグは医学的にも実証されています」
「絶対嘘だぁぁぁ」
「科学的にも証明済みだ。流石の吾輩も、死亡フラグに逆らう愚は犯さない」
「それっぽく言うなぁぁぁ」
「「ハルさん、頑張りましょう」」
「何をだぁぁぁ」
ぜえぜえと肩で息を付くハル。
何故か分からないが、自分以外の全員は死亡フラグを信じているらしい。
「……では話が纏まったところで、具体的な対応策に移ります」
「全然纏まってないですって」
「ハル君。貴方は一番フラグを立てやすいのですから、ここは大人しく聞いておきなさい」
千景に言われ、ハルは渋々引き下がる。
こうして、死亡フラグ講座は始まった。
「死亡フラグを避けるには、特定の台詞や行動を避けることが効果的です」
何処からか持ち出したホワイトボードに、例を挙げていく。
『俺、この戦いが終わったら、結婚するんだ』
「「お、恐ろしい……」」
ハピー達は恐怖に震える。
「どの辺がだよ!」
「わ、分からないのか……。死亡率九割越えの、ある意味死の宣告だぞ」
「マヂですか?」
「ええ。他にこんなものもあります」
『帰ってくるさ……。お前と、産まれてくる子供の為にも』
『これ、預かっててくれ。両親の形見、俺の御守りなんだぜ』
「「ひえぇぇぇぇ」」
恐れおののく一同。
ハルにはよく分からないが、これも危険な台詞らしい。
「戦いの前に異性間で交わす言葉は、死亡フラグ率が非常に高いです」
「だったら私達はぁ、それをしなければいいのねぇ」
「はい。先人達の犠牲を無駄にしない為にも、慎重に行動して下さい」
「「はいっ!」」
千景の講座は未だ続く。
「次は作戦実行中に多い死亡フラグです」
再び幾つかの例を、ホワイトボードに書いていく。
『先に行く。……ちゃんと追いついて来いよ』
『ここは俺に任せて、行け!』
『おいおい手応えがないな。少しは歯ごたえのある奴は居ないのか』
『くくく、圧倒的ではないか。我が軍は』
「……これもやばいのか?」
「分かんないの? 口にしたら最後、脱落決定の恐怖の台詞じゃない」
全く分かりません。
しかし他の面々は奈美と同意見のようだ。
「このケースでは、注意すべき点は二つです」
「まずぅ、単独行動や自己犠牲の行動はぁ、かなり危険ってことねぇ」
「後は、敵を侮ったり慢心する言動もNGですね」
ローズと柚子は、神妙な面もちで答える。
その答えに、千景は満足げに頷くと、
「他に、自分の身の上話を話す、敵と心を通じ合わせるのも危険です」
「まあ王道だな」
「ですので、作戦中は無駄口を聞かないようにしましょう」
「「は~いっ!」」
気分はすっかり、学校の先生だ。
その後数時間に渡り、死亡フラグ講座は続いた。
「さて、そろそろ時間ですね。では、今回の講座の総まとめといきましょう」
「「はいっ」」
「私から、みんなに贈る言葉は、ただ一つだけです」
視線が千景に集中する。
「どんなに頑張っても、死亡フラグは立つ時には立ちます。諦めも肝心ですよ♪」
「「はいっ、諦めますっ!!」」
「諦めんなぁぁぁぁぁ!!!」
ハルの絶叫で、死亡フラグ講座は幕を閉じるのだった。
結局具体的な作戦会議は、翌日に持ち越しとなってしまった。
この期に及んでも、ハピネスはハピネスだった。
何ともハピネスらしい話となりました。
最終作戦と言えど、やっぱりゆとりは必要ですよね。
死亡フラグは、物語のキャラにとっては本当に怖いものです。
主役級キャラがバタバタ死ぬ作品も多い昨今、ハピネスには頑張って欲しいです。
実際にフラグが立つかどうかは、最終作戦にて。
次回は最終作戦の作戦会議。今回の話より、更に短くなります。
他の話と合体させようと思ったのですが、尺が中途半端だったので、独立させて投稿させて頂きます。
次回もお付き合い頂ければ幸いです。