新たな仲間が加わります(1)
ようやくハピネスに、新メンバーが加入します。
さあいつものように歓迎会と言う名の宴会へ突入……となるはずが、
どうにも雲行きが怪しくなってきました。
ようやく、この日がやってきた。
あの選考から約一ヶ月。
ローズ監修による、新メンバー達への、厳しい訓練は無事終了した。
そして彼らは今、地下基地の大ホールに集結している。
「何だか、緊張してきたな」
「本当だよ。悪の組織に入れるなんて、夢みたいだ」
「このタイツ、凄い良い素材使ってるぞ」
「ハピネスは将来性のある、優良悪の組織だからな」
「もうすぐ先輩達と対面か……」
「いい人達だと良いな」
新社会人のような、初々しい会話をする新メンバー達。
見た目が全身黒タイツでなければ、何処の企業でも見られる光景だろう。
期待と緊張に包まれた彼らに、
「待たせちゃってごめんなさいねぇ」
入り口から現れた人影が声を掛けた。
「「お疲れさまです、ローズ教官!!」」
一糸乱れぬ動きで敬礼をする新ハピー達。
その様子にローズは苦笑を浮かべ、
「もう教官じゃ無いわよぉ。それに、これからは共に戦う仲間なんだからぁ」
固くならないで、と告げる。
「これから幹部のみんなとぉ、先輩のハピー達が来るわぁ。挨拶はしっかりねぇ」
「「了解しました!!」」
ビシッと敬礼をする新ハピー達。
厳しくしすぎたか、とローズは少しだけ反省した。
それからさほど間を空けず、紫音を先頭にハピネス一同がホールへとやってきた。
「紹介するわぁ。彼らが私の訓練を乗り越えたぁ、新メンバーよぉ」
「「皆さん、初めまして! よろしくお願いします!!」」
何処の軍隊だ、と突っ込みたくなる程統制の取れた新ハピー達。
緊張もあるのだろうが、どうにも堅苦しい。
「皆さん、私達は軍隊ではありません。上下関係は確かにありますが、
最低限の礼節と、常識を守ってくれれば構いません。少し力を抜きましょう」
見かねた千景の言葉に、新ハピー達は少しだけ肩の力を抜く。
「助かるわ千景ちゃん。この子達、私が言っても聞かなくてぇ」
「それはそうでしょう。貴方の鬼教官ぶりは耳にしてますから」
「痛いところを突くわねぇ」
ローズと千景の和やかな会話に、新ハピー達の緊張が徐々に解かれていく。
「それでは、お互いの自己紹介と行きましょう。まずは紫音様からどうぞ」
「うむ」
千景に促され、紫音は一歩前に出る。
「私がハピネスの総司令兼首領の、結城紫音だ。
正義との戦いに、諸君ら優秀な仲間が加わることを嬉しく思う。
厳しい戦いになるが、共に力を合わせ、日本に改革を起こそうではないか」
紫音の言葉に、新ハピーからは拍手と歓声が起こった。
ばれないようにカンペを見るスキルは、大幅に上がっていた。
紫音に続き、幹部達が自己紹介を行う。
「私はハピネスの副司令兼……(以下略)の、柊千景です」
「怒らせると洒落にならないからぁ、みんな気を付けなさいねぇ」
「あまり脅かしちゃ駄目ですよ。……何かありましたら、遠慮無く言って下さい」
「「イエス・サー!!」」
本能が悟ったのだろう。
体を小刻みに奮わせながら、新ハピー達は渾身の敬礼を返した。
「戦闘部隊長を勤めてる、早瀬奈美よ。よろしくね」
「純粋な戦闘力ならハピネス一よぉ。暴走すると危険だからぁ、注意してねぇ」
「もうローズさんたら。みんな、これから一緒に頑張りましょう」
「「よろしくお願いします!!」」
すっかり体育会系のノリだった。
「初めまして。衛生部隊長と保険医の和泉柚子と申します」
「見た目は可愛いけれどぉ、凄腕の医者よぉ。でもぉ、なるべくお世話にならないでねぇ」
「あ、あの、死ななければ、どんな怪我でも治療するので……頑張って下さい」
「「……は、はい。努力します」」
さらりとヘビーな事を言われ、流石の新ハピーも戸惑いを隠せなかった。
「天才科学者の蒼井賢だ。よろしくしてやっても良いぞ」
「一応幹部だけどぉ、特に言うことは無いわねぇ」
「おい、吾輩だけ扱いが雑じゃないか?」
「気のせいよぉ、気のせい。さぁ、次に行きましょう」
このやり取りが、既に十分すぎるほど蒼井の説明になっていた。
「幹部見習いをやってる御堂ハルだ。これからよろしく頼むよ」
「決まった担当は無くてぇ、全部の部署のフォローをやってるわぁ」
「みんなと一緒に仕事をする機会は、一番多いと思う。まだ未熟だけど、よろしく」
「手を出すと怖い子が居るからぁ、覚悟を決めてから手を出しなさい」
「「はい、覚悟しておきます」」
「そんな覚悟をするなぁぁ!!」
意外にノリのいい連中の様だ。
本気じゃなければ良いが……。
「最後は私ねぇ。福利厚生部と情報部の部長、ローズよぉ。改めてよろしくねぇ」
「様々な分野のエキスパートです。ハピネスが活動する上での、要の存在です」
「褒め過ぎよぉ。――これからは教官じゃなくぅ、一緒に戦う仲間よぉ。頑張りましょう♪」
「「よろしくお願いします!!」
ローズのウインクにも動じない、新ハピー達。
何と頼もしい奴らだろう。
幹部達に続き、先輩のハピー達が自己紹介を行う。
それが終わると、今度は新人達が自己紹介。
初めての対面は、特に問題もなく順調に終わった。
「さて、本来でしたらこのまま歓迎会と行きたいのですが……」
「ん、その予定の筈だが?」
紫音の言葉に、ハル達も同意する。
既に準備が出来ている食堂に、このまま直行という流れの筈だったのだが。
「その前に一つ、新ハピーの皆さんに仕事をお願いしようと思います」
千景の発言にホールが騒然とする。
特に新ハピー達は予想外だったのか、目に見えて動揺している。
「心配しないで下さい。それほど難しい仕事ではありませんから」
落ち着かせるように、微笑みかける千景。
その様子にホッとする新ハピー達。
歓迎会の買い出しなど、雑務を任されると思ったのだろう。
だが、甘い。
千景という人間を甘く見すぎている。
それを知っているハル達は、千景の発言を緊張しながら待つ。
「皆さんにお願いしたい仕事は…………」
千景から伝えられた仕事は、ハル達の予想の斜め上を行くものだった。
変なところで終わってしまい、すいません。
ちょっと長くなってしまいましたので、話を分けさせて頂きました。
千景からの仕事は次から、この話も含めて三話で纏めます。
次回もまた、お付き合い頂ければ幸いです。