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《幕間》クリスマスパーティーをしよう

久しぶりの幕間です。


ハピネスで行われた、クリスマスパーティー。

ハルの取った行動が、思わぬ騒動を引き起こす。


 今日はクリスマスイブ。

 どの店もイルミネーションを輝かせ、賑わいを見せていた。

 恋人同士が街中に溢れかえる中、ハルは一人で街を歩く。

「プレゼントって言っても、何を買えば良いやら……」

 困り顔でハルは一人ごちる。

 適当なお店に入っては、何も買わずに出る、の繰り返し。

 なかなか良い物が見つからず、時間だけが過ぎていった。

「誰に贈るか分かれば、問題なかったのにな」

 ハルは先ほどの出来事を思い出し、ため息をついた。



 事の始まりは、数時間前に遡る。

「今日のクリスマスパーティーの準備はどうですか?」

「見ての通り順調よぉ」

 華やかに飾り付けられた食堂を見せ、ローズは自信満々に言った。

 直ぐにでもパーティーが始められそうなほど、完璧な装飾だ。

「料理の準備も終わってますよ」

「ハル君もご苦労様です」

 厨房で仕込みの手伝いをしていたハルを、千景はねぎらう。

 クリスマスの効果か、和やかな空気が食堂に充満していた。

「後はプレゼントですが、そちらの方は?」

「抜かり無しよぉ。交換用のプレゼントは、みんな事前に用意してるわぁ」

「……交換用のプレゼント?」

 聞き捨てならぬ発言だった。

「前に言ったじゃない。パーティーでプレゼント交換をやるってぇ」

「………………………」

 記憶の糸を辿る。

「予算は一万円でぇ、それぞれプレゼントを用意するって、言ったじゃない」

「…………………………あっ」

 辿り着いた。

 確かに一週間ほど前に、言われていた。

「そのリアクションですと、忘れてましたね?」

「……はい」

「もぅ、ハルちゃんったら、ドジっ子さんねぇ」

 言い返せないのが辛い。

「準備もほとんど終わっている様ですし、今から買いに行ってはどうですか?」

「ハルちゃんのプレゼントがないとぉ、ガッカリする子がいるものねぇ」

 ニヤニヤするローズ。

 反論したいが、今の状況がそれを許さない。

「……分かりました。じゃあ、行って来ます」

「あ、一つ忠告よぉ。エッチなプレゼントは駄目だからねぇ」

「買わねえよ!!」

 そんなやり取りの後、ハルは街へと飛び出していった。



「とは言え、そう都合良くプレゼントは見つからないよな」

 ハルは悩んでいた。

 誰に当たるか分からないプレゼントは、選ぶのが難しい。

 特にハピネスは、下は十二才から上は六十過ぎまで幅広い。

 男性も女性もいることが、ハルの頭を悩ませる。

「ん~どうしたものか……」

 周囲を見回すハルの視線が、とある店先で止まった。

 雑貨屋の店先で、クリスマスプレゼントのワゴンセールを実施していた。

 ラッピング包装されたプレゼントが、予算別に籠に並べられている。

「雑貨屋のワゴンセールか。…………アリだな」

 悩んでも答えが出ない以上、こういう決め方も良いだろう。

 ハルは足早にワゴンセールへと近づく。

「いらっしゃいませ」

「えっと、一万円均一のはここかな」

「はい。中身は秘密ですが、どれも値段以上の商品が入ってますよ」

 女性店員の言葉を聞き、ハルは並べられたプレゼントに視線を移す。。

 大小様々なプレゼントが置かれており、どれを選ぶか迷う。

 そんなハルに、

「お客様、失礼ですが……男性の方でしょうか?」

「……そうだよ」

「では、こちらなど如何でしょうか?」

 店員は掌に収まる大きさの、立方体のプレゼントを見せる。

「これは?」

「中身は秘密ですが、きっと役に立つと思いますよ」

 店員ならば中身は知っているだろう。

 その彼女が薦めるのだから、悪い物ではないに違いない。

「そうか。じゃあ、これを貰おうかな」

「はい、ありがとうございます。……頑張って下さいね」

 何を頑張るのだろうか。

 ハルは首を傾げながら、プレゼントを受け取り、幸福荘へと戻るのだった。




「「メリークリスマ~ス!」」

 グラスを重ねる音が響き、パーティーは始まった。

 華やかに飾り付けられた会場。

 七面鳥を始め、パーティーに相応しい料理。

 元々お祭り好きのハピネスだけあって、パーティーは大いに盛り上がっていた。


 そして、パーティーが終盤に差し掛かる頃、彼が動いた。

「はぁ~い、注目よぉ~。これから、お待ちかねのプレゼント交換を始めま~す」

「「おぉぉぉぉ!!」」

 特設ステージに立ったローズに、雄叫びをあげるハピー達。

 テンションは既に最高潮のようだ。

「みんないいノリよぉ。じゃぁ、やり方を説明するわねぇ」

 ローズの説明は、簡単なものだった。

 まず全員が、自分の名前を紙に書き、くじ引きボックスに入れる。

 後は、一人ずつ順番に紙を引いていく。

 引いた紙に書いてある名前の人から、プレゼントを貰えるという訳だ。

「音楽に合わせて、回すんじゃ無いんだな」

「ちょっと人数が多いからねぇ。混乱とぉ、不正を防ぐ為よぉ」

 ローズの視線が、一瞬奈美と柚子に向いたのは気のせいだろうか。

「じゃあみんなぁ、紙を配るから名前を書いて頂戴」

 ローズと数名のハピー達により、準備は手際よく進んだ。


「さぁて、準備が出来たわぁ。クジを引く順番だけれど……」

「年齢の若い順で良いでしょう。みんなも、それで問題ありませんね」

「「異議な~し!」」

 千景の言葉に全員が賛成の意思を示す。

 結局はクジなのだから、順番はさほど重要ではないだろう。

「それじゃぁ、最初にクジを引くのはぁ、我らがボスの紫音様よぉ」

「うむ。私が先陣を切らせて貰おう」

 歓声に答えるように、手を振りながらステージに上がる紫音。

 ボックスに手を入れ、ガサガサとかき混ぜると、

「……む、これだぁぁぁ」

 某カードゲームアニメの様に、高々と頭上に掲げた。

「はぁ~い、確認するわねぇ。プレゼントは…………奈美ちゃんのよぉ」

「では奈美は、プレゼントを持ってきてください」

 名前を呼ばれた奈美は、部屋の隅から、自分のプレゼントを手に取る。

 肩に担いだそれは、紫音の背ほどもある巨大な物だった。

「いや~紫音様に当たって良かったですよ」

「奈美よ……随分大きいが、一体何が入ってるのだ?」

「ふふん、これはですね~」

 紫音に促され、奈美は包装を外していく。

「これは、熊か?」

「はい。ジャンボサイズの、熊のぬいぐるみです」

 奈美は誇らしげに胸を張るが、どこかがおかしい。

 大きさも外見も、何もかもがぬいぐるみにしては、違和感があった。

「これはまたぁ、随分とリアルな熊のぬいぐるみねぇ」

 奈美のぬいぐるみは、デフォルメされていない、本当の熊の姿だ。

 四足歩行でガンを飛ばす姿は、今にも動き出しそうなほどリアルだった。

「気に入ってくれたら嬉しいです」

「あ、ああ。ありがとう」

 ニコニコ笑顔の奈美に、紫音は引きつった笑みで応える。

 まあ正常な反応だろう。

「でも奈美。こんな立派なもの、予算内で買えたのですか?」

 確かに、とても一万円で買える代物ではない。

 しかし奈美は自信満々に、

「ええ。材料は私が調達したので、必要なのは加工費だけでしたから」

 何やら物騒な事を口にした。

「材料?加工?……おい奈美。ひょっとしてこのぬいぐるみって」

「はい。私が倒した熊を材料にして作りました~♪」

「「それは剥製だぁぁぁぁ!!」」

 奈美を除く全員の突っ込みが揃った。



「ま、まあ色々あったけどぉ、プレゼント交換を続けるわよぉ」

 気を取り直し、ローズが再び進行を続ける。

 原因である剥製は、幸福荘の入り口に飾られることで落ち着いた。

「次はぁ、ハピネスの鉄砲玉、奈美ちゃんよぉ」

「もうローズさんったら。物騒なこと言わないで下さいよ」

 物騒なのはお前だ。

「さあて、本気で行くわよ。…………はぁぁぁぁ」

 くじ引きボックスを前に、奈美は気合いを入れ始める。

 全身を覆う闘気が、ハル達の目にもくっきりと見えた。

「全ての力を……この手に……」

 強く握りしめた拳に、全身の闘気が集中する。

「早瀬流古武術奥義…………殺突牙!!」

 ボックスを突き破らん勢いで右手を差し込み、一枚の紙を取り出した。

 奥義の無駄遣いもいいところだ。

「……殺られるかと思ったわ」

 冷や汗を流すローズの姿が、奈美の本気を表していた。

「じゃぁ確認するわねぇ。プレゼントは…………あらぁ、私のねぇ」

 瞬間、奈美は崩れ落ちた。

 先ほどまでの気迫は何処へやら、ガックリと膝を着く。

「まさか……私の奥義が通用しないなんて」

 通用するはずも無かろう。

 無駄遣いされた奥義に、思わず同情してしまう。

「まあまあ、目当ての物じゃないけどぉ、私のもなかなかよぉ」

「ありがとうございます……。あれ、これは?」

 ローズのプレゼントは、化粧品のセットだった。

「女の子だものぉ。いつも可愛くしてなくちゃ駄目よぉ」

「でも、私は化粧なんてしたこと無いですよ」

「私が教えてあげるわぁ。それに、化粧は女を化けさせるからぁ……」

 ローズは奈美の耳元に口を寄せる。

「奈美ちゃんは素材が良いからぁ、ハルちゃんだって落とせるかもよぉ」

「やります。ローズさん、早速教えて下さい」

 奈美はがっしりと、ローズの手を握るのだった。



 その後、数名のハピー達がプレゼント交換を終える。

「どんどん行くわよぉ。次はぁ、ハピネスが誇る永遠の期待の星、ハルちゃんよぉ」

「……ちっとも期待されてない紹介ありがとう」

 何故か盛り上がるハピー達に、ハルは苦笑いで手を振る。

「さぁハルちゃん。バッチリ引いちゃってぇ」

「くじ運はあまり無いけど、何が当たるかな……」

 ガサガサと箱をかき混ぜ、適当な一枚を取り出す。

「ハルちゃんのは……………ハピー二十四号のプレゼントよぉ」

 何とも微妙な所を引いた。

 まあ、幹部連中とは違って、常識人の多いハピーの方が安心できる。

 が、当の二十四号は何やら困り顔。

「まさか、よりにもよってハルさんに当たるとは……」

「おいおい。俺に当たると何かまずいのか?」

「ハルさん以外なら、男でも女でも洒落で済んだのですが……」

 諦めのため息をつき、二十四号はハルにプレゼントを渡す。

「この感触だとマフラーとか、セーターかな?」

 思ったよりまともだ、とハルは包装を解いていく。

 そして姿を見せたのは、

「…………………おい、何だこれは?」

「サンタのコスプレ衣装です。…………女性用のミニスカバージョンですが」

 嫌な汗が流れた。

 二十四号の発言の意味が、ようやく理解できた。

 女性なら特に問題はない。

 男性ならサイズが合わないから、ハズレでした、で済むだろう。

 だが、

「ハルさんなら……着れちゃいますよね」

 そう、男性陣の中で、ハルだけはサイズがギリギリ合うのだ。

 この時ほど、自分が小柄であることを恨んだことはない。

「ハルちゃ~ん」

 いつの間にか背後に立っていたローズが、ハルの肩を掴む。

「折角のプレゼントですものぉ。ちゃ~んと着てあげないと、ねぇ~」

「ろ、ローズ。頼む、見逃して…………」

「は~い、一名様、お色直し入りま~すぅ」

「助けてくれ~~!!」

 ローズに引きずられていくハルを、とっても良い笑顔で一同は見送った。


 この後の事は、ハルの名誉の為に伏せておく。

 ただ、異常なほどの熱狂と数名の鼻血があったことだけ、伝えておこう。


 そうこうしている間にも、プレゼント交換はどんどん進む。

「さぁ、次はハピネスの癒しの女神、柚子ちゃんよぉ~」

「あ、あの~。私よりも千景さんが先では……」

「私達裏方は最後に引きますから、お気遣いなく」

 千景に促され、柚子はボックスに手を入れる。

「そう言えば、柚子ってくじ運が凄い良かったよな」

「温泉旅行もそうだし、懸賞なんかも結構当ててるみたいよ」

「私も勘なら自信があるのだが、クジだけはどうにもな」

「吾輩も非常に興味深い強運だな。ん、……なら、このクジもなのか」

 会場は、妙な空気に包まれていた。

 ハピー達も柚子のくじ運は知っているので、固唾をのんで見守る。

「えっと、これで」

「は~い、確認するわねぇ。プレゼントはぁ…………ハルちゃんのよぉ」

「「おぉぉぉぉぉ!!」」

 瞬間、会場が震えた。

 まさに神懸かりと言うべき、クジ運だった。

「俺のプレゼントは柚子か……。まあ問題ないかな」

 プレゼントの中身は知らないが、柚子なら何でも喜んでくれるだろう。

「ん~~~~~、悔しい~~~」

 隣で地団駄を踏んでいる奈美には触れず、ハルはステージへと向かう。

 と言うか、地震が起きているので止めて下さい。


「は~いハルちゃん。プレゼントは用意できたわねぇ」

「迷惑かけたけどね。ほら、この通り何とか」

 ハルはローズに、ラッピングされた小箱を見せる。

「え、そのサイズにその形…………」

「ローズ、どうかしたのか?」

「ううん、何でもないわぁ。じゃぁ、プレゼントを渡してあげてぇ」

 ローズに促され、ハルは柚子に向き合う。

「ハルさんのプレゼントが貰えるなんて、とても嬉しいです」

「あんまり期待されても困るけど、はいこれ」

 ハルは小箱を柚子に渡す。

「ありがとうございます。……あの、開けてみても?」

 ハルが頷くと、柚子はラッピングを丁寧に解いていく。

 やがて中身が姿を見せ、

「「えぇぇぇぇぇ!!!」」

 ハピネス全員の驚きの声に、会場は再び震えた。


「ハルさん……これって……」

 小箱に入った指輪を手に、柚子は顔を真っ赤にする。

「………………やられた」

 ハルは自分の愚かさに気づかされた。

 雑貨屋の店員は、親切で薦めてくれたのだろうが、これは最悪だ。

 クリスマスに女性に指輪を贈るなど、とんでもないことだ。

「ハルちゃん、遂に決心したのねぇ」

「私は反対しません。職場恋愛は禁止してませんから。……おめでとうございます」

「ち、違うんです。これは雑貨屋で、中身が分からなくて……」

 何とか説明しようとするのだが、上手く言葉にならない。

 そして事態は、更に悪化する。

「ハルさん……お気持ちは確かに受け取りました」

「柚子、何を」

「この贈り物へのお答えは、こうするのが一番ですよね」

 柚子は赤い顔のまま、指輪を左手の薬指へと……、

「ちょっっと待ったぁぁぁ!!」

 突如ステージに現れた乱入者により、それは中断された。


「な、奈美。さっきまで一番後ろに居たのに……」

「凄い脚力ですね。一気にここまで跳躍してきましたか」

 千景が呆れたように呟いた。

 突然の乱入劇を、ハピー達はハラハラ、そしてワクワクしながら見守る。

「おっとぉ。ここで奈美ちゃんのちょっと待ったコールよぉ」

「古っ!」

 まさかのねるとんだ。

「いいじゃない。それでぇ、ハルちゃんはどっちを選ぶのかしらぁ」

「いや、選ぶも何も……」

 そもそも勘違い、とハルは釈明しようとした。

 だが、この状況はそれを許さなかった。

「奈美さん。ハルさんからのプロポーズを、邪魔しないで下さい」

「ぷぷぷ、プロポーズですって~。こんなの無効よ、無効」

「何を根拠に」

「その指輪は、プレゼント交換の物でしょ。誰に渡るか分からなかったじゃない」

「なるほど。じゃあ、これは運命のプロポーズだったのですね」

「違~う。ただのくじ運じゃない」

 激しい口撃の応酬。

 奈美と柚子の二人の周りに、一触即発の空気が漂っていた。

「とにかく、こんなのは認められないわ」

「ではどうするのですか?」

「気は進まないけど、実力で阻止させて貰うわ」

 奈美は拳を握った。

 

「いい加減にしろ。二人とも、少し落ち着け」

 何とか治めようと、ハルは静止の言葉を掛けるのだが、

「ハルは黙ってて。これは女の戦いよ」

「ハルさん、待ってて下さい。必ず勝ちますから」

 当事者はすっかり蚊帳の外だった。

「本気で行くわよ。取り消すなら今のうちだからね」

「ご心配なく。奈美さんの耐性から考えると、そろそろ……」

 柚子が呟いた瞬間、がくりと奈美が膝を着いた。

「な、何……。体が急に……」

「こんな事もあろうかと、奈美さんの食器類に、即効性の痺れ薬を塗っておきました」

 こんな事って、どんな事だよ。

「柚子……何時の間にこんな薬を」

「蒼井さんと共同開発したんですよ」

 ちらりと視線を向けると、全力で首を振り否定する蒼井。

 見事なスケープゴートだった。

「なんのこれしき………ふんっ!」

 気合い一発、奈美は何事もなかったように立ち上がった。

「象とか鯨を、一瞬で動けなくする、薬なんですけれども……」

「甘いわね。私をそんな動物と同じに考えて貰っちゃ困るわ」

 もう突っ込むのも馬鹿らしくなってきた。

 奈美なら、ふぐの躍り食いをやってもピンピンしてそうだ。

「でも、流石は柚子の薬です。強がっていますが、奈美は痺れが残っていますよ」

「戦闘力はぁ、大分落ちてるわねぇ。これは面白い勝負になりそうだわぁ」

 大御所二人は、止める気など欠片もなく解説を始めてしまった。

 ハピー達も二人に声援を送っている。

「この位のハンデは上等よ。覚悟しなさい!」

 だん、と足を踏み込み、構えをとる奈美。

「戦いは得意ではありませんが、全力でお相手します!」

 何処から取り出したのか、両手の指に注射器を挟む柚子。

 中身が何かは、聞かぬが華だ。

「それではクリスマス特別マッチ、……始め!」

 すっかりお祭り気分の紫音によって、戦いのゴングは鳴らされた。




 痺れ薬の影響か、奈美は普段の力が出せず、苦戦を強いられた。

 柚子は肉弾戦を避け、距離を取っての薬品攻撃を繰り返す。

 プロレスばりの毒霧攻撃に、ステージ状がカラフルに染まることもあった。

 うっかり吸ってしまったハルが悶絶していたが、気にしないでおく。

 激しい戦いは暫し続き、

「私はもう、手札を使い切りました……」

「私ももう、体がほどんど動かないわ」

 両者戦闘不能による、引き分けとなった。

 白熱の勝負に、ハピー達が歓声を送る中、二人はゆっくり近づき、

「柚子……結構やるじゃない」

「奈美さんも、凄いです」

 がっしりと友情の握手を交わした。

 感動の場面に、惜しみない拍手が二人に注がれる。

 戦いの原因などすっかり忘れ、二人は歓声に答える。

「誰か…………助けてくれ……」

 グッタリとしたハルが救出されたのは、それから大分経ってからだった。


 こうして、騒がしくも楽しかったクリスマスは、終わりを告げた。




 後日談。

 騒動の原因となった指輪はと言うと、

「チェーンに通して、ネックレスにしてみました」

「ん~~、それならギリギリオッケーだわ」

 淑女二人による、綿密な話し合いにより、無事決着をみた。

「……次は絶対、自分でプレゼントを選ぶぞ」

 ハルのやつれた顔が、誤解を解くのがどれだけ大変だったかを、物語っていた。



何ともハチャメチャな話になってしまいました。

まあ、幕間と言うことで……。


本編を読まれて、ん、と思った方も居ると思われますが、

ハピー達は柚子と奈美の気持ちに気づいております。

何とも気の良い奴らですね。


実はこの小説で、初めてリアルタイムの季節と合わせたネタです。

今後もちょくちょく入れてみたいと思っております。


次回は、クリスマスネタをもう一つ入れたいなと考えております。

間に合わなければ、……無かったことに。

そんないい加減な作者でございますが、

よろしければ次回もまた、お付き合い下さい。

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