ドクターを救出しよう(1)
ドクター逮捕の連絡を受け、急ぎ基地へと戻る幹部一同。
何故ドクターは逮捕されてしまったのか?
仲間の危機に、ハピネスはどう動くのだろうか。
と格好つけて見ましたが、内容は何時も通りです。
今回は導入編ですので、大分短めになってます。
幸福荘に戻るやいなや、千景は緊急招集を掛けた。
地下作戦司令室に、幹部とハピーの代表を集合させ、
緊急対策会議を実施した。
「全員、この会議が開かれた理由は分かってますね」
司令室の長机に座る一同を見回す千景。
全員が頷いたのを確認し、
「それでは、ドクター救出作戦の緊急会議を開始します」
こうして会議は始まった。
「まず、ドクターが何故逮捕されたのかを教えて下さい」
「そうだな。何の容疑で捕まったのかを聞かせてくれ」
千景と紫音の問いに答えるのは、ハピー一号(以下一号)。
長机の席から立ち上がり、
「はい。蒼井様の罪状は……痴漢です」
ハッキリと言った。
暫しの沈黙。そして、
「……では、これにて会議は終了とします」
「「異議な~し」」
千景の言葉に、声を揃える幹部達。
こうして会議は終了……、
「ちょ、ちょっと待って下さい」
しなかった。
「でもな、流石に痴漢は駄目だよ」
呼び止めた一号に、ハルはため息混じりに言う。
「だから違うんです。これは冤罪なんですよ」
「冤罪?……ねえハル。冤罪って何?」
くいくい、と服の裾を引っ張る奈美に、ハルはため息をつく。
「冤罪ってのは、無実なのに犯罪者として扱われることだ」
「ん~?」
「つまり、濡れ衣ってやつだよ」
「ああ、なるほど」
ようやく納得したらしく、ポンと軽く手を打つ。
「それが本当なら……蒼井さんが可哀想です」
「そうねぇ。でもぉ、どうして冤罪って言い切れるのかしらぁ」
「証人がいるのです。それは、彼です」
一号の呼びかけに、一人のハピーが立ち上がる。
「お前は、ハピー九号か」
「はい。私が、ドクターの無罪を証明致します」
九号は直立不動の姿勢で、話し始めた。
蒼井はハピー九号と、電気街まで買い出しに出かけた。
電気街へ向かう途中、通勤ラッシュの満員電車に巻き込まれる。
それでも何とか、目的の駅まで辿り着いたのだが……。
ホームに降りた途端、蒼井を鉄道警察隊が取り囲む。
痴漢容疑として、蒼井は引きずられて行ってしまった。
「これが、ドクターが逮捕されたときの状況です」
九号の話に、奈美は首を傾げ、
「今の話じゃ、蒼井が濡れ衣だって証明が出来ないわよね」
疑問を口にする。
「そう言えば説明し忘れていました」
をいをい。
「ドクターと私は、満員電車の中では、両手を上げていたんですよ」
「どうして?」
「女性の体に、偶然でも手が触れると、痴漢扱いの世の中ですから」
妙なところで真面目な二人だった。
全身黒タイツでは、無意味なような気がするが……。
「なるほど。それが事実なら、確かにドクターは無実ですね」
九号の説明に、千景は納得したように頷く。
蒼井の冤罪は、どうやら確かなようだ。
「それなら、どうして蒼井さんは痴漢にされてしまったんでしょうか」
恐る恐る挙手をして、柚子が尋ねる。
「あくまで私の想像になってしまいますが、
今回の痴漢は、でっち上げの可能性が高いと思います」
「でっち上げって、どういう事なんですか」
「痴漢というのは、被害者が通報すれば、ほぼ確実に成立します」
「それはぁ、もし嘘の通報だとしても同じなのよぉ」
千景とローズの言葉に、司令室は沈黙に包まれる。
社会の不条理を、全員が噛みしめていた。
「何にせよ、だ。こうなった以上、我らの行動は一つだけだ」
紫音の言葉に、全員が頷く。
不当逮捕された仲間が、刑務所にいる。
ならば悪の組織として、やるべき事は決まっている。
「これよりハピネスは、ドクター救出作戦を開始するぞ!」
「「おー!!」」
こうして、ドクター救出作戦は幕を開けた。
ドクター逮捕のまさかの真実。
いえ、本当に痴漢の冤罪って怖いんですよ。
え~、今更ですが、この物語は100%フィクションです。
捕まって直ぐに刑務所行き、など無茶苦茶な展開が多々ありますが、
寛大な心で読んで頂ければありがたいです。
次回もまた、お付き合い頂ければ幸いです。