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必殺技会得します(3)

今回、完結してません……すいません。

次回こそ完結させます。

呆れずに読んで頂けたら幸いです。

「温故知新、と言う言葉がある。過去の事から新しいことを発見すると言う意味だ」

「それが……どうしたのでしょう」

「なぁに、何も新しい必殺技を作る必要は無いのだ。我々には先人達が残した、数々の必殺技がある。それを真似させて貰おう」

 なんて事を言うのだろうか。

 世の中には著作権というものが存在すると言うのに……。


「私のコレクションを用意した。好きなのを選べ」

 紫音に促され、ハピーが持ってきたのは、山のような漫画本だった。

「こいつは……凄いな」

「ほんとね。少年漫画から少女漫画……アフタ○ーンまで抑えてるわ」

「あらぁヤング系もあるのねぇん」

「ライトノベルまで揃ってます……」

 紫音のコレクションに、圧倒される一同。

「さぁ、ハルよ。この中からお前の必殺技を選べ」

「……本気だったんですね」

 ガックリと肩を落とすハル。

 いくら何でも漫画の技をモノマネなんて出来るわけが……。

 そんなハルの考えを読んだのか、

「ハル君。そんな顔をしてはいけませんよ」

 千景が微笑む。

「貴方のモノマネについては、私が少し研究させて貰いました」

「千景さん……いつの間に」

「折角の機会ですし……その結果をお話ししましょう」



「ハル君のモノマネには幾つかの制約があります。

 その一つ目が、モノマネの発動条件です。それは、みんな知っての通り、モノマネをする本物を見たり、聞いたりしなくてはなりません」

 確かに。それをしなくてはモノマネのしようがない。


「ここで面白いことが。本物は、別に生の情報でなくても良いのです」

「それは……つまり……」

「テレビを通しても、写真であっても……これから試しますが、恐らく漫画の絵でも可能なはずなのです」

 それはハルも知らなかった事だった。


「二つ目に、モノマネには発動時間があります。これはモノマネするものによって、かなり変動します。簡単に言ってしまえば、難しいものほど、モノマネできる時間も短くなります。

 あと、それとは別に、一つ法則があります」

「法則……ですか?」

「はい。それは、ハル君がモノマネする本物を、どれだけ見ることが出来たかによって、時間が変化する、と言うことです」

「なるほど……。じっくり観察してからモノマネすれば長時間モノマネ出来るし……」

「チラッとしか見れないと、モノマネの時間は短くなるんですね」

 紫音と奈美の言葉に、千景は正解です、と微笑む。


「それから、やはり生で見るのが一番のようですね。テレビ越し、写真ではじっくり見てもモノマネの時間が生よりも短くなるようです」

 知らなかった…………。

 モノマネの持ち主のハルですら、知らない情報が次々に出てくる。


「三つ目は、能力の劣化です。やはりモノマネである以上、本物と比べると質が落ちるのは当然です。……ただ、能力の何が劣化するのかは決まっていません」

「あの……どういうことでしょうか?」

「そうですね……簡単に説明しますと、コピーした能力の力自体が劣化するのではなく、能力の一部が劣化していたり、あるいは欠如していたり、そう言った限定的な意味での劣化もありえるのです」

 確かに……それは厄介な弱点だ。

「まだ調査しきれていない部分もあるでしょうが……今分かっているのはこんな所ですね。

 さあハル君。今のことを踏まえた上で、必殺技を選んでください」

「結局……そこに戻るんですね」

 ハルはため息をついた。



「私のお薦めのこれはどうだ?」

 紫音が差し出したのは、ゲームが原作の漫画だった。

 神話に出てくる英雄達を召還し、聖杯を巡る争いを繰り広げる話。


「この主人公は、登場人物の中では比較的弱いが……面白い力を使うぞ」

「何々、……………武器を作り出すか。確かに便利だな」

 丸腰を装って、武器を作り出す。

 不意打ちにはもってこいだ。

「んじゃ、まずはこれからやってみますか」

 漫画本を片手に、体育館の中央へと移動する。

 じっくりと、穴が空くほど漫画絵を見つめ、脳裏に焼き付ける。


「よし、オッケーだ」

 本を閉じ、意識を集中させる。

 集中力を高め、それが最高に達したとき、記憶していた呪文を口にする。

投影――開(トレースオ)…………はぅ!!」

 プチン

 呪文を最後まで発する前に、何かが切れる嫌な音がハルの体内から響いた。

 ドスン、と前のめりに崩れ落ちるハル。

 完全に意識を失っているようで、顔をもろに床にぶつけた。

「は、ハル!!」

「大変よぉ」

「ハルさん…………」

 慌てて駆け寄る一同。

「…………大丈夫です。気絶しているだけです」

 柚子の診断に、ホッとする幹部達。

 ハルが目を覚ましたのは、それから数分後だった。



「つまりは何が原因なのだ?」

 紫音の問いかけに、

「恐らくは……暴発だと思われます」

 千景は真剣な表情で答えた。

「あの漫画の主人公は、魔術というものを使うために、魔術回路と呼ばれるものを体内に有しています。それに魔力を流して、魔術を使う設定のようです」

 確かに、回路が何本とか言っていたような気が……。

「しかし、普通の人はそんなもの持っていません。なので、魔術を使うことは出来ない……。普通はここで終わるのですが、ハル君は違います。

 モノマネで、回路が用意できていないのに、魔力を流すという作業をモノマネしてしまったので……」

「行き場のない魔力が、体内で暴発した……と」

 紫音の言葉に、千景は頷いた。

「それじゃあ、回路を作るのをモノマネすれば……」

 ハルの提案に、

「確かに、そうすれば可能かもしれませんが、非常にリスクが高いです。

 モノマネを二つ同時にすることになりますが、それが可能なのか、それを行うことでどのようなデメリットがあるのか……少なくとも調査が終わるまでは止めておくべきです」

 千景の言葉に、ハルは頷いた。

 命をかける場面ならともかく、今はそこまでのリスクを負う必要はない。


「ふむ、私の好きな必殺技だったが……仕方がないな。他を探すか」

 ……って、まだやるんですか?


「はいは〜い。これ、私の好きだった漫画の技なんだけど、ハルやってみてよ」

 頬に十字傷のある侍の漫画……。

 奈美、お前ならこれは出来る。

 九つの斬撃を同時に打ち込むのは、お前なら可能だ。


「ハルちゃぁん、これなんてどうかしらぁ」

 世紀末に胸に七つの傷を持つ男が活躍する漫画……。

 ローズさん、それは貴方にこそ相応しい。

 あたたたた、と雄叫びをあげるのは……無理です。


「あの……これなんか……どうでしょうか」

 昭和五十八年の六月を何度もループする、惨劇に挑む漫画……。

 柚子……凄いところを突いてくる。

 この公安の男の技は……モノマネ出来そうなところが怖いな……。


「それじゃあ、私が参考にしているこのアニメの漫画はどうですか?」

 皇子が身分を隠して、騎士団作って帝国に反逆する、アニメ原作の漫画……。

 千景さん、これは絶対に参考にしちゃ駄目だと思います。

「この主人公の眼が……欲しいんですよ」

 怖いっす。

 冗談抜きで怖いですよ。

 何に使うんですか、とはとても聞けない。


「まあ、時間はたっぷりあるんだ。全部試すぞ」

 何を言ってるんだろうか……。

「ハルさん、我々が選んだものも試してください」

 いつの間にやら集まっていたハピー達。

 各々好きな漫画をしっかりと手に取っている。

「それじゃあ、まずはこのロボットアニメの静かなる人間爆弾から行こうか!」

「せ、せめて衝撃の方にしてください」

 こうして、ハルの必殺技習得作戦は、泥沼化していった。


ハルの特訓の結果は果たして……。

次回の(今度こそ)完結編は後日談になる予定です。

平凡の名を返上できるのでしょうか。

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