幕間《時には昔の話を》
今回は本当に幕間です。
千景と美園、二名の会話だけで、非常に短いです。
次の話へとつなぎだと思って、気軽に楽しんでいただければ幸いです。
「それでは」
「久しぶりの再会を祝して」
「「乾杯」」
キン、とグラスが澄んだ音を響かせた。
町の中心部より少し離れた裏路地にある、小さな居酒屋。
看板を出していないが、それでも店内は常連客でそこそこの賑わいを見せていた。
そんな中、カウンター席で隣り合いながら、千景と美園は杯を交わす。
「ふぅ、こうして美樹と飲むのも、何年ぶりですかね」
「大体四年ぶりかしらね」
美園は答えながら、大将に追加のお酒を頼む。
「四年か……長かったですね」
「全く。仲の良い友人が、気づけば悪の組織の幹部になってるんですもの」
「それは言わないでよ」
千景が少し困ったような顔をする。
追加の酒をあっという間に飲み干し、更にお代わりを注文。
「でも驚いたわ。……あの事件の後は、貴方の消息は全く掴めなかったから……」
「……色々ありましてね」
美園の言葉に、千景は何かを思い浮かべるように、瞳を閉じる。
その様子に、美園はクイっと酒を飲み干し、更にお代わり。
「あの事件は、私も独自に調べたわ。……貴方が正義の味方を憎むようになった理由は分かるけど、どうして悪の組織をつくったの?」
「あの方を御守りするためです」
「……誰?」
「源一郎様の忘れ形見です」
千景の言葉に、美園は驚きの表情を浮かべた。
二人同時にコップを空け、今度は一升瓶を要求する。
「あの結城源一郎の娘……死んだと思ってたけど」
「戸籍上は死んでます。同姓同名ですが、別人の戸籍を私がでっち上げました」
サラッととんでもないことを言ってのける。
千景は一升瓶からジョッキへと酒を注ぐ。
「そう言う美樹はどうして正義の味方に?」
「ん〜、別に理由は無いんだけど……。強いて言うなら、この能力のせいかしらね」
美園はジョッキを直角にし、中身の一気に飲み干す。
「私の異端な能力も、正義の味方なら大歓迎だからね。それに、変人ばっかりだから誰も私のことを怖がらないし……。それまでは貴方だけだもの。私を怖がらなかったの」
「美樹……」
二人の目の前に、一升瓶が十本並ぶ。
「でも、やっぱり千景と飲むのが一番楽しいわ」
「ふふふ、嬉しいことを言ってくれますね」
一人五本づつ。
瓶の中身はあっという間に吸い込まれていった。
「おじさん、いつものお願い」
「はいよ!」
威勢のいい声と共に、酒樽が二つ運び込まれる。
「食前酒ね。これを飲んだらご飯にしましょう」
「そうね。ここはご飯も美味しいから」
二人はニッコリと笑顔を浮かべる。
こうして、二人の酒盛りはこれから始まりを迎えるのだった。
色々と難しい話になってしまいました。
ギャグ分が足りない分は、次回で補います。
次回は、新キャラ登場の予定です。
シリアスな話にはなりそうもないので、気軽にまた読んでいただけたら幸いです。
ご意見・ご感想も是非お願いします。