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悪の怪人つくりますR(1)

まず、更新が遅くなってしまい申し訳ありません。今後は、定期的な更新をしていきますので、懲りずに付き合っていただけたら幸いです。

さて、今回の話は新キャラ登場のプロローグです。視点変更が多くて読みづらいと思います。ごめんなさい。

 とある平日の昼下がり。

 ハルは基地の近所にある駅前のスーパーへと来ていた。

「えっと、人参と……ジャガイモと……タマネギと……」

 メモを見ながら、買い物かごの中に食材を放り込む。

 ハピネスの料理部からの依頼だった。

 ローズ帰還のお祝いに、ごちそうを投入しすぎて、今日の夕食分の材料が足りなくなってしまったというわけだ。

 料理する量が量だ。追加分の買い物でも、かなりの重量になる。

「後は、お酢とみりんと醤油と味噌とお米と…………」

 軽い嫌がらせだろうか。

 それとも馬鹿にされてるのだろうか。

 どう考えても一度に無くならないだろう。

 まあ何にせよ、買わなくてはならない。

 よいしょ、と気合いをこめてカートを押す。

 ノロノロとカートを押し、生鮮食品コーナーへとさしかかった時だった。

「う〜ん。カリフラワーってどっちかな……」

 なにやら不穏なセリフを放つ少女がいた。

 商品ケースを眺め、あごに手をやり、なにやら考えている。

「まあ、どっちも同じだよね」

 そう言って少女はブロッコリーに手を伸ばす。が、

「そっちはブロッコリーだ。カリフラワーは隣の白い奴だよ」

「へっ!?」

 突然声をかけられて、驚いた表情を浮かべる少女。

 ついつい口を出してしまった。

 少女が振り返りハルの方を向く。

「えっ……奈美?」

「はい?」

「あ、すまん。……知り合いに似てたんで」

 ハルが思わず勘違いするほど、少女は奈美に似ていた。

 青みがかったセミロングの髪の毛と、奈美に比べ気弱そうに見える顔立ち。

 よく見ると、確かに別人だ。

「あの……」

「ああ、ごめん。怪しい者じゃ――」

 はて、と言葉を止める。

 職業……悪の組織の幹部見習い。

 うん、十二分に怪しかった。

「……実は怪しい者だ」

 堂々と言い切ってやった。

 まあ、隠す事じゃ無いだろう…………多分。

 これで引くかと思ったが、少女はむしろ興味を引かれたようで、

「ふ〜ん。ねえ、これってナンパですか?」

 ニヤリと笑みを浮かべて言った。

 何処をどう聞けば、そう解釈出来るのだろうか。

 ハルが怪訝そうな表情をしていると、

「隠さなくてもいいですよ。お婆ちゃんが良く言ってました。都会の男が声を掛けてきたら、それはナンパだから気を付けろ、と」

 お婆ちゃん、なんて迷惑な。

 少なくとも、こんなに生活感溢れる買い物をしている男が、ナンパなんてしないだろう。

「ふ〜ん」

 少女がハルの顔をのぞき込み、

「お兄さん、綺麗な顔をしてますね。まるで女の人みたい」

 サクっとハルの心に一撃を入れる。

「あれ、気にしてました?」

 ええ、気にしてますとも。

 ムッとしたハルに、

「気にしなくても大丈夫ですよ。私は好きですよ。お兄さんみたいな人」

 慰めともとれる言葉を言う。

 ……慰めてないな。間違いなく。

 ここまで来てハルは悟った。

 こういう相手は相手にしないに限る、と。

「それじゃあ、そう言うことで……」

「ちょっと待った」

 グワシ、と立ち去ろうとしたハルの首根っこを少女が掴む。

「こうして会ったのも何かの縁ですし、買い物につきあって下さいよ」

 どんな縁だ。

 ハルは断ろうとして、気づいた。

 ハルの首根っこを掴む力が、徐々に強くなっていることに。

「お爺ちゃんがよく言ってました。女性の誘いを断る男は、死んでも文句が言えないって」

 覚えてろよ、クソ爺。

 見知らぬ老人に殺意を向けるが、首を締め付ける万力のような力に意識が現実に戻される。

「それで、どうしましょう? 私に付き合ってもらえますか? それとも……」

「わ、分かった……。付き合おう」

「やった〜。あ、そうそう。私、葵っていうの。よろしくね」

 こうして、ハルは謎の少女、葵の買い物に付き合う事となった。




 ――同日同時刻

 美園は不機嫌だった。

 非常に不機嫌だった。

 理由は携帯から聞こえてくる、

「本当に困っちゃうよね、みそぴー」

 脳天気な爺の声だった。

「ぼけ爺。もう一度、状況を整理して私に話せ」

「ええ〜、また〜。面倒じゃな〜」

 やっぱり一度殺しておくべきだった。

 買い換えたばかりの携帯電話が早くも嫌な音を立てる。

「いいか。私はお前に何を言った?」

「ん〜。新人ちゃんが地方から来るから、出迎えろ、じゃろ?」

 そこまでは正解だ。

 前回の罰ということで、爺に向かえに行かせた。

「それで、駅前で待ち合わせのはずだが、貴様は今どこにいる?」

「パチンコじゃよ」

「……何故?」

「いや〜、時間つぶしに入ったんじゃが、出るわ出るわで、もう止まらんのじゃよ」

 嬉しそうな爺の声に、殺意がより一層増していく。

「お、またフィーバーじゃ。

 と言うわけじゃから、迎えにはみそぴーが行ってね。め・い・れ・いじゃよ」

 神様、恨みます。

 なんでこの爺が上司なのか……。

「んじゃ、よろしくのう」

 一方的に電話が切られる。

 …………パキン

 新品の携帯電話が、本当に短い生涯に終止符を打つ。

「……爺の事は後回しだ」

 熱暴走しそうな頭を何とか冷ます。

 こちらの都合はともかく、新人をずっと待たせてしまっている事に間違いない。

「私が行くしかないか」

 大きくため息をつく。

「私は名前しか知らないのだが……何とかするしかないな」

 全ての情報を持っているのは爺だ。

 美園に与えられている情報は、新人の名前がアオイという人物だと言うことだけだ。

 再び大きくため息をつき、美園は待ち合わせ場所の駅前へと向かった。




 ――同日同時刻

「みんな、朗報ですよ」

 ハピネス作戦司令室に、嬉しそうな千景の声が響く。

「ん、何事だ?」

「千景さんの朗報って珍しいですね」

「何かしらねぇ」

 紫音、奈美、ローズに向かい、少し嬉しそうに、

「以前から募集していました、怪人制作のスタッフが見つかったのです」

 言い放った。

 確かに朗報だった。

 未だカマキリ怪人のまま生活しているハピー八号が、ようやく戻れるのだ。

「ほう、それは確かにハピネスにとっては喜ばしいことだ」

「そうですね。これで……ハピー八号が……」

「でぇ、一体どんな人なのよぉ」

 ローズの言葉に、

「詳しい事は直接会ってから、と言うことです」

 ただ、と千景は言葉を句切り、

「待ち合わせに必要ですので、名前だけは聞いています。

 本名かどうかも分かりませんが、アオイという名前のようです」

「でもぉ、電話だったのよねぇ。性別くらいはぁ分かるんじゃないのかしらぁ?」

 ローズの問いに、しかし首を横に振る。

「ボイスチェンジャーを使っているようで、特定できませんでした」

「随分、用心深いんですね」

「だがそれくらいの方が、信用できる」

 紫音の言葉に、千景が頷く。

「なので、私が直接待ち合わせに行きます。癖のありそうな人物なので、私以外では負けてしまう可能性がありますからね」

 千景の言葉に、全員反論できない。

 話術と交渉術で千景の右に出る者はいないからだ。

「それでは、行って参ります」      

 ニッコリと微笑むと、千景は待ち合わせ場所の駅前へと向かった。




 ――同日同時刻

 男は急いでいた。

 端から見ていると、全く急いでいるようには見えないが……。

 とにかく、急いでいた。

 何故なら、待ち合わせの時間が迫っていたからだ。

「……まあ、この天才と呼ばれる蒼井様の頭脳が必要な奴らなら、何時間でも待っておるだろう」

 男は急ぐのを止めた。

 全ては自分を中心に回っている。そう言う考えの持ち主だった。

「今度こそ、少しは楽しめると良いのだが……」

 良いながらメガネをクイっとあげる。

 細身で長身、スラッとしたスタイルの男性だ。

 元々の顔はハンサムだったのだろうが、今は頬はこけ、目の下には隈がくっきりと、ニヤリと怪しげに歪む口元が、メガネと相まってハンサムとはほど遠い容姿になっている。

「ふむ、待ち合わせの場所へは……あの電車か」

 手に持ったメモ用紙を頼りに、乗換を行う。

 目的の駅までは、もうすぐだろう。

 待ち合わせの相手は女。それ以外は知らない。

 そして、興味もない。

 今男の頭に渦巻いているのは、自分の力を存分に奮いたいという思いだけだ。

 その為には、多少窮屈でも組織に所属するのも仕方があるまい。

 ニヤニヤと笑いながら、待ち合わせの相手が待つ駅へと電車は進んでいった。


今回はギャグ分が非常に少な目で、シリアスな展開ですが、そんな空気は続きません。

次回から、またガラッと空気が変わりますので、またお読みいただけたら幸いです。

今後は、最低でも2,3日に一回は更新しますので、よろしくお付き合い下さい。

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