夏の、思い出
{美術室}
帳がおりるころ定子の携帯電話のバイブが震えた。
ちょうどデッサンを終わって下校しようとしてところだった。
定子の携帯電話には
[琉華] 『今ちょっと時間ある?』
とショートメールで尋ねる琉華ちゃんからだ。
[定子] 『どうしたの?』
訪ねると
[琉華] 『保健室でアレもらってきて。』
とのことだった。
{廊下}
火災報知器と誘導灯だけが不気味に床を照らしている。
誰も居ない廊下を定子だけが息を切らしている
{保健室}
保健室の明かりを付け目当ての物を手に取り直ぐに元来た道を戻って行った。
{厠}
大急ぎで保健室で貰ったナプを陸上部室の厠に届けると1つだけ鍵が赤くなった個室にそろそろと引き釣り混まれていった。
鍵の色が赤から青に変わり琉華が泣きはらしたように出て
[琉華] 「来ちゃった。」とまた大泣きを始めた。
[定子] 「とりあえず閉校の時間も近いしミニステップでお話聞くよ。」
[琉華] 「うん。」
{ミニステップ}
[店員] 「いらっしゃいませ。」
外の冷気と打って変わって温かい店内。
[琉華] 「アイスクリーム2つください。」
「かしこまりました。」
定子が泣きそうな表情をしている
[店員]「アイスクリームお待たせしました、ごゆっくりどうぞ。」
[琉華] 「ありがとうございます。」
[琉華] 「ありがと。」
[瑠華]「定子ちゃん寒いときにわざわざアイスを注文するのも美味しくていいね。。」
[定子] 「うん。」
[瑠華] 「やっぱり来ちゃて辛いよね?]
[瑠華] 「このままずっとこないと思ってた?。」
[定子] 「だって高3で来ないなら一生来ないと思ったのに。」
[瑠華] 『残念だったね。」
[定子] 泣きながらアイスを頬張る
[定子] 「又が蒸れて気持ち悪いよう。」
[瑠華] 「そうか、よしよし。」
[定子] 「そうか大人になったんだ、だから今度むらしまで新しい服買うの、また迷彩がいいの。」
[瑠華] 「また迷彩?他にもボーイッシュな大人っぽい服がいろいろ売ってるよ。」
[瑠華] 「定子ちゃんがよければ私も明日は部活を休んで選びにいこう。」
[定子] 「いこいこ」
[店員] ありがとうございました。
{ミニステップの外}
[定子] 「じゃあいつものとこで。」
[瑠華]「うん!。」
{熊山駅}
[琉華]「定子ちゃん遅いよー!。」
[定子] 「待たせてごめんよ。」
「これ、私の趣味だったジーンズなんだけど最近はフリフリしたのが気に入って、良かったら受け取ってくれる?。」
「ありがとう。」
{むらしま店内}
「こういう、おっぱいを小さく見せるインナーもあるんだよ。」
「ほかにはプラ一体型のインナー。」
「ボクサーパンツも持ってると羽付きナプの固定に便利だからかっておくといいよ。」
両手一杯に6千円ぶん買い込んでお店を出た。
{外の風景}
「あっついねー。定子ちゃんの部室にはクーラーが付いてるのいいなぁ。」
「ところでどういう成り行きで琉華ちゃん陸上部員になったの?。」
「部員が2人で顧問も居ないから、部費で賀古ちゃんとおそろいのカシスのソーラー電波時計買ってやったぜい。」
「もちろん定子ちゃんにも同じのあげるね。」
ナップサックをガサガサ取り出すと定子ちゃんに時計を手渡した。
「3人でおそろいだね。」
「監査のとき物がないと困るよ?。」
「監査が定子ちゃんだからなせる技なのさ。」
「ピストルと時計が合体したやつ、壊れてて使えなかったのを修理したんだけど、その領収証の金額を盛ってもらったの。」
「良い仕事したね。」
「こんどは私と定子ちゃんと賀古ちゃんの3人で遊ぼうか。」「その前にミニステップ行こうよ。」
{駅の共用通路}
「駅の反対側にファミリースマートができるらしいよ。」
駅の通路を見下ろすと確かにファミリースマートの工事を黙々と行っていた。
「じゃあミニステップ行こうか。」
「その前にマツモトタダシで買い物したいな。」
{マツモトタダシの店内}
[店員] 「いらっしゃいませ。」
[瑠華] 「ウォーターレーベルが欲しいの。化粧水と乳液と美容液と収れんが一本まるまる入ってるから便利。」
[定子「私は本課レーベルが好き、美容液から作った化粧水と保湿クリームから作った乳液があるの、あと、洗顔料が泡が気持ちいいの。」
それぞれお気に入りの化粧品を籠に入れてレジに並んできたとき賀古ちゃんがマキアートの口紅をもってレジで待っていた。
[瑠華] 「お、さっき噂してたの。今日これからミニステップ行かない?。」
[賀古] 「いいよー!。」
[店員] 「ありがとうございました。」
みんなの会計が一通り済んで店を出た。
{ミニステップの店内}
[店員] 「いらっしゃいませ
[瑠華] 「アイスクリーム3つ下さい。」
[店員] 「かしこまりました。」
[店員] 『お待たせしましたごゆっくりどうぞ。」
[瑠華] 「ありがとうございます。」
[瑠華] 「もうすぐ卒業だね。」
[定子] 「うん。さみしくなるね。」
[賀古] 「専攻科にはいればもう2年居られるね。」
[定子] 「専攻科の技術って社会に出て何も役に立たないらしいよ。」
[瑠華] 「手話の出来る人が居る会社が少ないしね。」
[賀古] 「事務じゃ電話できないと役に立たないしね。。」
[瑠華] 「まともな生徒が何人いるよ?中の人なんか原稿落ちしょちゅうでしょ。」
[中の人] 「原稿用紙1枚で1万円です、先月は、自分史の依頼で10万円でした。」
[瑠華] 「そういえば賀古ちゃんに上げたい物があるの、3人おそろいの腕時計。」
[賀古] ありがとー、私たち山登りやダイビング好きだからちょうどいいね。」
[瑠華]「チーズ味のコッペ3つとポテトXを3つ下さい」
[店員]「かしこまりました、提供までにお時間10ほど掛かりますが宜しいですか」
[瑠華]「かしこまりました。
[瑠華]「みんなはここのGコッペを食べたことがあるかい?ソーセージがパリパリなんだ。」
[店員]「お待たせしましたお暑いのにお気を付けて下さい。」
[定子]「都合が悪くなると無理に空気変えてがんばるけど、瑠華ちゃんの悪い癖だよ。」
[賀古]「これを食べても卒業か専攻科に残るか選ばないといけないの、でも美味しいね」
[賀古]「私は短大に行くつもり」
[瑠華]「私は未だ少ない薬剤師になりたい」
[定子]「私は高卒採用にちょいと挑戦してみる。例えば人気のレストランに入ったとして、お皿洗いにコミュニケーションが必要かい?」
[瑠華] 「コミュニケーションが必要ないところを選抜なのね」
[賀古]「ハローワークでろうあ者がすでに当用されてる企業を紹介してもらえるかも」
[瑠華]「メール室か清掃員が本当は無難なんだってもうみんな悟ってるでしょ?」
[瑠華]「さっき薬剤師なんて大見得切ったけど入れる薬学部がないよ。」
[瑠華]「ランチタイムにお皿洗いしか遣らない人、最初から取らないよ。」
[瑠華]「進路指導室のを難聴者が奪い合って残りをろうあ者が取るしくみになってるの。」
[定子]「瑠華ちゃんなんか嫌い!」
[瑠華]「嫌いで結構、そういう流れになってるんだから。」
[賀古]「ろうあ者だけの技術短大あるよね。」
[瑠華]「興味があれば願書取ってくれば?」
[瑠華]「私は親のコネで区役所のメール室内定貰ったから。」
[瑠華]「あとこれもいまさらだけど、私の顎触ってみな。」
[賀古]「コンシーラーと髭…男の子なの?」
[瑠華」女の子に生まれたかったのに神様が余計なパーツを付けたから。もうみんなこれでわたしのことなんか嫌いでしょ?」
[定子]「よくカムアウトできたね、辛かったでしょ」
[賀古]「そんなことできらいにならないよ」
[瑠華]「みんなありがとう、隠しててごめんね」
[定子]「いつまでも泣いてないで、ホットドッグ冷めちゃうよ」
[賀古]「そうそう鼻周りのコンシーラ取れてる」
[琉華]「本当?」
[賀古]「うそ」
[定子]「私はこの前の借りがあるから」
[瑠華]「定子が旦那で私が奥さん」
[賀古]「いいね、それ。」
お店の窓に蟬時雨がへばりつき季節の変わり目を告げ知らせていた。{完}