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trois

たくさんの方に読んでいただいているみたいで、うれしいです!

ありがとうございます!

異動願いを上司のエメリルドに提出してから10ヶ月。

ようやく内勤へと異動することができたディータ。

一度諜報部に所属してしまったら、他の部署への転属が叶わないのは、秘密を知ってしまった者たちの定め。

だからディータの異動も、諜報の最前線から、情報を管理し指令を出す内勤に変わっただけのものだったが、もう好きでもない女性を相手にしなくていい分ものすごい解放感を感じていた。




「ようやく……長かった。異動願い、握りつぶされてるんじゃないかと思った」


デスクに座り、うれしさをかみしめるディータ。

「って、ディータ。毎月書いて提出してただろが」

呆れ顔のアンリ。

「忘れた~とか失くした~とか、エメリルド様がすっとぼけるからだろ」

横目でエメリルドを睨むディータ。

その視線を知って、「ぷ~♪ぴ~♪」と口笛を吹いてしらばっくれるエメリルド。

そう。なんだかんだと言ってエメリルドが引き伸ばしてきたのだ。

「最後の辞表が効いたか……くくくっ」

アンリが笑う。

あまりにすっとぼけられたので、ディータは最後に辞表を書いたのだ。

さすがに優秀な彼を辞めさせるわけにはいかないエメリルドが渋々異動を許可したのだ。

「だから言ったろ。異動させてくれなかったら田舎に引っ込むって」

にこやかに言う。

「まあ、よかったんじゃねーの? 結果オーライってことで」

「ああ」

「で、明日の伯爵家の夜会はいかねーの?」

「行かない」

晴れ晴れとした顔できっぱりと言い放つディータ。

「へぇ。じゃあ、来週の子爵家での……」

アンリが言い終える前に、

「それも行かない。よほどの夜会じゃない限り、当分社交界なんて行くもんか。うんざりだよ」

「うっそ!」

「ほんとだ。思いっきり家で引き籠ってやる!」

にやりと笑いながら言うディータ。

「引き籠りか! ははは! そりゃいいわ!」

腹を抱えてウケるアンリだった。




異動してから約ひと月。

宣言通り、ディータは仕事を終えると一目散に帰宅して、引き籠っていた。

出仕しても一心不乱に仕事をこなす、いわば仕事の虫。

元々、本来の彼は有能な男。

キラキラ華やかなことをしなくてよくなった分、仕事の効率が上がっただけなのだが。


お付き合いしていると噂されていたご婦人方とも、きれいさっぱり関係解消。

そもそも仕事がらみだったので、何のためらいもなく。

しかし後々面倒が起っても困るので、別れる時は穏便に。そこは抜かりないディータ。

夜会も、今まではほぼ皆勤賞に近いくらいに参加していたのだが、断りきれないような高位の貴族主催の夜会に1度出たきり。それも妹を伴って。


それはアンバー王国筆頭貴族であるトパーズ家の主催する夜会であった。




「ディータ。それならパッと見お前ってわからねーな」

クスクス笑いながらアンリが近づいてきた。手にはワイングラスを二つ持っている。

「そうか?」

アンリからグラスを受け取りながら応えるディータ。


今日のディータは本来の自分の色である、黒髪にアメジストの瞳。

それから、銀縁の伊達眼鏡をかけている。

服装も、ブルーグレーの落ち着いたもの。

今までのアウイン侯爵とは全く違った印象であった。


「ああ、地味だ」

二人壁にもたれて、広間を見渡す。

「目立ちたくねーからな。で、今日はシシィ殿は?」

会場に入ってからずっと探しているのだが、どこにも見当たらない。しかも今日のアンリはシシィをエスコートしていなかった。

「シシィは風邪をひいて熱が出てるんだよ。だから今日は欠席。残念だったな」

「大丈夫なのか?」

「ああ、ただの風邪だそうだ。寝てればよくなるって、医者も言ってたしな」

「そうか。あ~、残念だ」

天井を仰ぎ、嘆息する。

滅多に会うチャンスがないのに、こんな時に限って。


それから、「ああ、そうだ」と言って、

「僕さぁ、君の妹君に結婚を申し込もうと思ってんだけど、どう思う?」

さり気なくアンリに告げるディータ。

「はぁ? 今なんつった?」

驚きを隠せないアンリがアクアマリンの瞳を見開く。

グラスに残っていたワインが激しく揺れた。

見開かれた眼を見ながら、あー、シシィとよく似てるなー、と客観的に思いながらも、

「縁談を持ちかけようと思ってさ。シシィ殿に」

もう一度告げる。

「ディータ、本気か?」

「本気だ。彼女しかいないと思うんだ。上辺のキラキラした僕じゃない、本当の僕を見てくれるのは」

華やかなアウイン侯爵には何の興味も示さないシシィは、きっと相手の本質を知ってこそ好きになってくれるのだろう。

「う~ん、それはそうだけど、シシィは難しいと思うけどなぁ……」

妹の性格を熟知している兄は苦笑する。

「それならさらに頑張り甲斐があるってものだ」

不敵な笑みを浮かべるディータ。

「まあな」

苦笑を深くするアンリに、

「近々、正式に君んちの父上に申し込むよ」

満面の笑みで宣言するディータだった。


~その頃タンザナイト家~

「へっくし」

「大丈夫でございますか? シシィ様」

「うん。だいぶ熱は下がったはずなんだけど、なんだかぞくっと来たのよね」

「まあ! また熱が上がるのかもしれませんわ!」

「かもしれないわね。寝るわ」

「そうなさいませ。しかし、今日の夜会は残念でございましたね? ああ、キラキラのアウイン侯爵様、今宵は出席なされたのでしょうか?」

「んん? さぁ?」

「最近、めっきり大人しくなられてしまってから、なかなか姿をお見かけしなくなって」

「へぇぇ。そうなの? 知らなーい。おやすみ」

ディータに何の興味もないシシィには、どうでもいいことだった。



今日もありがとうございました!

やっと『逃げる令嬢~』のOP手前までこぎつけました(^^)

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