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アンバー王国王都ディアモンド。

こんな侯爵様の恋もありました☆


『逃げる令嬢、追う婚約者』の男性視点版です。

読んでなくても大丈夫です。

ここはアンバー王国王都ディアモンド。


今日はこの国の王太子殿下の結婚式が盛大に行われていた。

王城の敷地内に建てられている国教会のチャペル。

参列しているのは、上流貴族。

祭壇前に立つ神父の前で、半身になり教会入口を見つめるのは花婿の王太子シャルル。

厳かなパイプオルガンの音色が響く中、父親とともに花嫁であるレティエンヌ・ウル・トパーズが入場してきた。

この国の筆頭貴族であり、宰相であるトパーズ公爵の次女。

小柄で華奢な彼女の負担にならないよう、レースやシフォンをふんだんに使用したウェディングドレスは、彼女の清楚で可憐な美しさを引き立ててなお余りある。

それを祭壇から見守る新郎は、白い衣装を寸分の隙もなくビシリと着こなしている。

美形で名高い王太子だが、今日はさらにキラキラ王子度満点だった。




盛大な結婚式。その後の披露パーティーも盛大に行われた。

王城の大広間で行われているパーティー。

色とりどりのきらびやかな衣装でダンスを踊る人々の中に、ひときわ目立つ存在がいた。


アウイン侯爵――ディータ・リトバリテ・アウイン――。


金色の髪をキラキラと煌めかせ、エメラルドの瞳には甘い笑み。

今日のお相手はアイオライト子爵家のご令嬢。

ご令嬢はすっかりディータの美しさにメロメロのご様子。

周りの注目を一身に浴びながら、二人は踊っていた。


何曲か踊った後、壁際に置かれているソファに令嬢をエスコートしながら、

「ああ、すこし疲れましたね? 貴女はここで少し休むといい。僕はちょっと夜風に当たってきます」

甘やかな微笑みを浮かべて、ディータはアイオライト子爵令嬢に少しの暇を乞う。

少し拗ねたふうな顔をしながらも令嬢は、

「わかりましたわ。早く戻って来ていらしてね?」

艶めかしくしなだれかかる。

それを丁寧に剥がしてから、一人でテラスに出た。


「あ~、香水くさ。いつまでこんな仕事してるんだろ? 僕は」

小さく一人ごちる。

こんなことを口走りながらも、顔には甘い微笑みを湛えたまま。

もはや職業病の域に達してるなぁ、と、自分で苦笑を漏らす。

テラスで一人、広間の中を観察している間にも、こちらを伺う視線は絶え間なし。

それもすべて女性から。

目が合えばにっこりと微笑み返しながらも、

「早く終わらないかなぁ」

と、小声で愚痴るディータ。

どこを見てもうっとりと自分を見つめる視線にうんざりしていた頃。

一人の少女と目が合った。


貴婦人と言うには幼さが残る顔立ち。しかし美少女と言って問題ない輝きを放つ。

プラチナの髪を綺麗に結い上げて、その白くほっそりとした首筋を晒している。

こちらを見る瞳は、大粒のアクアマリン。

それに合わせたかのような、可憐なデザインの水色のドレス。

「美しいひと……」

妖艶な美女を常に相手にしてきたディータをしても、思わず口をつく言葉。

そしていつもなら、ディータと目が合った女性は、みるみるうちにその瞳が熱を帯び、こちらをうっとりと見つめてくるのだが。

その美少女は違っていた。


ふいっと逸らされたのだ。


そのアクアマリンが熱を帯びることもなく、むしろ何の感情を乗せることもなく、ただ、ふっと。


それには驚いた。

初めての反応。

「目、合ったよな?」

小さく自分に確認する。


それがあまりにも印象的で、それからずっとその美少女を目で追っていたのだが、二度とこちらを見ることすらなかった。




「アウイン侯爵様? そろそろお暇致しません?」

アイオライト子爵令嬢が、ディータを呼びに来た。


濃い香水の香り。気分が悪くなりそうだ。


そう思われているとも知らず、令嬢は妖艶に微笑みながら、ほっそりとした腕をディータの腕に絡めてくる。


……鬱陶しい。


そう思いながらも、甘い微笑みは崩れない。

「そうですね。貴女も疲れたでしょう? では、暇乞いをしてきましょう」

そう言って、令嬢をエスコートしながらパーティー会場へと再び入っていく。

さり気なく先ほどの美少女を探せば、彼女はエスコートの男性と一緒にいた。


あ、アンリ!


彼女をエスコートしているのは、同期で同僚のアンリ――アンリ・アリアロス・タンザナイト。タンザナイト伯爵家の長男――だ。


明日、奴に彼女のことを聞いてみよう。


そう決意して、会場を後にするディータだった。




次の朝。

王城内の『執務官室』。ここがディータの勤務する部署。

出仕すると、すでに執務官室長以下何人かが出てきていた。その中にはアンリも含まれていた。

「よ、アンリ。おはよう」

声をかけながら、アンリの隣の席に座る。

「おはよう、ディータ。昨日も注目の的だったな」

ニヤリとしながら、アンリが言う。

「まあね。仕事だし。そういうアンリこそ、めっちゃくちゃ美少女をエスコートしてたじゃねーの?」

さらりと何でもないように探りを入れるディータ。


表向き、ディータの肩書は『執務官』。要するに事務員。

しかし本当は『諜報部員』。平たく言ってスパイである。

平和なアンバー王国とはいえ、いつどこで不穏分子が燻り始めるか知れない。それを部員たちが色々と情報を収集して、平和を維持するために活用するのである。

国内だけではない。周辺諸国にも諜報部員たちはうまく潜入している。

平和維持のためには欠かせない存在であった。

ディータは主に国内の諜報活動を行っていた。その見目形を活用して女性から情報を聞き出すことが主な任務。

昨日のアイオライト子爵令嬢も任務遂行のために近づいているのだった。


「めちゃくちゃ美少女?? ああ、シシィかな。妹だよ」

視線を宙に彷徨わせて、少し思案してからアンリが言った。

「妹?」

「ああ。まだ社交界にデビューしたてだから。会ったことなかったっけ?」

「妹がいるのは聞いていたが、会ったことはなかったなぁ。うん、すごい美少女だった」

昨日のシシィの姿を思い出して、自然と笑みを浮かべるディータ。

そう言われてからよく見ると、アンリは彼女と同じプラチナの髪にアクアマリンの瞳。よく似ていた。

「おっ、うちのシシィがディータの目に留まってしまったか!」

大袈裟に驚いて見せるアンリ。

「いや、まあ、気になってね。昨日のパーティーの中じゃ際立ってたからね」

ディータは苦笑する。目に留まったのは確かだ。

「アウイン侯爵殿に認めてもらえるとは、シシィも大したもんだ」

可愛い妹が誉められたことに、デレッと締まりなく笑うアンリ。

爽やか系の美形が残念な美形になってしまう。

「誰かとすでに婚約でもしてるとか?」

「いいや。まだそんな気はさらさらなさそうだしね」

「そうか」


タンザナイト家の令嬢シシィ。

ディータの頭にばっちりインプットされたのであった。


読んでくださってありがとうございました!


(^^)

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