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神様レビュー ~★1の底辺神と俺の最強祈り生活~

作者: こばさん
掲載日:2026/05/07

「は? 神様がレビュー制?」


俺、佐藤悠真さとうゆうま、十七歳、高校二年生は、朝の通学電車の中でスマホを握りしめていた。

画面に映るのは、昨夜から大バズりしているアプリ『神レビューβ』。正式名称は『Divine Review System - 神様に★をつけよう!』だ。


世界中の人々が祈りを捧げて、事後レビューを投稿する。★の平均点が高い神様は「人気神」として信仰を集め、祈りの効果もアップ。逆に低評価の神様は……まあ、悲惨だ。

「最近、神様の対応遅いよね」「前は奇跡起きたのに今回はハズレ」「★1 二度と使わない」

そんなレビューが飛び交う世界。


俺はため息をついた。だってさ、昨日まで普通に生きてたのに、急に神様がUber Eatsみたいになったんだぞ?

きっかけは三日前。

国連が「神々とのコミュニケーションを効率化するため」として発表した新システムらしい。

神々側も了承したとか。……了承って、神様に拒否権あったのかよ。

電車を降りて学校へ向かう途中、俺は試しにアプリを開いた。


【人気ランキング】

1位 幸運の女神フォーチュナ ★4.98(祈り件数:1,248,392)

2位 学業の神アカデミア ★4.95

3位 恋愛成就のキューピッド ★4.82


そして最下位付近。

【新着低評価神】

・怠惰の神スロウス ★1.2(祈り件数:12)


プロフィール写真は、ソファに寝転がってゲームしてるだらしない青年だった。コメント欄は地獄。

「祈ったら三日後に『頑張れ』って通知だけ来た ★1」

「奇跡ゼロ。神様ってレベルじゃねえ ★1」


俺は思わず笑ってしまった。かわいそ……いや、笑うところじゃないな。

その時、スマホが震えた。


【新着通知】

怠惰の神スロウスからメッセージです。

「なぁ……お前、俺のページ見て笑ってただろ? 祈ってみねえか? ★5くれたら特別サービスするぜ」

……は?



放課後、俺は家に帰るなり部屋に鍵をかけた。

「マジかよ……」

アプリ内で『祈り』をタップすると、カメラが起動して顔を映す。AIが本人確認してるらしい。

俺は恐る恐く「スロウス様」に祈りを捧げた。

「えっと……テストで赤点取らないようにしてください。お願いします」

送信。

すると三十秒後、通知。


【スロウスからの返信】

「了解。頑張れ」

……おい。

レビュー画面がポップアップした。


【スロウスへのレビューをお願いします】

★をつけて一言コメントを!

俺は無言で★1を押した。

即座に神様からダイレクトメッセージ。

「ひどっ! お前マジかよ! せめて★2にしろよな!」

「いや、頑張れしか言ってねえじゃん!」


こうして、俺と底辺神スロウスの奇妙な関係が始まった。

スロウスは元々、古代ギリシャ辺りでちょっと流行ったマイナー神らしい。

現代になって信者が激減し、レビュー制度導入で完全に詰んだ。

「俺だって昔はそこそこ祈り処理してたんだぜ? でもさ、現代人って欲深すぎんだよ。『宝くじ当たれ』『彼女出来ろ』『死ぬ病気を治せ』って……俺は怠惰の神だぞ? 頑張る系は専門外なんだよ」


スロウスはビデオ通話で愚痴をこぼした。画面の中の彼は金髪の青年で、確かにだらしなくソファに埋もれている。

「じゃあ次はサービスするよ。特別に『ちょっとだけ頑張るモード』発動させてやる」



次の日のテスト。

俺は数学の赤点確定問題に挑んでいた。公式が全く頭に入らない。

すると、頭の中に声が響いた。

『よし、ちょっとだけ頑張るモード発動。30秒間だけ集中力+50%』

突然、頭がクリアになった。問題の意味がすっと理解できる。

俺は猛然と解答を書き始めた。30秒後、集中力は元に戻ったが、なんとその問題だけ完璧に解けていた。

結果、テストの平均点は奇跡的に60点を超えた。赤点回避。


【スロウスからの通知】

「どうだ? 俺の奇跡。レビュー★5な」

俺は即座にレビューを書いた。

「★5 30秒だけですが確かに奇跡でした! ありがとうございます!」


スロウスは画面の中でガッツポーズしていた。

「やったぜ! これで平均★が1.21になった! まだ底辺だけど!」

こうして俺は、毎日少しずつスロウスに祈るようになった。

祈りの内容は現実的だ。

・朝起きられるように

・部活の補欠からレギュラーへ

・嫌いな同級生と喧嘩しないように

どれも「ちょっとだけ頑張る」範囲内。スロウスは本気で対応してくれた。



しかし、そんな平穏は長く続かなかった。

ある日、学校で大事件が起きた。

クラスメイトの美少女・星野あかりが、突然倒れたのだ。原因不明の病。病院でも治療法が見つからない。

当然、みんな『神レビュー』に殺到した。


人気ランキング上位の神々に祈りが集中。フォーチュナもアカデミアも総動員で祈り処理しているはずだった。

だが、三日経ってもあかりさんは目を覚まさない。


俺はスロウスに相談した。

「なぁ、スロウス。なんかできないか?」

「……俺は怠惰の神だぞ? 病気治す専門じゃねえ。でも……」

スロウスは珍しく真剣な顔をした。

「実はな、俺にも『本気モード』がある。でも発動すると、レビュー制度のペナルティがすげえ重いんだ。★が一気に下がる可能性がある」

「それでも……あかりさん、いい奴なんだ。助けたい」

スロウスはため息をついた。

「わかった。お前がそこまで言うなら……特別に、協力してやる。ただし条件がある」

「条件?」

「俺の専属祈祷師になれ。レビューは必ず★5」

俺は迷わず頷いた。



その夜、俺はスロウスと『契約』を結んだ。

契約の瞬間、スマホのアプリが光り、俺のステータス画面が表示された。


【専属祈祷師:佐藤悠真】

契約神:怠惰の神スロウス

特典:『怠惰の祝福』発動可能

そして、スロウスが本気モードを発動した。

世界中の神レビューアプリに、一瞬だけ大規模なシステムメッセージが流れた。


【緊急告知】

怠惰の神スロウスが『本気』になりました。

対象:星野あかり様の原因不明疾患

病院の集中治療室で、あかりさんの容態が急変した。

医師たちが慌てふためく中、俺の頭の中にスロウスの声。

『聞いてるか、悠真。俺は怠惰の神だ。つまり……「頑張りすぎて体を壊す」ことを、強制的に止めることができる。彼女の体は、未知のウイルスに過剰に反応しすぎて自壊してた。俺はそれを「ちょっとサボらせる」ことで、免疫バランスを整える』

奇跡は静かに起きた。

あかりさんのバイタルサインが安定し始めた。


翌朝、彼女は目を覚ました。

ニュースは大騒ぎになった。

「底辺神が大奇跡! ★1.2の神が人気神を上回る奇跡を起こす!?」

スロウスのレビュー数が爆発的に増えた。

平均評価は一気に★3.8まで跳ね上がった。



しかし、これで終わりではなかった。

人気神フォーチュナが、直接俺にコンタクトしてきた。

金髪の美しい女神が、アプリのビデオ通話に現れる。

「ふふっ、面白い子ね。底辺の怠惰神なんかより、私と契約しない? 幸運をあげられるわよ」

スロウスが画面の端で「うるせえよババア!」と叫んでいる。


俺は笑って答えた。

「結構です。俺はスロウスと一緒にやっていきます」

フォーチュナは目を細めた。

「そう。なら仕方ないわね……レビュー戦争、始めてあげる」


それから、世界が変わり始めた。

人気神たちが結託して、スロウスを叩き始めた。

偽の低評価レビューを量産。スロウスの祈り処理を妨害。システムの穴を使って嫌がらせ。


俺は学校に行きながら、毎日スロウスをサポートした。

「スロウス、今日の祈り対応頑張れよ!」

「悠真、レビュー書いてくれ! ★5で!」

俺たちは二人三脚で戦った。



一ヶ月後。

スロウスの平均評価は★4.65まで回復した。

ランキングも中位まで這い上がっている。

あかりさんは完全に回復し、俺に感謝の言葉をくれた。

「佐藤くん……なんか、夢の中で金髪のダラダラした人が『悠真が頑張ってるから生きてる』って言ってたの。ありがとう」

俺は照れくさそうに笑った。


ある夜、スロウスが言った。

「なぁ、悠真。俺……もうちょっと頑張ってみようと思う。お前のおかげで、神様ってのも悪くねえなって思った」

「遅えよ。最初から頑張れよ」

「うるせえな。怠惰の神なんだから、急に変われるかよ」

俺たちは笑い合った。


神レビュー制度は今も続いている。

世界中の人々が、星を付けては神様を褒め、貶め、時には罵倒する。

でも、俺は知っている。

神様も、人間と同じように、誰かに必要とされたいんだってことを。



今、俺のスマホには新しい通知が来ている。


【新着神】

努力の神エンデバー ★0.8(祈り件数:3)

プロフィールは、必死に筋トレしてるけどすぐ倒れる青年。

俺は思わず笑った。

「スロウス、見ろよ。新たな底辺神だ」

スロウスが画面の中で肩をすくめる。

「ほっとけよ。……まあ、悠真が祈ってやるなら、俺もちょっと手伝ってやるけどな」


俺はアプリを開き、新たな祈りを始めた。

「エンデバー様、頑張りすぎない程度に、俺の勉強をサポートしてください」


底辺神同士の、ゆるやかな連帯が始まろうとしていた。

この世界は、まだまだレビューされ続ける。

神様も、人間も、互いに星を付け合いながら、なんとなく生きていく。

それが、今の「神様レビュー」世界の、ちょっとだけ幸せな日常だった。

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