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【野暮令嬢】と侮った皆様、覚悟はよろしいかしら?  作者: お伝


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7/11

古代文学サロン「沼」開催!

お読みいただきありがとうございます!

今回は文中に、かの有名な文学作品らしきものが登場しますが、決して否定するものではございません!

「あさきゆめみし」は私の半世を魅了してやまない作品です。もちろん全巻持っています。

どうか、今回の表現、言い回しについては、作風と捉えて平にご容赦下さいませ<m(__)m>

使用人たちの休憩時間が終った頃、部屋にやって来たクロエと侍女たちが、みんな手を胸の前で組み、きらきらした目で懇願するようにお願いされた。


「奥様、お見せいただいた論文と考察を拝見しました。ぜひ古代の女流文学について詳しくご教授いただきたいのです」


あの論文は、今は隣国となっている国で最古の恋愛文学と言われている書物について書いたものだ。


その物語は、皇帝に見初められた少し身分の低い側室が皇子を産んだことで、正室と他の側室たちに苛め抜かれて儚くなってしまう所から始まる。

主人公は、その身を守るために臣下に下された皇子であり、その光り輝くような美貌であらゆる身分と立場の女性たちを次々と虜にしてゆく。

作中では、彼の初恋の人への執着と自由奔放な恋愛事情に翻弄された、妻たちや数多の恋人たちの苦悩に満ちた心中が具に語られていて読者の胸を打つ。

やがて彼女たちは彼との恋に傷つきながらも着地点を見つけ、それぞれが自身の人生を強く生きて行こうと決意するというものだ。


論文を書いた時の私は十五歳、最も多感な時期にその物語に触れた私は、主人公がどうしても許せなかった。

勢いに任せて書いた私の考察と結論を要約すると、ハーレム野郎許すまじ、地獄に落ちろと言う内容だったはずだ。


あの物語の個人的な考察はさておき、やはり恋物語はどの時代であっても、女子の心を掴んで離さないのだろう。私は賛同と仲間を得た喜びに震え、思わず熱弁を振るってしまった。


「興味を持ってもらってとても嬉しいわ! でも、あの物語は古すぎて、今の時代には相容れないことも多いのだけれど、もっと時代が下がったものなら、もっと身近でもっと楽しめる物語が沢山あるの! これなんかどうかしら? 王子様が浮気相手に絆されて婚約者に婚約破棄を言い渡してしまうけれど、後で冤罪だと分かって……」


ふと気づくと、クロエも侍女たちもぽかんと私を見つめている。


『落ち着け私! やり過ぎは禁物よ。ゆっくり、ゆっくり進めなきゃ』


魂の声で興奮を制し、こほん、と咳ばらいをしてスンと冷静さを取り戻した私は、苦笑いを浮かべてみんなに言った。


「矢次早にごめんなさいね。私ったら、はしたないわ……」


すると、私の言葉が終らないうちに、周囲から「きゃあ!」と黄色い歓声が上がった。

クロエを先頭にみんながずいと私の前に迫り、思わずのけぞってしまった私にクロエが言った。


「奥様っ! どうか、私たちを古代文学の世界へお導き下さい!」


私は思わずクロエの手を取り、覚悟を問うた。


「良いの? 一度足を踏み入れてしまったら、抜け出すことのできない沼のような世界よ?」


私のその言葉に、その場にいた全員の声が揃った。


「もちろんです! 私たちは沼の底までお供いたします!」



その後やって来た執事長は、びっくりするくらい立派な額に納まった私の卒業証書と古代文学の博士号の認定書と共に現れた。お客様をお招きするサロンに飾る許可が欲しいとの事だったので、光栄なことだと返事をすると、満面の笑みで額を捧げ持った若い執事たちと共にいそいそと退出していった。


夕食の時間になり、通りかかったサロンを覗くと、あの額がマントルピースの上の一番目立つところにドドンと飾られてるのが目に飛び込んで来た。

思わず足を止めて、驚いた顔でクロエを振り返ると、とてもいい笑顔を向けられた。


「私たちの奥様がどれほど素晴らしい方かを自慢したいのです」


しかし、博士号の認定書はともかく、貴族学園の卒業証書など、貴族なら誰でも持っているのではというと、それには胸を張って答えてくれた。


「執事長の話では、二学年スキップで、しかも満点で認定された卒業証書は大変特別な価値があるそうですよ」


そう答えたクロエの顔はどこか誇らしげだった。やはり執事長ともなると卒業証書の意味を知っていたようだ。これで私が嫁いだことでヴィッセル侯爵家やこの家の使用人たちの価値や評判が下がることはないだろう。主人はともかく。


優雅な夕食も終わり、食後のお茶の時に執事長から提案された。


「午後の休憩時間を利用して、奥様に古代文学のサロンを開催して頂ければ幸いだと、使用人たちからの強い要望がありまして。もちろん、無理にお願いするものではございませんが……」


私は思わず身を乗り出して聞いてしまった。


「本当? 古代文学に興味を持ってくれるなんて嬉しいわ! 大歓迎よ! でもね、休憩時間を削ることは許しません。その代わり、午後の休憩時間を三十分延長して、古代文学サロンは福利厚生の一環とします。これでどうかしら?」


するとみんなから歓声が上がった。こんなに歓迎してもらえるなんて、私は本当に周囲の人々に恵まれているわね。主人はともかく。


『ああ、古代文学の素晴らしさを思う存分語れる日が来るなんて、夢のようだわ』


こうして「ヴィッセル侯爵家、古代文学サロン」の開催が決まった。


ようこそ! 古代文学の沼へいらっしゃい!



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