表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】【野暮令嬢】と侮った皆様、覚悟はよろしいかしら?  作者: お伝
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/51

ノバク男爵家の逃走

「父ではなく、母と兄を呼んでいただけませんでしょうか」


そう言ったレオノーラは、私に向かって深々と頭を下げた。


「このような騒動を起こしてしまい申し訳ございません。しかし、叔母と父を告発する為にはこの方法しかありませんでした。ウェーバー公爵家に対する我がドラーク家の度重なる無礼に対し、深くお詫び申し上げます。言い訳に聞こえるとは思いますが、決して我が家の総意ではありません」


頭を下げてそう言ったレオノーラは、そのまま顔を上げない。

着替えを終えて戻って来ていたダニエルに視線を向けると、頷いて応じてくれた。


「先ずは無事でよかった。私が取り次ぎをするから、詳しく事情を話してほしい」


レオノーラは、その言葉にやっと顔を上げ、ダニエルに顔を向けた。


「バルテス公子様、危うく命を落とすところ、助けて頂いてありがとうございます。

無謀な行為でご迷惑をおかけして申し訳ございません。しかし、先日ノバク嬢が起こした騒動は叔母のユリアの策略によるものです。そしてそれに父も加担しています。母と兄と共に告発を致します」


その言葉に私は黙って頷いた。

私は、急いで手紙を父に届けてもらい、出来るだけ目立たないように先にレオノーラを王宮へ送り出した。

それからエリアス王子とキャロライン殿下を王子妃候補のお見舞いを装って医務室に呼んでもらい、レオノーラの話を伝え王宮で相談をしたいと伝えた。


レオノーラを噴水に突き落としたとされるミリアは、現在護衛騎士の監視の下、学園の面談室と呼ばれる窓のない狭い一室に収容されている。

学園での騒動はすぐに各家に伝わる。憶測を含んだ噂が広がる前に、ある程度の情報を統制しておかなければならない。

そう思案していると、父から手紙が届いた。


「レオノーラ嬢は意識不明の重体であり、予断を許さない状況だと発表するように。その状況なら、母の侯爵夫人と兄を呼びよせて付き添いとして王宮に留めることができる。容疑者のミリアは直ちに王宮の取調室に連行せよ。王子妃候補に対する傷害事件として王宮騎士団が対応に当たり、尋問はバルテス公爵自ら行う」


ダニエルが即応してミリアの連行の手配に向かった。

そして、発表されたセンセーショナルな発表に学園内は騒然とし、その日の午後の授業は休校になる事が決まった。

王子妃候補であるレオノーラは、エリアス王子とキャロライン殿下に付き添われて王宮に移動し、その後は王宮での治療に当たると周知され、三人の乗ったと思われる馬車が校門をくぐる後姿を、生徒たちは祈る様に見送った。



◆◆◆

レオノーラ重体の一報を受け、ドラーク侯爵夫妻と兄のランベルトが王宮に急ぎ出立した後、ユリアはミリアの義父であるノバク男爵の訪問を受けた。

義娘が王子妃候補の傷害事件の容疑者であると聞き、驚いて早急な対応を強く求めてきたのだ。


「あの娘をエリアス王子の愛妾にすると、そういうお約束の上でお支度金をご用意したのです。早急に容疑を晴らし噂を払拭して頂けないのであれば、今後のご支援はおろか、今までのご融資もお返しいただかなければなりませんな」



ウェーバー公爵家から絶縁宣言をされているドラーク侯爵家は、ウェーバー公爵家の経営するMWR商会の流通網に与する商会から手を引かれており、唯一独自の流通網を持つノバク男爵家を御用達として取引を開始したのだ。


ある日、ノバク商会を訪れたユリアは、隣国で通訳として雇った元男爵家の娘が「自分は王子に見初められて王妃になるのだ」と触れ回っていると耳にした。


そこで興味本位でその娘を呼び、隣国で発売された古代の物語の話を聞いたのだ。登場人物の名前や状況が同じならその通りをなぞれば同じ状況になるかもしれない。何しろ、その話を嬉々として話す目の前の少女ミリアは目の覚めるような美貌の持ち主なのだ。


そして、レオノーラを使ってヴィクトリアを取り込み、ウェーバー公爵夫人に戻れると信じていたユリアは、もう一つ計画を思いついた。

あのキャロラインという王女を排除できれば、公爵夫人の権力を使って姪のレオノーラを王子妃にする事が出来るのではないか。そして、ミリアを愛妾として差し出せば、栄耀栄華は思いのままだ。


ユリアの強い思い込みは、現実との境界を曖昧にし、もうその未来しか見えなくなっていた。そうして、ノバク男爵にミリアを養女に迎えさせて学園に送り込み、兄を説得してレオノーラを王子妃候補に名乗りを挙げさせた。

全て自分の思い通りに進むはずだと信じて疑わないユリアは、ノバク男爵から支度金として多額の金銭を要求していたのだ。




ノバク男爵の言葉を受けたユリアは、小さくため息を吐いて彼に呆れたような目を向けた。


「あら、わたくしはミリアが噴水に飛び込むと聞いていたのよ? あの子が勝手に失敗しただけのことでしょう? 心配しなくても、ミリアの傷害容疑はお兄様に全ての訴えを取り下げさせればすぐに釈放よ。全く、レオノーラは水に漬かったくらいで大げさなのよ」


そう言って優雅にカップに口を付けた。

その他人事のような物言いに、ノバク男爵は深くため息を吐いた。

ついつい嫌味も出てしまう。


「一昨日、あの娘がキャロライン王女に冤罪を掛けようとしたとも噂になっています。早急にそちらのもみ消しもお願い致します。それに、あなた様がウェーバー公爵夫人になるのはいつ頃のご予定ですかな?」


ユリアは、ため息を付いてさらに続ける。


「レオノーラもミリアも、あんなに使えない子たちだとは思わなかったわ。お兄様にさっさとごたごたを収めさせて、二人にちゃんと私のために動くようにきつく言い聞かせてもらわなきゃ。公爵夫人への復帰はそれからよ」


ユリアは扇子で口元を隠してノバク男爵に流し目をくれた。


「とにかく、わたくしは何が起こっても無関係よ。今後はわたくしに面会なんて求めないでちょうだい」


そう言うと、ユリアはドレスの裾を翻して退出していった。

その後ろ姿を見送り、邸を後にしたノバク男爵は、その足でミリアの養子縁組解消と爵位返上の手続きを済ませると、商会を番頭に譲渡して自身は隣国の妻子の元へ向かった。


元々、この国でも商売を広げられるか様子を見るために金で爵位を買ったに過ぎない。

こうなった以上、早急に手を引いて全ての経緯を記した告白文を奏上する手続きを進めるだけだ。




そして次の日、ドラーク侯爵家にレオノーラが危篤だと知らせが届いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ