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『運命論者』

挿絵(By みてみん)

第四話登場人物『生徒会の俊英』

支倉 七々瀬&志崎 暁希

https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3524110/


『人は生を選べない。ただ、それをどう生きるか選ぶだけ』 ゲーテ『ファウスト』より。


事件が始まったその日、わたしはまだ、その意味を知らなかった。


物語の扉が開かれたのは、街で囁かれる犯罪の相談からで――


「会長、それは明らかに問題ですよ」

「だから、データとの齟齬があるんだけど……暁希あき?」

「まだ調査前の段階で、データだけで判断するのは、らしくないですよ。犯罪ならなおさら慎重にならないと」


扉越しの声は、いつもと違う張り詰めた響きを帯びていた。


慌ただしく過ぎ去った文化祭の事件、その余韻が残る放課後。


扉越しに見える影は、雪乃先輩、生徒会長と副会長、そしてもう一人、知らない生徒だった。


扉に触れた瞬間、ひんやりした感触が指先に伝わった。

息を整えようと、小さく深呼吸した瞬間だった――

音もなく、静かに扉が開いた。


「見てないで、早く入って」


取っ手を引く、その仕草は衣擦きぬずれ一つ生まなかった。わずかに揺れる銀糸の髪が、旋律が生まれる前の透明さを纏っていた。


わたしは室内へと倒れ込むように飛び込んでしまい、先輩に抱きとめられる。揺れる前髪とスカートに、わたしの目は奪われた。


「萌花ちゃん、私がいつまでも支えられるなんて思わないで」


先輩はわたしを覗き込み、やわらかな笑みを浮かべた。


ふわりと甘い薔薇の香り。


両足が地面についていることに気づき、慌てて離れた。


見慣れた、けれど決して見飽きることのない瞳がわたしを見つめている。

慌てて目を逸らす。頬を染める熱を誤魔化すために、もごもごと口ごもりながら弁明した。


雪乃先輩がふわりと笑みを浮かべて囁いた。


「ぜひ聞いてもらいたい話があるのよ」


「中央公園の、密輸事件」


「それが、今日の相談内容なの。どう?興味あるでしょ?」


密輸事件――


知らずに触れた扉が、運命への入り口だったと知るのは、もう少し後のこと。その隙間から射す、薄い光が映写機の明かりに見えた。



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『薬屋のひとりごと』さんに1歩でも近づきたいです!

活動報告に主人公2人の挿絵を用意しておりますのでご覧ください。

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活動報告の

『清心館の天使』日ノ宮雪乃の肖像

『わたし』如月萌花の肖像

『疑似三つ子』三人の肖像

『美術部の二つ星』二人の肖像

をご覧くださいませ。

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